金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年05月17日

線溶関連マーカー(6):DICとDVTの合併など

線溶関連マーカー(5):FDP・Dダイマー・PICの高値 より続く

 

線溶マーカーとは(6)


血液凝固検査入門(図解シリーズ)← リンク

 

FDP・Dダイマー・PIC解釈上の注意点

通常、FDPDダイマーは併行して上昇することが多いです。

ただし、著しい線溶活性化がみられる病態(例えば線溶亢進型DIC)では、フィブリンのみならずフィブリノゲンの分解も進行するために、FDPの著増に対して、Dダイマーの上昇が相対的に軽度のことがあり、FDP/Dダイマー比が大きくなります(Dダイマー/FDP比が小さくなります)。

この場合、PICは著増し、α2PIやフィブリノゲンは著減しやすいです。

プラスミノゲンも中等度低下します。


一方、線溶抑制型DIC(敗血症に合併したDICに代表されます)においては、t-PAに対して阻止的に作用するプラスミノゲンアクチベータインヒビター(plasminogen activator inhibitor:PAI)が過剰に産生されて、線溶が抑制されます。

このため、血栓が多発してもあまり溶解されずにFDPDダイマーは軽度上昇にとどまることが多いです。

線溶抑制型DICにおいては、FDPやDダイマーを過度に重要視しますと、DIC診断が遅れる懸念があります。この場合は、血小板数の経時的低下や、凝固活性化マーカーTATSFなどに注目することで早期診断が可能です。

FDP、Dダイマー、TATPICが最も上昇しやすい疾患はDICですが、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)や肺塞栓(pulmonary embolism:PE)でも上昇する場合がある点に注意が必要です。

また、播種性血管内凝固症候群(DIC)の基礎疾患とDVT&PEの危険因子は、悪性腫瘍など共通していることがあります。


DIC診断基準をみたすような症例であっても、DVT&PEも合併していることがありますので、注意が必要です。

管理人らは、DVT&PEの見逃されているDIC症例が少なくないのではないかと懸念しています。


 

 【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 12:52| 凝固検査 | コメント(0)

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