金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年08月31日

CBT問題(コアカリ):血栓・塞栓症

実際出題された、CBT問題(コアカリ)より、血栓止血関連領域のものを取り上げて、簡単な解説をさせていただきます。

 

実際に試験を受けた学生さんの記憶による再現問題ですので、実際の問題とは微妙に異なっている可能性がありますが、ご了承お願いいたします。


血栓・塞栓症をきたしやすい状態として適切でないのはどれか。

A.    長期臥床
B.    うっ血性心不全
C.    妊娠
D.    悪性腫瘍
E.    肝硬変


(解説)

A.    長期臥床は下肢筋肉収縮が乏しくなり(下肢筋肉ポンプが働かなくなり)、下肢静脈血流が悪くなるため、深部静脈血栓症(DVT)の危険因子となります。

B.    うっ血性心不全は心臓への静脈還流が悪くなり、深部静脈血栓症(DVT)の危険因子となります。

C.    妊娠は、胎児による下大静脈圧迫および妊娠そのものによる凝固活性化状態のため、易血栓状態となります。

D.    悪性腫瘍の存在により、凝固活性化状態となります。悪性腫瘍は播種性血管内凝固症候群(DIC)の基礎疾患でもあります。

E.    肝硬変では、血小板数および凝固因子が低下するため、出血しやすい状態となります(ただし、凝固阻止因子であるアンチトロンビンやプロテインC(参考:敗血症と凝固・DIC(1)活性化プロテインCの意義)も低下するため易血栓状態にもなります。紛らわしい選択肢だと思います)。

 


(静脈血栓塞栓症の危険因子)

1)    脱水・多血症
2)    肥満
3)    妊娠・出産(特に帝王切開出産)
4)    経口避妊薬
5)    下肢骨折・外傷、手術後、下肢麻痺、長期臥床、ロングフライト
6)    悪性腫瘍の存在
7)    心不全、ネフローゼ症候群
8)    深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往
9)    血栓性素因:先天性アンチトロンビン欠損症、先天性プロテインC欠損症、先天性プロテインS欠損症、抗リン脂質抗体症候群など。

 

(正答)E

 
 


【リンク】
 

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:56| 医師国家試験・専門医試験対策