金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年04月03日

原発性骨髄線維症と血栓症:頻度と危険因子

骨髄増殖性疾患における血栓症と言えば、まず真性赤血球増加症、本態性血小板血症を想起すると思いますが、骨髄線維症においても本態性血小板血症に匹敵する血栓症の問題があります。

今回紹介させていただく論文は、原発性骨髄線維症における血栓症の頻度と危険因子について論じています。

 関連記事:本態性血小板血症/真性赤血球増加症:血栓症(インデックス)


「原発性骨髄線維症における血栓症:頻度と危険因子 」

著者名:Barbui, T. et al. 

雑誌名:Blood 115: 778-782, 2010.


<論文の要旨>

著者らは、欧州4施設で診療された原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis: PMF)707症例における心血管イベントの発症頻度および危険因子を検討しています。

236症例(33%)では死亡されており、全体的な死亡率は7.7%/年でした。

致命的あるいは非致命的な血栓症は51症例(7.2%)でみられ、1.75%/年でした。

多変量解析では、60歳以上であることとJAK2遺伝子変異陽性のみが有意に血栓症と関連していました。一方、白血球数15,000/μL以上と心血管イベントの既往は、関連性がわずかでした。

致命的あるいは非致命的な血栓症が最も高頻度となるのは、JAK2遺伝子変異陽性かつ白血球数15,000/μL以上の時でした。

今回の検討は今までの中で最も多いPMF患者を対象としています。


この検討結果により、PMFにおける心血管イベント発症は、本態性血小板血症状(ET)に匹敵する頻度と考えられました。

そして、高齢、JAK2遺伝子変異陽性、白血球増加が重要な危険因子と考えられました。

 

(続く)原発性骨髄線維症と血栓症:血栓症発症の予知因子

 

<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43| 血栓性疾患