金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年06月17日

血液専門医試験対策:抗リン脂質抗体症候群(APS)治療

血液専門医試験対策:抗リン脂質抗体症候群(APS)診断&検査 から続く

 

関連リンク:

血液専門医試験対策(DIC)

抗リン脂質抗体症候群(インデックス)





抗リン脂質抗体症候群(APS)の治療(血液専門医試験対策)


1)動・静脈血栓症の治療

APSに対する抗血栓療法は、INR3.0以上の強力な抗凝固療法(ワルファリン)が有効であるのに対して、弱い抗凝固療法や、アスピリンは効果が劣るという報告がありました。

Khamashta MA, et al: The management of thrombosis in the antiphospholipid-antibody syndrome. N Engl J Med 332:993-997, 1995.


しかしその後、INR2.0〜3.0程度のコントロールの方がかえって有効という報告がなされました。

Crowther MA, et al: A comparison of two intensities of warfarin for the prevention of recurrent thrombosis in patients with the antiphospholipid antibody syndrome. N Engl J Med 349: 1133-1138, 2003.

現在はAPSに対してワルファリンを用いる場合であっても、INR2.0〜3.0程度のコントロールが多いと思います。

ただし、APSに対する抗血栓療法は、日本においては抗凝固薬であるワルファリンのみでなく、特に動脈血栓症においては抗血小板薬であるアスピリン、シロスタゾール、ベラプロストナトリウム、クロピドグレルなども使用されています(静脈血栓症ではワルファリンが有効です)。

APSでは、動脈血栓症と静脈血栓症を同時に合わせ持つこともあり、そのような場合には、抗血小板薬と抗凝固薬(ワルファリン)が併用されることも少なくありません。



2)不育症(習慣性流産を含む)に対する治療

少量アスピリンと、ヘパリンの皮下注(5000単位を、1日2〜3回)の併用が、妊娠から出産までへの成功率が最も高いです。

しかし、ヘパリンの皮下注は患者にとって負担となること、この治療でも成功率は100%でないこと、少量アスピリンのみでもそれなりの成功を見込めることなどにより、患者の年齢、流産回数なども考慮して、少量アスピリン単独で治療することも選択肢になります。



3)抗リン脂質抗体陽性症例に対する治療

抗リン脂質抗体陽性だけれども、血栓症がない(APSとは診断されない)場合の、血栓症の一次予防については一定の見解はありません。

ただし、抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントの検査が普遍的になってきた今日、このような症例に遭遇する頻度は増加しており、今後の重要な検討課題と考えられます。





【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:41| 血栓性疾患 | コメント(0)

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