金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年02月20日

正着:造血幹細胞移植入門(38)

正着

 


造血幹細胞移植入門(インデックス)


造血幹細胞移植入門:正着

前処置の毒性(副作用)を乗り越え、同種造血幹細胞移植受けた患者が第1に達成すべきステップが、「生着(engraftment)」です。

造血幹細胞生着とは、輸注した造血幹細胞が、患者の骨髄で血液細胞を作り始めること(=造血能の再構築)を指します。

通常は、好中球数が3日連続500/μl以上になる最初の日を生着日とします。

造血幹細胞移植後生着までの日数は、骨髄移植が17日、末梢血幹細胞移植が12日、さい帯血移植が22日です(G-CSF使用時)(表)。

Bensinger WI, Martin PJ, Storer B, et al. Transplantation of bone marrow as compared with peripheral-blood cells from HLA-identical relatives in patients with hematologic cancers. N Engl J Med. 2001;344:175-181.

Takahashi S, Iseki T, Ooi J, et al. Single-institute comparative analysis of unrelated bone marrow transplantation and cord blood transplantation for adult patients with hematologic malignancies. Blood. 2004;104:3813-3820.




骨髄移植・末梢血幹細胞移植はG-CSFを使わないこともあります(費用の問題に加え、全身放射線照射前処置骨髄移植直後のG-CSF投与により急性GVHD発症が誘発される可能性が、動物実験で指摘されています)。

Morris ES, MacDonald KP, Kuns RD, et al. Induction of natural killer T cell-dependent alloreactivity by administration of granulocyte colony-stimulating factor after bone marrow transplantation. Nat Med. 2009;15:436-441.


ただし、さい帯血移植は生着が遅いため、原則として移植後G-CSFを使用します。






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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50| 血液疾患(汎血球減少、移植他)