金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年11月17日

汎血球減少と出血:金沢大学統合卒業試験

金沢大学医学部医学科6年生対象の統合卒業試験問題のなかで、当科と関連のある血液内科、呼吸器内科領域の問題解説を続けたいと思います。

今回は、画像もついています。



設問

45才女性。1ヶ月前の検診で汎血球減少を指摘され精査のため受診した。1週間前から歯肉出血、下肢の紫斑を認めるようになったが、その他の症状はない。

検査では、WBC 12,000/μl、Hb 11.3 g/dl、血小板 2.1万/μl、PT 22.5秒(基準10〜14) 、APTT 35.0秒 (基準対照32.2)、Fibrinogen 78mg/dl(基準200〜400)、FDP 250 μg/ml (基準10以下)、Dダイマー 82 μg/ml(基準5以下)であった。

紹介当日に骨髄穿刺による検査(特殊染色、染色体分析、免疫抗原検索)を実施した。May-Giemsa染色による骨髄穿刺所見を図に示す。今後の診療手順について最も適切なものはどれか。
 

APL



a 入院の上、可能な限り当日より原疾患の治療を開始する。
b 入院の上、DICの治療を行い、DICが軽快した後、原疾患の治療を開始する。
c まずDICの治療を行い、染色体検査の結果が判明した後(約2週間)、原疾患の治療を開始する。
d 入院予約の上、外来で経過を見る。染色体検査による確定診断がつき次第原疾患の治療を行う。
e 原疾患に対する薬物療法には効果が期待できないため、DICの治療を行いつつ、直ちに同胞のHLA検査を行う。



【解説】

急性前骨髄球性白血病(APL)の緊急性と治療薬であるレチノイン酸の効果・有効性に対する理解を問う問題です。

Faggot小体と播種性血管内凝固症候群(DIC)より急性前骨髄球性白血病(APL)と推測することは容易です。

著明な播種性血管内凝固症候群(DIC)をともなっており、緊急に治療を要する状態と判断できればc, dを否定することができます。

レチノイン酸の奏効率やDICに対しても有効なことを理解していれば、eを否定し、bも不適切であることを判断できます。


【正答】 a

 

【シリーズ記事】

血液凝固検査入門(インデックスページ)ー図解ー

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:09| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0)

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