金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2016年07月19日

APTT延長・紫斑・止血治療・クロスミキシング試験

平成28年度血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成28年7月13日(水)


問30. 70歳代の女性。

主訴:体幹の広範囲な皮下出血。
既往歴:50歳頃から糖尿病、慢性関節リウマチに罹患。異常出血の既往なし。
家族歴:特になし。
現病歴:
1週間前に、上胸背部に皮下出血が出現し、徐々に範囲が拡大してきたため近医受診。
Hb 6.0 g/dlの高度な貧血を認めたため緊急入院した。
赤血球輸血を行うも貧血は改善しなかった。
血小板数やプロトロンビン時間(PT)は正常であったが、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の著明な延長(86秒)、第VIII因子3.2%、他の凝固因子は正常範囲であった。
交差混合試験ではインヒビターパターンを示した。


止血治療として有効なのはどれか。1つ選べ。

a.    DDAVP
b.    ビタミンK
c.    トラネキサム酸
d.    濃厚血小板輸注
e.    活性型プロトロンビン複合体製剤   


(解説)
血小板数やプロトロンビン時間(PT)は正常であったが、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の著明な延長(86秒)、第VIII因子3.2%、他の凝固因子は正常範囲であった。
交差混合試験ではインヒビターパターンを示した。
上記(第VIII因子が著減しておりクロスミキシング試験ではインヒビターパターン)より、後天性血友病Aと診断される。

a     von Willebrand病の止血目的に使用される。
b ビタミンK欠乏症に起因する出血の治療に使用される。
c 過剰な線溶活性化に伴う出血症状に対して、最も効果を発揮する。
d 血小板数低下に起因する出血症状に有効である。
e 第VIII因子インヒビター(後天性血友病、先天性血友病でのインヒビター発症例)での止血目的に使用される。遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(ノボセブン)も同じ目的で使用される。


 <リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:33| 医師国家試験・専門医試験対策