金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年08月22日

肝障害症例に対する抗がん剤治療

肝障害と抗がん剤治療 から続く。

 

黄疸/肝障害症例に対する抗がん剤治療


まず、肝機能の評価と、肝障害の原因精査を行います。

特に薬剤性肝障害は重要です。
その場合、薬剤のウォッシュアウト期間後、自然回復が期待できます。


肝機能は、Child-Pugh分類で評価します。

肝予備能の評価にインドシアニン・グリーン(ICG)試験など負荷テストの適応も考慮されますが、がん患者の場合、そこまで求められることは少ないです。転移などがん自体による肝障害もありますので、画像学的検査も重要です。

抗がん剤を用量調整する際、指標となる肝機能検査は、主にAST、ALT、総ビリルビン値です。

黄疸が無くとも、AST・ALT高値は、肝細胞傷害が疑われますので、同様の対応が必要です。

抗がん剤治療前からCommon Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE)で評価してもよいです。

他の肝機能検査値も参考にすべきですが、抗がん剤の用量調整という観点では、AST・ALT・総ビリルビン値に劣ります。

肝障害の有無にかかわらず、抗がん剤治療を受ける患者は、HBs抗原・HBs抗体・HBc抗体・HCV抗体を必ず測定します。

ウイルス量の増加など、肝炎として治療が必要な場合、ウイルス性肝炎の治療を優先しますが、がんの状態によってはやむを得ず抗がん剤治療と並行して治療せざるを得ないこともあります。

B型肝炎の無症候性キャリアや既感染者でも、抗がん剤治療後に肝炎ウイルスの活性化を認めることがありますので、注意深くフォローします。

B型肝炎ウイルスを有する患者にリツキシマブを投与する場合、特に注意が必要です。

 

(続く)CTCAE:抗がん剤と肝障害 へ

 

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47| 血液疾患(汎血球減少、移植他)