金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年03月18日

大量出血に対するプロトロンビン複合体製剤(反対意見)

大量出血に対するプロトロンビン複合体製剤(賛成意見)を、前回の記事で紹介させていただきました。

今回は反対意見を紹介させていただきます。

 

参考:後天性血友病ノボセブン第VIII因子インヒビター血友病

参考:日本では、活性型プロトロンビン複合体製剤(activated prothrombin complex concentrate:aPCC)である商品名ファイバが使用可能です。インヒビター保有先天性血友病患者もしくは後天性血友病患者のバイパス製剤として知られています。.

 

 
「大量出血に対するプロトロンビン複合体製剤(反対意見)

著者名:Godier A, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 8: 2592-2595, 2010.


<論文の要旨>

プロトロンビン複合体製剤(PCC)などの血液凝固因子濃縮製剤は、輸注負荷をきたさないような少量で大量出血をコントロールできる点が利点と考えられてきました。

しかし、この治療法に関するエビデンスは乏しいです。

臨床データもなく、多くの問題点(※)が未解決のままです。


それ故、重症出血に対するPCCの使用は、EBMではなく推奨されません。

しかし、大量出血に対して持異的な凝固因子を選択的に補充するという考え方自体は魅力的です。

大量出血に対するPCCがガイドラインに掲載されるような治療法となるためには、厳格な臨床試験が必要です。


(※)PCCの問題点の例

1. FVII含有量の少ないPCCと多いPCCがありますが、どちらもPCCと同じ扱いになることがあります。

2. ビタミンK依存性凝固因子のみ含有されており、たとえばフィブリノゲンや第XIII因子などの他の凝固因子は含まれません(FFPには全て含まれます)。

3.  PCCには未分画ヘパリンが含有されています(0.2〜15 IU/mL)ので、止血能や凝固検査に影響する懸念があります。

4.  FFPとは異なり、PCCでは血漿量を増やすことができないために、しばしば電解質輸液と併用が必要になります。

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01| 出血性疾患