金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年7月31日

血液内科学系統講義試験:抗がん剤/フローサイトメトリー

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)


問29.    造血器腫瘍の治療に用いられる抗がん剤とその代表的な副作用の組み合わせで誤っているのはどれか。2つ選び、選択肢を記載しなさい。

(1)    イダルビシン − 間質性肺炎
(2)    サリドマイド − 深部静脈血栓症
(3)    シクロホスファミド − 出血性膀胱炎
(4)    メトトレキサート − 口内炎
(5)    シタラビン − 末梢神経障害

a. (1) (2) b. (2) (3) c. (3) (4) d. (4) (5) e. (1) (5)

(正答)e



問30.    フローサイトメトリーによる表面マーカー解析が診断に有用でない疾患はどれか。1つ選べ。

a.    急性骨髄性白血病
b.    急性リンパ性白血病
c.    慢性骨髄性白血病
d.    慢性リンパ性白血病
e.    多発性骨髄腫

(正答)c


問31.    疾患名と治療法・治療薬の組み合わせで誤っているのはどれか。1つ選べ。

a.    真性多血症 − 瀉血
b.    多発性骨髄腫 − ボルテゾミブ
c.    急性前骨髄球性白血病 − 全トランス型レチノイン酸 (ATRA)
d.    慢性骨髄性白血病慢性期 − レナリドミド
e.    慢性骨髄性白血病急性期 − 同種造血幹細胞移植

(正答)d

<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2014年7月30日

血液内科学系統講義試験:急性白血病

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)

 問27.    急性白血病に関する記述で正しいのはどれか。2つ選び、選択肢を記載しなさい。

(1)    成人では骨髄性よりリンパ性の方が多い。
(2)    WHO分類では芽球比率が20%以上で急性白血病と診断する。
(3)    FLT3遺伝子変異を伴うと予後不良である。
(4)    紫外線は白血病の危険因子である。
(5)    Core binding factor (CBF) 白血病は通常予後不良である。

a. (1) (2) b. (2) (3) c. (3) (4) d. (4) (5) e. (1) (5)


(正答)b


問28.    ミエロペルオキシダーゼ (MPO) 染色と特異的エステラーゼ染色が伴に陽性となるのはどれか。1つ選べ。

a.    最未分化型急性骨髄性白血病(M0)
b.    分化型急性骨髄性白血病(M2)
c.    急性単球性白血病(M5a)
d.    赤白血病(M6)
e.    急性巨核芽球性白血病(M7)


(正答)
b



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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2014年7月29日

血液内科学系統講義試験:輸血問題2

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)

 
問24.    輸血療法に関して正しいのはどれか。2つ選べ。

a.    血小板製剤を2-6℃で保存した。
b.    新鮮凍結血漿を20-24℃の温湯で融解した。
c.    8月1日の献血由来の血小板製剤を8月4日に使用した。
d.    8月1日の献血由来の赤血球製剤を8月22日に使用した。
e.    ヒト胎盤から製造された医薬品は特定生物由来製品である。


(正答)
c, e


問25.    輸血前検査に関して正しいのはどれか。1つ選べ。

a.    主試験は省略できる。
b.    副試験は省略できる。
c.    HCV抗体検査は省略できる。
d.    2回目の血液型検査は省略できる。
e.    緊急輸血時の輸血前検査用採血は省略できる。


(正答)
b


問26.    血液型おもて試験結果を図(問題用紙最後尾に添付)に示す。血液型組み合わせとして正しいのはどれか。1つ選べ。左から順に患者1/2/3/4とする。

a.    A/B/O/AB
b.    B/A/AB/O
c.    A-/B-/O-/AB-
d.    B+/A+/AB+/O+
e.    おもて・うら不一致


(正答)a

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2014年7月28日

血液内科学系統講義試験:輸血問題1

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)

 
問21.    輸血開始5分後呼吸困難が出現した。まず疑うべきなのはどれか。2つ選べ。

a.    輸血関連循環負荷
b.    ABO型不適合輸血
c.    輸血関連急性肺障害
d.    アナフィラキシーショック
e.    ヒトパルボウイルスB19感染症


(正答)b、d



問22.    成人患者へ安全な赤血球輸血を行う(緊急輸血を除く)ために必要性の低いのはどれか。1つ選べ。

a.    血液型検査
b.    交差適合試験
c.    不規則抗体検査
d.    血液製剤の加温
e.    血液製剤製造時の白血球除去

(正答)d



問23.    輸血療法に関して正しいのはどれか。1つ選べ。

a.    輸血した赤血球の約1/3は脾臓に捕捉される。
b.    新鮮凍結血漿は、融解後12時間以内に輸注する。
c.    アルブミン投与後の血管回収率は通常100%である。
d.    血清アルブミン値1.9 g/dLは、アルブミン投与の絶対適応である。
e.    体重40kgの患者に赤血球製剤を2単位輸血すれば、Hbは約2 g/dL増加する。


(正答)
e

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2014年7月27日

血液内科学系統講義試験:血液凝固検査

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)

 

問12.下記の疾患または病態のうち、検査所見の記載が正しいのはどれか。1つ選べ。


  疾患/病態 出血時間 PT
APTT Fbg
HPT
a アスピリン内服 延長
正常 延長
正常 正常
b ビタミンK欠乏症 正常 延長
延長
正常 正常
c 先天性第XII因子欠損症 正常 正常 延長
正常 正常
d von Willebrand病
正常 正常 延長
正常 正常
e ワルファリン内服 正常 延長
延長
正常 正常

PT:プロトロンビン時間
APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間
Fbg:フィブリノゲン
HPT:ヘパプラスチンテスト


(解説)

a アスピリン内服してもAPTTは正常です。

b ビタミンK欠乏症では、HPTは低下します。

c 正しいです。

d von Willebrand病では出血時間が延長します。

e ワルファリン内服では、HPTは低下します。

 

(正答)c


 
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2014年7月26日

血液内科学系統講義試験:トラネキサム酸(トランサミン)

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)


問20.以下はトラネキサム酸に関する記載である。文中で(   )に入るものはどれか。1つ選べ。

まず、播種性血管内凝固症候群(DIC)に対する抗線溶薬の投与は原則禁忌である。

DICにおける線溶活性化は、血栓を溶解しようとする生体の防御反応の側面もあり、これを抑制することは生体にとって不利益である。

実際、DICに対して抗線溶療法を行った場合に、全身性血栓症の発症に伴う死亡例の報告が複数みられる。

特に、敗血症などの重症感染症に合併したDICにおいては、プラスミノゲンアクチベータインヒビター(plasminogen activator inhibitor:PAI)が著増し線溶抑制状態にあるため、多発した微小血栓が残存しやすい病態である。

このような病態に対して、抗線溶療法を行うことは理論的にも問題があり、絶対禁忌である。

一方、重症の出血症状をきたした線溶亢進型DICに対して、(      )の併用下にトラネキサム酸を投与すると、出血症状が劇的に改善することがあるのも事実である。

a.    ヘパリン類
b.    ビタミンK
c.    濃厚血小板
d.    新鮮凍結血漿
e.    組織プラスミノゲンアクチベーター

 

(解説)

この問題もサービス問題です。線溶の意義について、試験時間内に勉強していただければとの思いで問題作成しました。

教科書的には、DICに対してトラネキサム酸(トランサミン)は禁忌ですが、線溶亢進型DICに対して、ヘパリン類(標準へパリン、低分子へパリン、ダナパロイド)とともにトラネキサム酸を投与しますと重症の出血症状であっても、劇的に軽快します。


(正答)
a

 
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2014年7月25日

血液内科学系統講義試験:先天性アンチトロンビン(AT)欠損症

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)


問19.以下の文中で(   )に入るものはどれか。1つ選べ。

20代女性。

家系内調査にて先天性アンチトロンビン(AT)欠損症の診断を受けていたが、無症状のため未治療であった。

妊娠7週ごろ、左下肢腫張と疼痛を認めたため外来を受診した。

血液検査:AT活性 43%、PC活性 84%、PS活性 56%(妊娠のために後天的に低下)、FDP 4.7μg/ml、D-ダイマー 2.0μg/ml、下肢静脈エコー検査にて左後脛骨静脈に血栓を認め深部静脈血栓症と診断された。

未分画ヘパリンの投与とAT製剤の適宜補充により血栓は縮小し、分娩・産褥期にはAT活性を100%以上に保つようAT製剤を補充することにより、合併症なく無事挙児を得ることができた。

産褥期も血栓症の増悪は認めず、ヘパリン治療をワルファリン内服に切り替えて抗凝固療法を継続した。

ちなみに、家族歴は父がAT欠損症にて(        )、叔父(父方)が門脈血栓、祖母(父方)が脳静脈洞血栓症を発症しており、家系内に多くの血栓症を認める典型的な先天性AT欠損症の一家系である。

a.    脳梗塞
b.    心筋梗塞
c.    閉塞性動脈硬化症
d.    網膜中心動脈閉塞症
e.    上部腸間膜静脈血栓症


(解説)

この問題は、サービス問題です。試験時間内に、勉強していただけるようにとの思いから問題を作成しました。

先天性AT欠損症は、深部静脈血栓症、肺塞栓、脳静脈洞血栓症などの静脈血栓症を発症しやすくなります。e以外は、動脈血栓症です。

なお、妊娠や女性ホルモン療法で、プロテインS活性が低下することも是非知っておいていただきたいです。妊娠ではプロテインS活性が低下しますので、妊娠中の採血で先天性プロテインS欠損症と誤診しないでいただければと思います。


(正答)e

 
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2014年7月24日

血液内科学系統講義試験:血管内皮

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)


問18.血管内皮の抗血栓作用と関連しているのはどれか。誤っているものを1つ選べ。

a.    エンドセリン(ET)
b.    アンチトロンビン(AT)
c.    トロンボモジュリン(TM)
d.    プロスタサイクリン(PGI2)
e.    組織プラスノゲンアクチベーター(t-PA)


(解説)
a.    血管収縮作用があります。血栓傾向になります。

b.    アンチトロンビン(AT)は血管内皮のヘパリン様物質に結合して、抗血栓的に作用しています。

c.    血管内皮に存在します。トロンビンを補足するのみでなく、トロンビン-TM複合体は、凝固阻止因子のプロテインCを活性化します。

d.    プロスタサイクリン(PGI2)は、血小板機能抑制作用、血管拡張作用を有して、抗血栓的に働きます。

e.    組織プラスノゲンアクチベーター(t-PA)は線溶因子です。プラスミノゲンをプラスミンに転換します。プラスミンが血栓を分解します。


(正答)a

 
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2014年7月23日

血液内科学系統講義試験:血栓止血の検査、治療

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)

問17.血栓止血関連疾患の検査、治療に関する記載として正しいのはどれか。1つ選べ。

a.    健常人のPT-INRは、2.0程度である。
b.    ワルファリンを内服すると血中プロテインS活性が低下する。
c.    肺塞栓(PE)の再発予防としては、アスピリン内服が有効である。
d.    遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)に対しては、ビタミンK内服が有効である。
e.    第VIII因子インヒビターの出血に対しては、遺伝子組換え活性型第VIII因子製剤が有効である。


(解説)

a.   健常人のPT-INRは、1.0程度です。

b.   ワルファリンを内服しますと、ビタミンK依存性蛋白は低下します。ビタミンK依存性蛋白:VII、IX、X、II、プロテインC、プロテインS、オステオカルシンなど。

c.   肺塞栓(PE)の再発予防としては、ワルファリン内服が有効です。

d.   遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)に対して有効な薬物はありません。対症療法が行われています。鼻出血に難渋することがあります。

e.   第VIII因子インヒビターの出血に対しては、遺伝子組換え活性型第VIII因子製剤は無効です。止血治療としてバイパス製剤が用いられています。バイパス製剤:遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(ノボセブン)、活性型プロトロンビン複合体製剤(ファイバ)。


(正答)b

 

<リンク>
推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学
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2014年7月22日

血液内科学系統講義試験:TTP/HUS

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)


問16.血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)の両者に共通した所見の記載として正しいのはどれか。1つ選べ。

a.    血清Kの上昇
b.    血清LDHの上昇
c.    クームス試験陽性
d.    直接ビリルビンの上昇
e.    抗ADAMTS13抗体陽性

(解説)
a.    血清Kは、どちらの疾患でも変化しません。
b.    溶血を反映して、どちらの疾患であっても、血清LDHは上昇します。
c.    クームス試験はどちらの疾患でも陰性です。
d.    直接ではなく間接ビリルビンが両疾患で上昇します。
e.    抗ADAMTS13抗体はTTPでは陽性になりますが、HUSでは陰性です。


(正答)b
 

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2014年7月21日

血液内科学系統講義試験:播種性血管内凝固症候群(DIC)

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)


問15.
播種性血管内凝固症候群(DIC)の記載として正しいものはどれか。1つ選べ。

a.    敗血症に合併したDICでは、血中D-ダイマーが著増する。
b.    動脈瘤に合併したDICでは、フィブリノゲンの低下は軽度である。
c.    固形癌に合併したDICでは、血中可溶性フィブリン(SF)は上昇しない。
d.    急性前骨髄球性白血病(APL)に合併したDICでは、フィブリノゲンが著減する。
e.    常位胎盤早期剥離に合併したDICでは、血中α2プラスミンインヒビター(α2PI)が著増する。

(解説)

a.    敗血症に合併したDICでは線溶抑制型DICになるため、血栓が溶解されにくく、Dー-ダイマーの上昇は軽度にとどまります。

b.    動脈瘤に合併したDICでは線溶亢進型DICになるため、フィブリノゲンの低下は高度です。過剰に産生されたプラスミンが、フィブリンのみならずフィブリノゲンも分解します。フィブリノゲンは消費性凝固障害の要素のみでなく、一時線溶の要素によっても著明に低下します。

c.    播種性血管内凝固症候群(DIC)であれば、血中可溶性フィブリン(SF)は必ず上昇します。TAT、F1+2も必ず上昇します。

d.    急性前骨髄球性白血病(APL)は線溶亢進型DICを併発します。フィブリノゲンが著減します。

e.    常位胎盤早期剥離では線溶亢進型DICを発症します。血中α2プラスミンインヒビター(α2PI)は著減します。PICは著増します。


(正答)
d

 

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2014年7月20日

血液内科学系統講義試験:抗リン脂質抗体症候群(APS)

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)

 
問14.典型的な抗リン脂質抗体症候群(APS)に関する記載内容として、正しいものはどれか。1つ選べ。

a.    APTTが正常であればAPSを否定できる。
b.    静脈血栓症では深部静脈血栓症が最も多い。
c.    女性では不妊症の内科的原因として最も多い。
d.    ループスアンチコアグラントが陰性であればAPSを否定できる。
e.    APS患者血漿:コントロール血漿=1:1の混合血漿で、凝固時間の延長が是正される。



(解説)

a.    APSでは、ループスアンチコアグラントが陽性であればAPTTが延長しやすいですが、正常のこともあります。

b.    はい、その通りです。動脈血栓症では脳梗塞が多いですが、心筋梗塞は大変少ないです。

c.    不妊症の原因にはならないです。妊娠する機会は変わりません。妊娠しても流産しやすいのが特徴です。

d.    ループスアンチコアグラントが陰性であっても、抗カルジオリピン抗体(抗カルジオリピン-β2GPI複合体)が陽性であれば、抗リン脂質抗体症候群(APS)と診断されることがあります。

e.    ミキシングカーブはインヒビターパターンになり、凝固時間の延長は是正されないです。


(正答)b


 
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2014年7月19日

血液内科学系統講義試験:出血&血栓

平成26年度血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)

平成26年7月22日 (火)試験時間 16時30分〜17時30分(60分間)

問題紹介と正答をアップさせていただきます。

 

問13.下記の疾患のうち出血、血栓の両者がみられる疾患・病態はどれか。1つ選べ。

a.    オスラー病
b.    高PAI血症
c.    高Lp(a)血症
d.    Bernard-Soulier症候群
e.    異常フィブリノゲン血症


(解説)

a.    遺伝性出血性毛細血管拡張症とも言います。鼻出血がみられるために、von Willebrand病と誤診されることがあります。
b.    PAIは線溶抑制因子です。血栓傾向になります。
c.    動脈血栓症、静脈血栓症の危険因子です。
d.    先天性の出血性素因です。巨大血小板がみられるのが大変有名です。
e.    フィブリノゲンの活性が低下するために出血傾向になりますが、できた血栓が溶解しにくく血栓傾向にもなります。
 (正答)e

参考:
../upload/16653d4f749b973d.pdf

 
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2014年7月18日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報(26号)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報(27号)より続く。

26号
 
26号4
 
 
 
上図は、同門会報の第26号(平成21年度)の表紙です。
 
画題は「春の海」です。


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2014年7月17日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報(27号)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報(28号)より続く。

27号
 
27号4
 
 
 
上図は、同門会報の第27号(平成22年度)の表紙です。
画題は「水面」です。


<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2014年7月16日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報(28号)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報(29号)より続く。

28号
 
28号4
 
 

上図は、同門会報の第28号(平成23年度)の表紙です。
画題は「夕映え」です。


<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学

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2014年7月15日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報(29号)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報(30号)より続く。

29号
 
29号4

 

上図は、同門会報の第29号(平成24年度)の表紙です。
画題は「初夏の薫」です。


<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2014年7月14日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報(30号)

 

30号

 

30号2

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)の同門会報の表紙絵は、長年にわたり石橋吉樹先生に描いていただいています。ありがとうございます。

毎回、素敵な絵をお届けいただいています。
同門会員だけが感動するのではもったいないと思います。
石橋先生のご了解をいただきましたので、ブログ記事でも紹介させていただきます。

上図は、同門会報の第30号(平成25年度)の表紙です。
画題は「月光」です。


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2014年7月13日

森下英理子:ひらめき☆ときめきサイエンス推進賞受賞

森下先生

 

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)でもご活躍いただいている森下英理子先生(金沢大学医薬保健研究域保健学系 教授)が、独立行政法人日本学術振興会による「ひらめき☆ときめきサイエンス推進賞」を受賞しました。

 「血液のしくみ」をテーマとしたプログラムを平成21年度から継続的に実施し,将来を担う子どもたちの科学する心をはぐくみ、知的好奇心の向上に大きく貢献したことを評価されたものです。

 素晴らしいです!!

金沢大学Web広報誌 e-Acanthus:医薬保健研究域の森下英理子教授が「ひらめき☆ときめきサイエンス推進賞」を受賞


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2014年7月12日

出血性疾患の実践診療マニュアル〜すべての臨床医のために〜

書籍紹介です。

関連記事:APTT血友病後天性血友病第V因子インヒビター第VIII因子インヒビターPT-INR

クロスミキシングテスト


「出血性疾患の実践診療マニュアル〜すべての臨床医のために〜」

編者名: 矢冨裕、大森司
出版会社:南江堂


<序文より>

日常診療において、出血に関する症状を訴えて来院する患者は多く、ほとんどすべての診療科において、出血を主訴とする患者に遭遇しうる。たとえば、消化管出血には消化器関連の科が対応し、しかし、局所からの出血でも、背景に出血性素因がある場合には、それを是正しないと的確な止血が達成できない場合が多い。肝硬変に伴う消化管出血に対して、局所の治療に加えて、全身的な出血傾向を是正するために新鮮凍結血漿や血小板濃厚液の補充が必要となる場合があることなどがその一例である。

すなわち、領域を問わず、出血している患者をみる場合には、背後の出血傾向を見逃さず、必要があれば、その是正を治療に反映できる臨床的素養が求められる。しかし、現実には、出血疾患に対して若手意識をもっている医師は多いようである。本書は、臨床医がよく出会う“出血”をテーマとして、出血性素因の評価、さらには、重要な出血性疾患に関して、その診断と治療の実践マニュアルとすることを目的とした。


出血性疾患の診断と治療は日進月歩であるが、基本は今も昔も変わらず単純である。つまり、生理的止血機構のどこに異常があって出血が生じているかを見極めることが重要である。これは、病歴聴取、身体所見、スクリーニング検査でおよそ見当をつけることができる。その上で、最新の検査を含めた特殊検査なども使い、確定診断を得る。このプロセスが理解できていれば、専門家でなくても、的確な診療が可能であり、必要に応じて専門家に委ねることができる。是非、本書により、その過程をご理解いただければと願うものである。

本書は、コンパクトにできており、適宜、項目ごとにチェックしていただける形となっている。多くの臨床医の方々に、広く役立てていただければ幸いである。

http://www.nankodo.co.jp/wasyo/search/syo_syosai.asp?T_PRODUCTNO=2266871


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2014年7月11日

全身性ALアミロイドーシス合併多発性骨髄腫と第X因子欠乏症

論文紹介です。

関連記事:APTT血友病後天性血友病第V因子インヒビター第VIII因子インヒビターPT-INR

クロスミキシングテスト


「全身性ALアミロイドーシスを合併した多発性骨髄腫に対する自家移植4年後に発症した後天性第X因子欠乏症」

著者名: 竹村兼成 他。
雑誌名:臨床血液 55: 558-592, 2014.


<論文の要旨>

68才女性。

2007年、多発性骨髄腫(IgA-κ型、Bence Jones蛋白-κ型)及び全身性ALアミロイドーシスと診断されました。

VAD療法3コース、自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を施行され、部分寛解となり、以後、病勢の進行を認めませんでした。

2011年12月から、PT17.6秒と延長を認めました。

2012年1月、直腸癌を併発し、外科で低位前方切除術及び人工肛門造設術を施行されました。

術中に新鮮凍結血漿輸注を施行しましたが、周術期の出血傾向を認めました。

2012年2月、人工肛門閉鎖術を施行するにあたり、出血傾向の原因精査を依頼されました。

クロスミキシング試験では、PTで凝固因子欠乏パターンを示し、第X因子活性が低下していたことから、後天性第X因子欠乏症と診断しました。

FFP10単位を輸注し、人工肛門閉鎖術を終了しました。

多発性骨髄腫に合併した後天性第X因子欠乏症の発症は稀です。


本症例は、多発性骨髄腫は部分寛解であったことから、自家末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法を施行後も残存する骨髄腫細胞に由来するアミロイド沈着により、先天性第X因子欠乏症を発症したものと考えられます。

そして、移植後に明らかな多発性骨髄腫の再燃が無くても後天性第X因子欠乏症を発症したということは、多発性骨髄腫及び全身性ALアミロイドーシスに対して一定の治療効果を認めていても治療後に凝固障害を起こす可能性があると考えられます。



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2014年7月10日

早産の凝固プロフィール

論文紹介です。

関連記事:APTT血友病後天性血友病第V因子インヒビター第VIII因子インヒビターPT-INR

クロスミキシングテスト


「早産の凝固プロフィール」

著者名: Keren-Politansky A, et al.
雑誌名:Thromb Res 133: 585-589, 2014.


<論文の要旨>

早産の原因として過凝固状態が指摘されています。

しかし、早期分娩の凝固状態を検討した報告はありません。

著者らは早産関連子宮収縮(PUC)をきたした妊婦の止血能を評価しました。


対象は、規則的PUCをきたした健常妊婦76例です。

そのうち38例は早産となりましたが(P群)、そのうち14例は前期破水(PPROM)がみられました。

最終的には満期出産となったのは残りの38妊婦であり、対照(C群)としました。


P群ではC群と比較して、PT, APTTに有意短縮しました(それぞれ、9.96±0.5秒 vs. 10.1±0.4秒<P=0.05>、25.7±2.0秒 vs. 27.4±2.7秒<P=0.003>)。


フィブリノゲン、Dダイマー、プロテインC、遊離型プロテインS抗原量、第VIII因子活性、VWF、PAI-1、F1+2、TF、TFPI両群間に差はみられませんでした。

PPROMを伴った早産例では、PPROMのない早産例と比較して、F1+2は有意に低値でした(351±99 pM vs. 561±242pM, P=0.0003)。


PUCをきたした妊婦において、PTやAPTTの短縮は母体における血栓傾向を反映しており、早産の指標になるものと考えられました。


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2014年7月9日

インヒビター保有血友病Aに対するリツキシマブ

論文紹介です。

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クロスミキシングテスト


「インヒビター保有の成人非重症血友病Aに対する第一選択薬としてのリツキシマブ」

著者名: Lim MY, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 897-901, 2014.


<論文の要旨>

先天性血友病にインヒビターを発症した場合の免疫抑制療法の意義は不明です。

リツキシマブの使用は症例報告に限定されており、多くは免疫寛容療法に失敗した後の第2、3選択薬として、しかも小児例の報告が多いです。

著者らはインヒビター保有成人非重症血友病Aに対して、リツキシマブを第1選択薬として用いた場合の有用性について後方視的に検討しました。


リツキシマブは375mg/m2を週に1回、計4回投与されました。

検討症例は、成人血友病A9例(中等症5例、軽症4例)(2000〜2013年)であり、インヒビター診断時の年齢中央値54歳(24〜77歳)でした。

免疫寛容療法が行われた症例は含まれていません。


その結果、リツキシマブにより全9症例でインヒビターは消失しました。

リツキシマブの初回投与から臨床反応がみられるまでの期間の中央値は95日(12〜278日)でした。

経過観察の中央値は56ヶ月(13〜139ヶ月)でした。

インヒビター消失後、8症例では第VIII因子製剤が再投与されましたが、2症例では手術施行に伴いインヒビターが再出現しました。


以上、成人非重症血友病Aのインヒビターに対してリツキシマブでは第1選択薬としても有効と考えられました。



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2014年7月8日

血友病AとBドメイン欠損PEG化遺伝子組換え第VIII因子製剤

論文紹介です。

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「血友病Aに対するBドメイン欠損PEG化遺伝子組換え第VIII因子製剤(BAY94-9027)の第1相臨床試験」

著者名: Coyle TE, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 488-496, 2014.


<論文の要旨>

BAY94-9027(BAY)は、Bドメイン欠損の遺伝子組換え第VIII因子製剤であり、ポリエチレングリコールでペグ化することで血友病動物モデルでの半減期を延長させています。

著者らは、重症血友病Aに対してBAYを1回またはくり返して投与し、薬効動態と安全性を評価しました(第1相臨床試験)。


対象は重症血友病A症例(21〜58才)であり、第VIII因子活性<1%、第VIII因子製剤に暴露後150日以上経過し、インヒビター出現の既往がない症例です。

3日以上の休薬期間後、sucrose-formulated rFVIII(rFVIII-FS)(1群, 25IU/kg, n=7; 2群, 50IU/kg, n=7)が1回投与され、48時間の薬物動態の検討が行われました。


別途、3日間の休薬後に、1群は、BAY25IU/kgが週に2回投与され、2群はBAY60IU/kgが週に1回投与されました。

BAYの初回&最終投与後に168時間の薬効動態が検討されました。


その結果、BAYはrFVIII-FSと比較してすぐれた薬物動態を示し半減期は約19時間でした(rFVIII-FSは薬13時間)。

BAYは免疫原性も示しませんでした。


BAYは半減期の延長に成功しており血友病治療に用いた場合に製剤の投与回数を少なくすることが期待でます。

次段階の臨床試験への進展が期待されます。


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2014年7月7日

抗IXa/Xバイスペシフィック抗体(ACE910):血友病Aモデル

論文紹介です。

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「抗IXa/Xバイスペシフィック抗体(ACE910):血友病Aモデルにおける止血または補充療法として」

著者名: Muto A, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 206-213, 2014.


<論文の要旨>

著者らは抗IXa/Xバイスペシフィック抗体hBS23(第IXa因子&第X因子の適切なエピトープを認識して第VIII因子の機能を代替する抗体)を開発してきました。

本抗体は第VIII因子インヒビター存在下においても第VIII因子様の役割を演じ、後天性血友病Aの動物モデルの出血に対して有効でした。

著者らはhBS23の改良型であるACE910を開発しました。


非ヒト霊長類に対して第VIII因子中和抗体を投与し後天性血友病Aモデルを作成しました。

出血を誘発した後に、ACE910または遺伝子組換えブタ第VIII因子(rpoFVIII)が経静脈投与されました。

rpoFVIIIは翌日以後の2日間も日に2回追投与されました。

出血症状は3日後観察されました。


その結果、ACE910 1 or 3mg/kgの1回静注は、生じている出血に対してrpoFVIII 10U/kg 1日2回静注に匹敵する止血効果を有しました。

ACEの半減期は3週間と長く、皮下注投与であっても100%近い生物学的能を有しました。

薬物動態パラメーターに基づくシミュレーションでは、ACEを週に1回皮下注した場合でも上記の止血能は維持されるものと考えられ、予後投与法も有効と推測されました。


以上、ACE910は、血友病A患者の出血時止血治療としても、定期的な補充療法(予防治療)としても展望があるものと考えられました。

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2014年7月6日

APCC製剤中TFPIとインヒビター保有血友病A患者

論文紹介です。

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「aPCC製剤中のTFPIは一部のインヒビター保有重症血友病A患者における治療効果に影響を与える」

著者名: Ogiwara K, et al.
雑誌名:Int J Hematol 99: 577-587, 2014.


<論文の要旨>

インヒビター保有の一部の血友病A患者において活性型プロトロンビン複合体製剤(aPCC)の反応が不良ですが、その機序は不明です。


著者らは後方視的に2症例を検討しました。

症例1では、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)に変更したところ有効であり、aPCCに対する反応も2週間以内に回復しました。

TFを用いたトロンビン形成試験ではlag-timeが延長し、トロンビン形成のピークが低下しましたが、これはTFPIのためと考えられました。

aPCCの投与により血漿中遊離型TFPI(fTFPI)は上昇しましたが、rFVIIaでは上昇しませんでした。

TFPIは2〜3週間で正常値に復しました。


aPCCに反応不良の患者、aPCCに反応良好の患者、rFVIIaに反応良好の患者からのそれぞれの血漿を調べたところ、aPCC投与の二群ではfTFPIが上昇していましたが、rFVIIa投与群では上昇していませんでした。


aPCCに反応不良の患者ではTFPIの上昇はより高度でした。

検体中にTFPI抗体を添加したところ、aPCC反応不良患者ではトロンビン形成のピーク上昇がより高度でした。


以上、aPCC中のTFPIはトロンビン形成を抑制し、治療効果を減弱させるものと考えられました。


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2014年7月5日

リツキシマブと血友病インヒビター

論文紹介です。

関連記事:APTT血友病後天性血友病第V因子インヒビター第VIII因子インヒビターPT-INR

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「リツキシマブによる血友病におけるインヒビターの除去」

著者名: Franchini M, et al.
雑誌名:Br J Haematol 165: 600-608, 2014.


<論文の要旨>

リツキシマブは抗CD20モノクローナル抗体であり、当初はいくつかの造血器悪性腫瘍の治療目的に開発されました。

リツキシマブでは、B細胞を速やかにかつ特異的に消失させることができるために、多くの自己免疫性疾患に用いられます。

この10年程度で、リツキシマブは単独または他の免疫抑制療法治療薬と併用して、治療抵抗性の後天性血友病に対しても用いられるようになり、治療成功例が報告されています。


さらに、先天性血友病AまたはBにおいてインヒビターを発症した場合においても、第一選択薬が無効であった場合に、リツキシマブが使用されるようになってきました。

先天性血友病に関しては、リツキシマブ投与下に免疫寛容療法を行うことで、特に軽症〜中等症において成功率が上昇します。

リツキシマブ治療は安全のようですが、特に小児患者に対して投与する場合には感染症のリスクに注意する必要があります。


リツキシマブ治療は高価ですが、インヒビターが消失しないとバイパス製剤や免疫寛容療法といったやはり高価な治療が必要になるために、相殺されるものと考えられます。



<リンク>
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2014年7月4日

先天性無フィブリノゲン血症と硬膜外(下)血腫

論文紹介です。

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「先天性無フィブリノゲン血症小児における自然硬膜外血腫と硬膜下血腫」

著者名: Y AK, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 25: 398-400, 2014.


<論文の要旨>

先天性無フィブリノゲン血症は伴性劣性遺伝するまれな凝固異常です。

本疾患の有病率は、約100万人に1人ですが、血族結婚が普通に行われている国においては本疾患は増加しています。


最初にみられる症状は通常新生児期における臍出血ですが、更に遅れての症状出現もまれではありません。

本疾患で小児期にみられる出血部位は、胃小腸、泌尿生殖器、粘膜、筋肉、関節、頭蓋内です。

頭蓋内出血はまれですが、無フィブリノゲン血症の主たる死因となっています。


この論文では、無フィブリン血症の19才女性の報告がなされています。

本症例では、自然大量硬膜外血腫および硬膜下血腫がみられており、手術が必要となっています。


<先天性無フィブリノゲン血症の治療>
(参考)

•フィブリノゲン製剤:止血レベル≧50mg/dL、手術時≧100mg/dL(止血、創傷治療が完了するまで維持)。

•フィブリノゲン製剤の半減期:2〜4日間(手術時や出血時には短縮)。

•フィブリノゲン製剤の定期補充療法:妊婦や頭蓋内出血既往症例において。

•副作用:血栓傾向、抗体産生、アナフィラキシーショック。


<リンク>
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2014年7月3日

抗リン脂質抗体症候群の第II因子インヒビターへのリツキシマブ

論文紹介です。

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「抗リン脂質抗体症候群に合併した第II因子インヒビターに対するリツキシマブ治療」

著者名: Guddati AK, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 25: 289-291, 2014.


<論文の要旨>

抗リン脂質抗体症候群において、第II因子インヒビターが出現して第II因子活性が著減した場合には、出血傾向がみられます。

第II因子インヒビターの治療は今までに報告がありません。


著者らは、第II因子インヒビターのために出血傾向をきたし手術が不可能状態となった女性症例を報告しています。

リツキシマブによる治療を行ったところ良好な反応がみられました。

第II因子活性は12%から61%に上昇し、PTは20.0秒から14.7秒に短縮し、PTTは148秒から38.8秒に短縮しました。

その結果、何の出血の合併症もきたすことなく腹部外科手術を施行できました。


本症例は、第II因子インヒビターにおいてリツキシマブ治療が有効である可能性を示しています。


<リンク>
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2014年7月2日

第XIII因子欠損症の治療

論文紹介です。

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「第XIII因子欠損症の治療」

著者名:Odame JE, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 25: 199-205, 2014.


<論文の要旨>

第XIII因子欠損症はまれな先天性出血性素因であり、出生100〜200万人に1人の発症頻度とされています。

治療としてはしばしば第XIII因子製剤による予防が行われますが、特に妊婦においては頭蓋内出血(ICH)対策や妊婦の継続のために重要です。


本疾患はまれであるために質の高いエビデンスはなく、症例報告がほとんどです。

著者らはMEDLINEを用いて、1961〜2012年の論文検索を行いました。

その結果、適当と考えられるのは、チェックした抄録43編であり合計で328症例となりました。


よくみられる出血症状としては、臍帯出血、ICH、血腫でした。

重症または症候性第XIII因子欠損症の診断の後、ほとんどの症例で予防的な凝固因子補充療法が行われ、出血エピソードを消失または減少させることに成功していました。 

また、第XIII因子製剤が予防的に投与された妊婦では、問題なく妊婦を継続できました。

第XIII因子製剤が入手不能な場合には、クレオプレチピテートまたは新鮮凍結血漿が用いられていました。

新しい遺伝子組換え第XIII因子製剤の使用も報告されており、効果および安全性において優れていました。


第XIII因子製剤の適正使用指針はないために、より多くの症例登録や国際的協同研究が必要と考えられました。


<リンク>
推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:57 | 出血性疾患

2014年7月1日

血友病A治療における第XIII因子の意義

論文紹介です。

関連記事:APTT血友病後天性血友病第V因子インヒビター第VIII因子インヒビターPT-INR

クロスミキシングテスト


「血友病A治療における第XIII因子の意義」

著者名: Rea CJ, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 159-168, 2014.


<論文の要旨>

血友病Aにおいて第XIII因子活性を生理的濃度以上に上昇させることで凝血塊を安定化することができるか検討しました。

重症血友病A患者6例より採血してトロボエラストメトリー法(T法)を用いて評価しました。

また、マウスモデルでの実験も行いました。


その結果、血友病患者からの血液に第XIII因子を添加したところ凝血塊の安定性は向上しました(第VIII因子活性が0.1IU/mL未満であってもt-PAによる線溶に対する抵抗性が上昇しました)。

第XIII因子の添加は化学量論的にその活性化を増やし、フィブリン塊の構造を改善し、凝血塊の透過性を低下させ、トロンビン形成を亢進しました。


T法では、第XIII因子は第VIII因子欠乏血漿におけるピークまでの期間とラグ時間を短縮しました。

マウスモデルでは、第XIII因子活性を生理的濃度以上に上昇させても特に問題なく、凝血塊形成までの時間に影響を与えませんでした。


以上、第VIII因子が低濃度であっても、第XIII因子は凝血塊を安定化させ構造を改善させるものと考えられました。

第XIII因子製剤は血友病治療のいろんな局面で有用である可能性があります。

<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学

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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:56 | 出血性疾患

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