金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年01月12日

ビタミンK依存性蛋白:凝固因子、プロテインC、電撃性紫斑病


ビタミンKと言えば、活性を有したビタミンK依存性凝固因子(VII, IX, X, II)を産生するのに必要なビタミンとして良く知られています。
そもそも、ビタミンKの「K」の語源は、オランダ語のKoagulation(英語ではCoagulation)からきています。まさに、凝固のためのビタミンがビタミンKと言うことができます。

その他にもビタミンK依存性蛋白は多数知られていますが、ビタミンK依存性凝固因子の次に有名なのが、ビタミンK依存性凝固阻止因子である、プロテインC(protein C)、プロテインS(protein S)でしょう。

ですから、ビタミンK拮抗薬であるワーファリンを使用いたしますと、ビタミンK依存性凝固因子のみならず、ビタミンK依存性凝固阻止因のプロテインC、プロテインSも低下することが良く知られています。

先天性プロテインC欠損症(ヘテロ接合体:プロテインC活性が半減)の患者様に対して、ワーファリンを投与しますと、全てのビタミンK依存性凝固阻止因子活性が低下する前に、半減期の短いプロテインCが速やかに低下してしまいます。そのため、皮肉なことに先天性プロテインC欠損症のプロテインC活性は、ワーファリンによってさらに低下して0%に近づいてしまいます。

この時にみられる著しい血栓性病態のことを、電撃性紫斑病(purpura fulminans)と言っています。紫斑病とは言っても、本態はDICと類似した著しい血栓傾向です。皮膚の微小循環レベルで、微小血栓が多発して血管が閉塞するために、二次的に紫斑を来します。

先天性プロテインC欠損症(ホモ接合体)では、元々プロテインC活性は0%に近いですので、生後間もなく電撃性紫斑病を発症します。

また、一部の重症感染症(髄膜炎菌感染症、肺炎球菌感染症など)において、プロテインC活性が著減することがあり、電撃性紫斑病を発症することがあります。四肢循環障害に伴い、肢の切断が必要になることもあることが知られています。

ビタミンK依存性蛋白としては、上記のように凝固第VII, IX, X, II、凝固阻止因子プロテインC、プロテインSがあります。そして更に是非知っておきたいビタミンK依存性蛋白としましては。。。。。(続く)

 

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:30| 医学全般 | コメント(0) | トラックバック(0)

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