金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年03月17日

大量出血に対するプロトロンビン複合体製剤(賛成意見)

国際血栓止血学会の機関誌であるJ Thromb Haemostでは、誌上討論の記事が掲載されます。

毎回、いろいろなテーマが取り上げられていて、興味深く読むことができます。

今回紹介させていただく論文は、大量出血に対するプロトロンビン複合体製剤の是非を論じています。
まず、賛成意見からです。

参考:後天性血友病ノボセブン第VIII因子インヒビター血友病

参考:日本では、活性型プロトロンビン複合体製剤(activated prothrombin complex concentrate:aPCC)である商品名ファイバが使用可能です。インヒビター保有先天性血友病患者もしくは後天性血友病患者のバイパス製剤として知られています。.

関連記事; 大量出血に対するプロトロンビン複合体製剤(反対意見)

 
「大量出血に対するプロトロンビン複合体製剤(賛成意見)

著者名:Tanaka KA, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 8: 2589-2591, 2010.


<論文の要旨>

大量出血に対し、凝固因子を補充する目的で新鮮凍結血漿(FFP)が用いられることが多いです。

ただし、この目的を達成するためにはFFP輸注量は相当に多くなります。例えば、FFP250ml輸注しても、凝固因子活性は2〜3%上昇する程度です。

一方、プロトロンビン複合体製剤(PCC)であれば3,000IU(120ml)で、VII、IX、X、II因子を40〜80%上昇させることが可能です(ヘマトクリットや血小板数を低下させずに)。


このように、PCCはFFPと比較して、有効かつ速やかにビタミンK依存性凝固因子活性を上昇させる点で優れています。

血中フィブリノゲン活性が低下するような大量出血時(DICを除く)には、まずフィブリノゲンの補充を行った上で(>1.5g/L)、PCC20〜25IU/kg輸注させる方法が有効です。


凝血学的検査をモニタリングしながらこの治療法を行うことにより、出血を伴った外傷患者におけるFFP輸注量を節減することが可能です。

PCCのうちFVII含有量が少ない製剤(three-factor)が良いか、FVII含有量が多い製剤(four-factor)が良いか、他の製剤(例えば抗線溶薬)との併用が良いかなど、臨床試験を行うことで明らかにすべきです。

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50| 出血性疾患