金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2012年02月28日

新規経口抗凝固薬(プラザキサ、リクシアナ、リバロキサバンなど)

ダビガトラン(商品名:プラザキサ)、エドキサバン(商品名:リクシアナ)、リバロキサバンなどの新規経口抗凝固薬は、ワルファリンPT-INR)に代わる画期的な抗凝固薬として、大変に期待されています。

スーパーワルファリンと言っても良いと思います。

このような素晴らしいお薬は、大事に育てる必要があるのではないでしょうか。その観点から、モニタリング(血液凝固検査)の意義はとても大きいのではないかと思っています。

これらの新規経口抗凝固薬は、循環器領域、脳卒中領域、血栓止血学、臨床検査医学などいろんな領域で話題になっています。


抗血栓療法
には、抗血小板療法と抗凝固療法があります。

抗血小板薬は血小板活性化を主病態とした血栓症(動脈血栓症)に処方され、抗凝固薬は凝固活性化を主病態とした血栓症(静脈血栓症)に処方されます。

抗凝固薬は、具体的には静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓)の再発予防や、心房細動に起因する心原性脳塞栓の発症予防目的として、不可欠の重要な薬物です。

経口可能な抗凝固薬としては、長年にわたりワルファリンのみが用いられてきました。

ワルファリンはビタミンK依存性凝固因子活性を抑制することにより、抗凝固活性を発揮します。

我が国においては、歴史的にはトロンボテストによるコントロールが行われてきたが、世界的な大規模臨床試験はPT-INRPT-INR検査)によるモニタリングで評価されてきた報告がほとんどですから、我が国においてもPT-INRによるモニタリングが主流になってきました。

しかし、トロンボテストはフィブリノゲンや第V因子の影響を受けずにビタミンK依存性凝固因子であるVII、X、II因子のみに依存しているという利点もあります。

フィブリノゲン上昇を伴う炎症反応時などにも信頼できる点や、先天性第V因子欠損症にワルファリンコントロールを行っている症例にも使用可能である点は念頭におきたいと思います。


ワルファリン内服時にモニタリングされるPT-INRですが、PT-INRが著しく上昇した症例では大出血をきたしやすいことは数々の報告から明らかですが、PT-INRが高値であっても、なお血栓症を発症しやすいことにも留意する必要があります。

すなわち、PT-INRは出血の副作用チェックの意義は大きくても、必ずしも効果判定のマーカーにはなりえないことがありますので、今後の検討課題と考えられます。


近年、経口可能な抗凝固薬(新規経口抗凝固薬)として、トロンビン阻害薬(プラザキサ)、Xa阻害薬が登場しました。

大規模臨床試験の結果から、これらの薬物はワルファリンより効果の点で上回り、副作用も少ない点で期待が寄せられました。

加えて、ワルファリンのように頻回の採血によるモニタリングが必要ない点が当初キャッチフレーズとなりました。

しかし、実臨床の場で広く処方されるようになりますと、予想以上に出血の副作用がみられることが話題になり(特に腎障害例や高齢者など)、そのモニタリングをどうするか議論となっています。

新規経口抗凝固薬におけるモニタリングをどうするかについて議論する場合に、以下のようないくつかの注意点があります。

 

【新規経口抗凝固薬モニタリングの注意点】

1)薬物の血中濃度によってPTAPTTの延長度が異なるために、内服から採血時間までの配慮が必要なこと(血中濃度がピークの時点で採血すべきと考えられます)。

2)同じサンプルであっても試薬の種類によって大きくデータが変わる場合があること。

3)新規経口抗凝固薬の種類によってPTまたはAPTTのどちらが延長しやすいかが異なること。

さらに、PTやAPTTは新規経口抗凝固薬の出血のモニタリングとしての価値はある可能性がありますが、効果判定のマーカーにはならないかも知れません。

副作用、効果判定はそれぞれ違ったマーカーによるモニタリングが必要となるのではないかと考えられます。

新規経口抗凝固薬は、人類が待ち望んだ優れた薬物です。

これらの薬物が大きく育つためにも、モニタリングの意義はとても大きいのではないかと考えられます。

追伸:今回の記事は、管理人の私見です。反対意見も当然あると思いますし、今後の検討課題がたくさんあるのではないかと思っています。



<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09| 抗凝固療法