金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年09月06日

血液内科試験(BSL評価):輸血学

平成23年度 内科学卒業試験(BSL評価試験)血液内科学が行われました。

平成23年9月5日 月曜日
試験時間 14時〜15時(60分間)

 

 

問題と解答の紹介を、何回かに分割してアップしていきたいと思います。

今回は輸血学です。

 

同種骨髄移植を行う際、移植(輸注)する骨髄液から赤血球の除去が必要なドナー/レシピエントの血液型組合せはどれか。2つ選べ。なお、A+はA型RhD陽性を指す。

a . A+/AB+
b.  AB-/AB+
c . AB+/B+
d . A+/B+
e.  O+/AB+


(解説)

レシピエントとドナーのABO血液型が異なる移植を、ABO不適合移植と言います。

ABO不適合には、患者血清中にドナー赤血球に対する規則抗体があるABO主不適合(ABO major mismatch)、ドナー血漿中に患者赤血球に対する規則抗体があるABO副不適合(ABO minor mismatch)、その両者を含むABO主副不適合(ABO major/minor mismatch)があります。

移植する骨髄液の赤血球除去が必要なのは、ABO主不適合かABO主副不適合です。

cはABO不適合、dはABO主副不適合です。

 

(答え) cとd

 


造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)に関する下記の記述について、正しいのはどれか。一つ選べ。

a.  急性GVHDは移植後100日以降に起こらない。
b.  慢性GVHDは主に移植1年以降に起こる。
c.  急性GVHDの主な標的臓器は、皮膚・肝・口腔である。
d.  同系造血幹細胞移植とは、一卵性双生児間造血幹細胞移植のことである。
e.  GVHDの標準予防法は、シクロスポリン(またはタクロリムス)単独療法である。



(解説)

急性GVHDは移植後100日以内に起こりやすいですが、100日以降にも起こります。

急性GVHDの主な標的臓器は、皮膚・肝・腸です。

慢性GVHDは移植後100日から1年以内に多いです。

GVHDの標準予防法は、シクロスポリン(またはタクロリムス)+短期メソトレキセートです。

 

(答え) d

 


アルブミンの不適切使用例はどれか。一つ選べ。

a.  出血性ショック
b.  人工心肺を使用する心臓手術
c.  肝硬変に伴う難治性腹水に対する治療
d.  重症熱傷
e. 蛋白質源としての栄養補給



(解説)

厚労省が示している不適切使用例には、他に、「脳虚血」、「単なる血清アルブミン濃度の維持」、「末期患者への投与」があります。

(答え) e

 


輸血に関して誤っているのはどれか。一つ選べ。

a.  体重40 kgの患者に赤血球製剤を2単位輸血すれば、Hbは約2 g/dL上昇する。
b.  輸血した血小板の1/3は脾臓で捕捉される。
c.  Corrected count increment (CCI)の計算は、血小板輸血効果の評価に役立つ。
d.  新鮮凍結血漿製剤は融解後6時間以内に輸注する。
e.  造血幹細胞移植時の輸血療法は、赤血球輸血より血小板輸血が中心となる。



(解説)

a.  赤血球製剤を1単位輸血すると、Hbは [40/体重] (g/dL)の増加が期待できます。したがって正しいです。
b.  正しいです。
c.  正しいです。
d.  新鮮凍結血漿製剤は、凝固因子の失活を防ぐため、融解後3時間以内に輸注する。
e.  正しいです。

(答え) d

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:22| 医師国家試験・専門医試験対策