金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年02月27日

GVHDの病態・疫学:造血幹細胞移植入門(43)

GVHDの分類

 



造血幹細胞移植入門:GVHDの病態・疫学

GVHDは、造血幹細胞移植時に輸注されるドナーのリンパ球が、患者の組織・臓器を攻撃する免疫反応です。

同種移植後GVHDの他、抗腫瘍効果を期待して、自家造血細胞移植後人工的に誘導する自家GVHDもあります。
 

GVHDには、移植後100日以内に起こりやすい急性GVHDと、100日を過ぎてから起こりやすい慢性GVHDがあります(上表)。

Filipovich AH, Weisdorf D, Pavletic S, et al. National Institutes of Health consensus development project on criteria for clinical trials in chronic graft-versus-host disease: I. Diagnosis and staging working group report. Biol Blood Marrow Transplant. 2005;11:945-956.


ただし、移植100日以降の急性GVHDや、100日以内の慢性GVHDもあります。
 

急性・慢性GVHDの症状が同時に起こりますと、慢性GVHDに分類されます。

急性GVHDの発症機序として3段階モデルが提唱されています。


急性GVHD発症:3段階モデル30

 

第一段階:ホスト抗原提示細胞活性化
・前処置による組織傷害
・炎症性サイトカイン増加、消化管粘膜傷害によるエンドトキシンの体内流入
・ホスト抗原提示細胞(主に樹状細胞)活性化
・ドナーTリンパ球によるホスト由来抗原認識増強

第二段階:ドナーT細胞活性化

・ホスト抗原提示細胞によるドナーT細胞の活性化
・マクロファージ活性化と細胞傷害性T細胞増加
・抑制性T細胞(Treg)増加

第三段階:組織傷害

・炎症性ケモカイン増加によるT細胞・単球・顆粒球の活性化と組織への遊走
・マクロファージ、細胞傷害性T細胞、炎症性サイトカインによる組織傷害
 


Ferrara JL, Levine JE, Reddy P, Holler E. Graft-versus-host disease. Lancet. 2009;373:1550-1561.


慢性GVHDは、自己抗体が高頻度に検出されることから、膠原病に類似した自己免疫機序が考えられています。

ただし、適切な動物モデルが存在しないことから、病態は不明な点が多いです。

日本造血細胞移植学会平成20年全国調査報告書によりますと、II度以上急性GVHD発症率は、血縁者間骨髄移植25%、血縁者間末梢血幹細胞移植35%、非血縁者間骨髄移植42%、非血縁者間さい帯血移植33%でした(下図)。
急性GVHD発症率
 

慢性GVHD発症率は、血縁者間末梢血幹細胞移植後が最も高かったです(下図)。同種移植患者の10-30%はGVHD関連合併症で死亡しますので、GVHD治療は重要です。

慢性GVHD発症率



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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:20| 血液疾患(汎血球減少、移植他)