金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年01月11日

外傷性出血と遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)(商品名:ノボセブン)の保険適応は、第VIII因子インヒビター(先天性血友病Aにインヒビターが出現した場合、後天性血友病)と言った、極めてまれな疾患に対してのみなのですが、その他の種々の出血に対して有効と期待されています。

rFVIIaに関する論文も多いのですが、保険外使用に関しては、positiveな論調のものと、慎重な論調のもの、いずれもあるようです。

今回紹介させていただく論文は、J Traumaからです。

「難治性の外傷性出血に対する遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)の有用性

著者名:Hauser CJ, et al.
雑誌名:J Trauma 69: 489-500, 2010.


<論文の要旨>

外傷に伴う凝固異常は、出血による早期死亡と外臓器不全による晩期死亡に寄与しています。

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)は、外傷性出血を軽減し予後を改善するのではないかと期待されています。


著者らは、外傷573症例(12時間以内に赤血球輸血4〜8単位を要した例)を対象として検討しました。

症例は(rFVIIa)投与群(200μg/kg初回投与後、1&3時間後に100μg/kg)とプラセボ投与群に分類されました。

1,502症例を登録する予定でしたが、予想していた死亡率(27.5%)よりも実際の死亡率(10.8%)が低く有意差が出ないと判断されたため、573症例の登録で試験中止となりました。


死亡率は、鈍的外傷の場合は、rFVIIa群11.0%、プラセボ群10.7%(P=0.93)、鋭的外傷の場合はrFVIIa18.2%、プラセボ群13.2%(P=0.40)でした。


48時間以内の赤血球輸血量は、鈍的外傷では、rFVIIa群では7.8±10.6単位、プラセボ群では9.1±11.3単位(P=0.04)でした。

またその他の全血液製剤を含めると、前者は19.0±27.1単位、後者は23.5±28.0単位でした(P=0.04)。血栓症の有害事象は両群間で有意差は見られませんでした。


以上、rFVIIaは外傷性出血患者における輸血量を減らしましたが、予後への影響は見られませんでした。また、外傷性出血症例における予後を指標とした臨床試験は行いにくいものと考えられました。

 

 


【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09| 出血性疾患