金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年06月06日

医師国家試験:習慣性流産、深部静脈血栓症(2)

医師国家試験:習慣性流産、深部静脈血栓症(1)より続く。

 

医師国家試験対策

32歳の女性

一昨日からの下肢の腫脹を主訴に来院した。3回流産歴がある。

左下肢に熱感を伴う有痛性の腫脹を認める。左足を背屈すると腓腹部に疼痛が生じる。

血液所見:赤血球370万、Hb11.0g/dl、白血球3,200、血小板8万、プロトロンビン時間<PT>12秒(基準10〜14)、APTT 62秒(基準対照32.2)。抗核抗体160倍(基準20以下)。

 

【病態】


血液検査では、血小板数低下とAPTT延長という特徴的な所見がみられています。血小板数低下、APTT延長という本来であれば出血傾向になるべき検査所見であるにも関わらず本症例では静脈と胎盤に血栓がみられている点がミステリアスですが、抗リン脂質抗体症候群でしばしばみられる検査所見です。本症例では抗核抗体が陽性であるが、陰性のこともあります。

抗リン脂質抗体症候群の確定診断のためには、抗カルジオリピン抗体(特にβ2GPI依存性のもの)とループスアンチコアグラントの検査が必須です。

抗リン脂質抗体症候群とは

<概念>

・    リン脂質またはリン脂質に結合した蛋白に対する自己抗体(抗リン脂質抗体)が出現することにより、血栓症(動脈も静脈もあり)、習慣性流産(不育症)を来す。


・    狭義の不妊ではなく、妊娠成立は同じ。


・    SLEなどの自己免疫性疾患、悪性腫瘍、薬物服用に伴い発症。また特発性のものも多い。

・    後天性の血栓症の原因としてもっとも頻度が高い。




<症状>


1.    動脈血栓症:


・    脳梗塞,一過性脳虚血発作
・    心筋梗塞(日本人には少い)

・    網膜中心(分枝)動脈血栓症

・上&下腸管膜動脈血栓症

2.    静脈血栓症
・    肺塞栓

・    深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)
・    網膜中心(分枝)静脈血栓症.
・    上&下腸管膜静脈血栓症

・    脳静脈洞血栓症
・    Budd-Chiari症候群

3.    不育症、習慣性流産:胎盤に血栓ができるため。妊娠中期以降もあるのが特徴。

4. 網状皮斑:皮膚の循環障害による。

5.てんかん,舞踏病,片頭痛.


<血栓傾向をきたす機序>

不明。単一ではない。多数の学説あり。


<診断>
下記の1.&2.の両者を満たすもの

1.    臨床症状の存在
(1)血栓症

(2)習慣性流産(不育症)

2.下記の抗リン脂質抗体のいずれか一方以上が陽性

(1)抗カルジオリピン抗体:β2-glycoprotein I (β2-GPI)依存性のものが重要
(2)ループスアンチコアグラント(Lupus anticoagulant :LA)


<検査>

1. 抗カルジオリピン抗体陽性
2. ループスアンチコアグラント陽性
3. 梅毒反応の生物学的疑陽性(BFP)
4. 血小板数の低下:5-10万/μL程度が多い
5. 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長
6. 複数の凝固因子の低下

7. 抗核抗体(ANA)などの自己抗体の陽性



<リンク>
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28| 医師国家試験・専門医試験対策