金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年07月02日

重症血友病Aにおける第VIII因子インヒビター発症率

英国の重症血友病A全患者における第VIII因子インヒビター発症率の検討が、Blood誌に報告されました。

 

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「重症血友病Aにおける第VIII因子インヒビター発症率(英国)

著者名:Hay CR, et al.
雑誌名:Blood 117: 6367-6370, 2011.


<論文の要旨>

著者らは、英国の重症血友病A全患者における第VIII因子インヒビター発症率を検討しました(1990年〜2009年)。


重症血友病A 2,528例のうち、315例においてインヒビターが新たに出現したと、国立血友病データベースに報告されていました(経過観察期間の中央値は12年)。

これらの患者のうち160例(51%)は、5才以上で発症していました(経過観察の中央値は6年)。インヒビターの新たな発症率は、5才未満では64.29/100治療・年、10〜49才では5.31/1000未満・年でしたが、60才以上では10.49/治療・年と上昇しました。


重症血友病Aにおける第VIII因子インヒビター発症は全生涯にわたってみられますが、発症率は二峰性になり、小児早期に最も大きなピークがあり、また高齢者にもピークがみられました。


HIVの感染があった場合には、新たなインヒビターの出現は有意に低率でした。

HIV陽性患者におけるインヒビター発症率は、HIV陰性患者における発症率の0.32倍でした。


高齢となって第VIII因子インヒビター発症した患者の転帰や、治療歴のある患者におけるインヒビター発症の他の危険因子については、今後の検討課題です。

 
 
 【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:45| 出血性疾患