金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年04月24日

移植後再発モニタリングの実際:造血幹細胞移植入門(59)


造血幹細胞移植入門(インデックス)

 

造血幹細胞移植入門:移植後再発モニタリングの実際

移植前に、変異遺伝子や融合遺伝子、WT1など、微小残存病変(minimal residual disease: MRD)の指標となる分子マーカーをあらかじめ決定しておきます。

移植直前のMRD解析は重要です。

特に、急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)の場合、移植前MRDの有無は移植後再発や無病生存に影響します。

急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia:AML)も、移植前WT1量と予後の関連が報告されています。


移植前MRD陽性急性白血病の場合、移植後1年を目安に毎月MRDを評価し、陽性時は免疫療法を考慮します(保険診療外)。

移植前MRD陰性例も同様の対応で良いですが、2-3か月に1回でいいかもしれません。

移植100日時点のMRD有無は、予後を大きく左右します(特にALL)。

慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)の場合、移植後のMRDモニタリングはチロシンキナーゼ阻害薬使用時に準じて行います。



骨髄腫の移植後完全寛解率は低いですので、再発モニタリングはPCR法よりフローサイトメトリー法や免疫固定法を用いることが多いです。

末梢血より骨髄を用いた方がMRD検出感度は高いですが、繰り返し検査には末梢血が向いています。

どちらが良いか、今のところコンセンサスはありません。

MRDモニタリング法は標準化されておらず、精度・再現性とも不十分です。

特に先制攻撃的免疫療法は毒性の問題があり、1回MRD陽性だけでは適応を躊躇することがあります。その場合、2-4週後の再検査を考慮します。



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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01| 血液疾患(汎血球減少、移植他)