金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 2010/11/30トップページ2010/12/02 >>
2010年12月1日

血液内科問題(鼻出血):(兼)医師国家&専門医 試験対策

金沢大学 血液学系統講義試験の問題紹介を続けたいと思います。

今回は、出血性疾患に関する臨床問題です。

 

患者:
21歳女性。

頻回かつ止血困難の鼻出血の精査目的に来院した。
血液検査は下記の通りであった。

Hb 8.1 g/dL,血小板数 33.8万/μL,出血時間12分,PT 10.3秒,APTT 82.3秒,フィブリノゲン 282 mg/dL,FDP 2.3 μg/mL.


妹も、幼少時より鼻出血がみられやすい。
この疾患の止血治療として正しいものはどれか。1つ選べ。

a) 濃厚血小板
b) 新鮮凍結血漿 
c) 副腎皮質ステロイド
d) デスモプレシン(DDAVP)
e) 遺伝子組換え第VIII因子製剤
 



(解説)
・妹にも出血症状がみられており、先天性出血性素因が疑わしい。

鼻出血は粘膜出血の一つ。おそらく、鼻出血のため貧血がみられている。参考:遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)と鼻出血

・血液検査では、APTTの延長と、出血時間の延長がみられている。

・以上より、von Willebrand病と考えられる。

・出血時には、コンファクトF(第VIII因子も含有された血漿由来第VIII因子製剤)またはデスモプレシン(DDAVP)が有効である。(参考:止血剤の種類と疾患

 

 (正答) d)

 

(正答率)80.2%

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

 


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 18:26 | 医師国家試験・専門医試験対策

造血幹細胞移植の種類:造血幹細胞移植入門(2)


造血幹細胞移植入門(インデックス)

移植の種類

 

造血幹細胞移植入門:造血幹細胞移植の種類

造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation: HSCT)とは、白血病や再生不良性貧血などの血液難病を治すため、造血幹細胞が含まれる血液を移植する治療法です。

治療法として確立しており、通常は保険診療で行われます。

なお、腎細胞癌や膵癌、乳癌といった固形腫瘍や難治性自己免疫疾患にも、行われることがあります。

自家 (または自己) (autologous) 造血幹細胞移植:移植する血液が元々患者自身のものである場合。

同種 (allogeneic) 造血幹細胞移植:移植する血液を他人からもらう場合。

同系 (syngeneic) 造血幹細胞移植:同種 造血幹細胞移植でもドナーが患者の一卵性双生児の場合。

 

ドナー(donor):血液の提供者

レシピエント(recipient)またはホスト(host):血液の受取手、つまり患者。

 

<造血幹細胞を含む血液の種類による分類>

骨髄移植(bone marrow transplantation: BMT)

末梢血幹細胞移植(peripheral blood stem cell transplantation: PBSCT)

さい (臍) 帯血移植(cord blood transplantation: CBT)

たとえば、一卵性双生児以外の兄弟姉妹の骨髄を移植しますと、同種血縁者間骨髄移植になります。

 

【関連記事】

肝障害/黄疸症例の抗がん剤治療(7回シリーズ)
腎障害と抗がん剤治療(5回シリーズ)
HEPAフィルターとLAF(3回シリーズ)
造血幹細胞移植
移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)


【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15 | 血液疾患(汎血球減少、移植他)

<< 2010/11/30トップページ2010/12/02 >>
▲このページのトップへ