金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年08月11日

ラミナエアフロー(laminar air flow: LAF)とHEPAフィルター

金沢大学第三内科(血液内科・呼吸器内科)HPでは、血液内科に関する研修医からのQ&Aが掲載されていますが、今回からのシリーズでは、血液内科診療における注意点について、記事にしておきたいと思います。

 

Q:無菌室がない病院に急性骨髄性白血病(AML)の患者が入院したが、一般の個室でも化学療法は大丈夫かどうか、ラミナエアフローは本当に効果あるのかどうか、について考察したいと思います。

A:結論から言うと、一般の個室で化学療法を行っても問題はありません。ラミナエアフロー(laminar air flow: LAF)の効果は、アスペルギルス感染症予防に限定されます。

 

Q:LAFとは何か。

A:LAFとは、高い空気清浄度を確保し、外部からの塵埃侵入を防ぐため、超高性能エアフィルター(HEPAフィルター)を通した空気を一方向で層状に送り込むシステムです。

1つの壁にHEPAフィルターを取り付け、反対側の壁に向かって空気を送り出し部屋ごとLAF化したものがLAF室(バイオクリーンルーム)です。LAF室の室内気圧は陽圧になっています。

LAF室の空気清浄度は、1立方フィート(1 ft3)あたりの粒径0.5μm以上粒子(塵埃)の個数であらわされます。

臨床に用いられている中で最も空気清浄度が高いクラス100のLAF室は、粒径0.5μm以上の粒子が100個/ ft3以下の状態です。なお、晴天時の外気は、クラス100万程度です。

 

最近は、血液科病棟全体をクラス10,000に保っている病院も多いです。

その場合、血液科に入院すればLAF室に入っていることになります。通常の病室に移動可能な水性層流式無菌装置(ベッドアイソレーター)を設置し、ベッド頭側からHEPAフィルターで濾過した空気をLAFで送り込む場合もあります。この場合、ベッド上の空気清浄度が確保されます。

(続く)

ラミナエアフロー(LAF)の効果/アスペルギルス感染症の危険因子 へ

 

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【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 13:01| 血液疾患(汎血球減少、移植他)