金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2010年05月12日

線溶関連マーカー(1):Dダイマー(D dimer)など

 

線溶マーカーとは

 組織因子(tissue factor:TF)の作用によって凝固活性化を生じますと、最終的にトロンビンが形成されます。トロンビンがフィブリノゲンに作用しますと、フィブリノゲンはフィブリンに転換して、さらにフィブリンが重合しますと血栓が形成されます。

この重合されたフィブリンを安定化するために、血液凝固第XIII因子による架橋結合(Cross-link)が行われます。これに対して、形成された血栓を溶解しようとする働きのことを線溶(fibrinolysis)と言います。

線溶が開始されるためには、血管内皮からの組織プラスミノゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator:t-PA)産生が必要です。
t-PAは、プラスミノゲン(肝で産生)をプラスミンに転換し、プラスミンは血栓(架橋化フィブリン)を分解します。
血栓が分解された際に生ずる分解産物のことをFDP(Dダイマー)と言います。t-PAおよびプラスミノゲンはフィブリン親和性が高く、フィブリン上で能率良く線溶が進行します。


線溶活性化の程度を評価するためにはプラスミン産生量が分かれば良いのですが、プラスミンの血中半減期は極めて短く直接測定することはできません。
ただし、プラスミンとその代表的な阻止因子であるα2プラスミンインヒビター(α2PI)が、1対1結合した複合体を測定することは可能であり、これをプラスミン-α2PI複合体(plasmin-α2PI complex:略称PIC)と言います。
PICが高値であるということは、プラスミン産生量が多い、すなわち線溶活性化が高度であるということを意味します。


例えば、播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)においては、凝固活性化と並行して線溶活性化がみられるため、TATのみならずPICの上昇がみられます。
ただし、PICの上昇度は基礎疾患により異なり、このことはDICの病態を特徴つける大きな要素の一つです。

FDPは、フィブリン/フィブリノゲン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation products)の略称です。そして、Dダイマー(D dimer)は、フィブリン分解産物(正確には架橋化フィブリン分解産物)の方の細小単位です。

架橋結合の部分はプラスミンで分解されないため、隣接した2つのフィブリン分子のD分画部分が第XIII因子で結合したものが最小単位となり、Dダイマー(D dimer)の語源となっているのです。

 

 

(続く) 

線溶関連マーカー(2):t-PA/PAI-1複合体など へ

 

【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:22| 凝固検査 | コメント(0)

◆この記事へのコメント:

※必須