金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2010年07月23日

小児抗リン脂質抗体症候群の血栓症状:小児APS(7)


小児の抗リン脂質抗体症候群:小児APS(6)より続く。

図2


 
【小児APSの血栓症状

小児抗リン脂質抗体症候群(APS)患者に発症する血栓症は多様です。動脈・静脈のいずれにも発症し、大血管から毛細血管レベルまですべての血管に、そして様々な臓器に発症します(参考:血液凝固検査入門)。

欧米における小児APS 121例の集計(Ped-APS試験)では、静脈血栓症が60%を占め、動脈血栓症が32%でした(上図)。

Avcin T, et al.: Pediatric antiphospholipid syndrome: Clinical and immunologic features of 121petients in an international registry. Pediatrics 122: e1100-e1107, 2008.


静脈血栓症の中では、下肢深部静脈血栓(DVT)の頻度が最も高く、次に脳静脈洞血栓症が多いという結果でした(上図)。

 

一方、動脈血栓症では、脳虚血発作が約8割と圧倒的に多く、虚血性心疾患はわずかに1%でした。

 

脳静脈洞血栓症と脳虚血発作を含む脳血管障害は、小児APS患者の32%を占めており、成人APS(16-21%)と比較すると高率でした。

また、原発性APSでは動脈血栓症、特に脳虚血発作の頻度が高く、自己免疫性疾患に合併するAPSでは静脈血栓症の頻度が高いという結果でした。

Ped-APS試験でのaPLの検出率は、aCL 81%、抗β2GPI抗体67%、LA 72%であり、成人に比べてLA陽性率が高率でした。

診断に際しては、これら3種類の抗体全てをルーチンに検査することが重要です。また、先天性血栓性素因を1つ以上有している患者が、45%認められました。


(続く)

小児抗リン脂質抗体症候群の「非」血栓症状:小児APS(8)



【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07| 血栓性疾患