金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年5月31日

凝固異常症と検査の進め方3:先天性凝固因子異常症(9)


凝固異常症と検査の進め方2:先天性凝固因子異常症(8)より続く。

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:41 | 出血性疾患

2011年5月30日

凝固異常症と検査の進め方2:先天性凝固因子異常症(8)


凝固異常症と検査の進め方1:先天性凝固因子異常症(7) より続く。

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:46 | 出血性疾患

2011年5月29日

血栓と止血の臨床:(編)日本血栓止血学会

血栓と止血の臨床
日本血栓止血学会より、「わかりやすい血栓と止血の臨床」が発刊されましたので、ご紹介申しあげます。
 

内科系、外科系問わず、多くの臨床医に読んでいただきたい、お勧めの1冊ではないかと思います。

 
 
 
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30 | 血栓止血(血管診療)

2011年5月28日

凝固異常症と検査の進め方1:先天性凝固因子異常症(7)


凝固異常症と家族・既往歴:先天性凝固因子異常症(6)より続く。

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58 | 出血性疾患

2011年5月27日

凝固異常症と家族・既往歴:先天性凝固因子異常症(6)


凝固異常症と臨床症状:先天性凝固因子異常症(5)より続く。

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スライド7
 
 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37 | 出血性疾患

2011年5月26日

凝固異常症と臨床症状:先天性凝固因子異常症(5)


凝固異常症発症頻度:先天性凝固因子異常症(4)より続く。


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スライド6

 (続く)凝固異常症と家族・既往歴:先天性凝固因子異常症(6)

 
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31 | 出血性疾患

2011年5月25日

凝固異常症発症頻度:先天性凝固因子異常症(4)


稀な凝固異常症:先天性凝固因子異常症(3)より続く。


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スライド5

 

(続く)凝固異常症と臨床症状:先天性凝固因子異常症(5)

 
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08 | 出血性疾患

2011年5月24日

稀な凝固異常症:先天性凝固因子異常症(3)


疫学:先天性凝固因子異常症(2) より続く。


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スライド4
 

 

(続く)凝固異常症発症頻度:先天性凝固因子異常症(4)

 
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42 | 出血性疾患

2011年5月23日

患者数:先天性凝固因子異常症(2)


疫学:先天性凝固因子異常症(1)より続く。


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スライド3

 

(続く) 稀な凝固異常症:先天性凝固因子異常症(3)
 


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32 | 出血性疾患

2011年5月22日

疫学:先天性凝固因子異常症(1)

今回より、先天性凝固因子異常症(ただし、血友病vWD以外)を、シリーズでお届けしたいと思います。説明の文章はできるだけ少なくして(時には皆無にして)、『図を見れば分かる!」を目標にしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

関連記事:先天性凝固異常症:インデックス

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スライド2
 


(続く)患者数:先天性凝固因子異常症(2)


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:14 | 出血性疾患

2011年5月21日

米国血液学会(学会便り)2:金沢大学血液内科

米国血液学会(学会便り)1:金沢大学血液内科 より続く。

 

 「2009年米国血液学会」(2)   

4,098題の発表がありました。

抄録集への非掲載もあり、全体の応募数は不明ですが、採択率は6割程度のようです。

教室員が筆頭演者のものは6題採択され、存在感を示すことができました。

6題はいずれ劣らぬ内容で注目度も高く、演者は、矢継ぎ早に投げかけられる質問への対応に追われていました。

高松博幸博士は、肝炎後再生不良性貧血にかかわる自己抗体を世界で初めて同定し、診断・治療へ向けた新境地を築きました。

また、杉森尚美博士は、全国から収集した造血不全患者の膨大なデータベース解析により、免疫性病態と染色体異常の関連を明らかにし、大きな注目を集めました。


今回の学会で唯一残念だったのは、ほぼ毎日雨に降られたことです。

よほど珍しいことのようで、地元の人達も驚いていました。

お陰で、フレンチクォーターを散策する誘惑に駆られることもなく、日々勉強に励むことができました(?)。

ほかの参加者達もそうだったのでしょう。

今年はいつになく会場に人が溢れていた気がします。

 

ニューオリンズと言えば忘れてならないのがニューオリンズ・セインツです。

ちょうど学会期間中の日曜日午後セインツがレッドスキンズを逆転で破り、12連勝で地区優勝を決めました(地区優勝記念シャツはその前から店頭に並んでいましたが)。

学会場が一番騒がしかった瞬間かもしれません。

セインツがその勢いのままスーパーボールを制したのは、記憶に新しいところです。

 

第三内科では、肺癌グループがASCO(6月)での発表を、血液グループがASH(12月)での発表を常に目指しています。

半年毎に開かれる世界最大規模のがん学会に教室員がこぞって参加し、知識を新たにするという取り組みは、病気で苦しむ患者さんを一人でも多く救うべく、がん診療や研究に情熱を傾けている第三内科の姿勢を如実にあらわしています。

国際学会参加を通じてわき起こってきた熱い思いや斬新なアイデアを活かし、今後もさらなるブレイクスルーを目指したいと考えています。

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16 | 血液内科

2011年5月20日

米国血液学会(学会便り)1:金沢大学血液内科

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の中にある記事を、ブログ記事化したいと思います。

 執筆時点から、時間が経過していますので、現状に合わない部分があるかも知れませんがお許しいただければと思います。

今回は、国際学会便りです。

 

ASH

 

「2009年米国血液学会」(1)   by 高見昭良

2009年12月5日から8日にかけ、米国血液学会(ASH)がルイジアナ州ニューオリンズで開催されました。

ジャズ発祥の地であり、2005年カトリーナで街の8割が水没した場所でもあります。

当時ニューオリンズで開催予定だった米国血液学会が、急遽アトランタへ変更されたという経緯もあり、今回の学会を感慨深く見つめた人も多いと思います。


第三内科は、中尾・大竹教授はじめ総勢10名で参加しました。

日頃の研究成果を発表すると同時に、血液・腫瘍学に関する最先端の知見を余すことなく堪能してきました。

世界80か国以上から集まった臨床医・研究者と情報交換するだけでなく、日本からともに参加した研究者達と交流を深める良い機会です。

ASHは世界最大の血液学会ですが、参加者数が米国臨床腫瘍学会(ASCO)を超え、世界一のがん学会になったこともあります。

最近は参加者数が伸び悩んでいるものの、今年も2万人以上が参加しました(上図)。

ちなみにこの数は、日本で不足している医師数に相当します(厚労省2010年調査)

(続く)

米国血液学会(学会便り)2:金沢大学血液内科

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:04 | 血液内科

2011年5月19日

造血幹細胞移植の夢と現実:インデックス


造血幹細胞移植の夢と現実(8)移植後再発予防と今後の展望 より続く

(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。

 

造血幹細胞移植の夢と現実(インデックス)

1)骨髄移植

2)ドナーリンパ球輸注(DLI)

3)DLIが効くメカニズム

4)固形腫瘍(癌)

5)同種免疫療法の限界

6)移植後再発白血病と再移植

7)造NK細胞とGVL効果増強

8)移植後再発予防と今後の展望

 

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58 | 血液内科

2011年5月18日

造血幹細胞移植の夢と現実(8)移植後再発予防と今後の展望


造血幹細胞移植の夢と現実(7)NK細胞とGVL効果増強 より続く

(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。

 

造血幹細胞移植の夢と現実(8)

同種免疫に依存しない移植後再発の予防

これまで述べたように、GVHDに依存したGVL効果には限界があることから、最近ではGVHDは極力抑えることによってNK細胞によるGVL効果を高めることが重要と考えるようになりました。

その一つの試みとして、シクロスポリンの血中ピーク濃度をできるだけ高く保つことが非血縁者間移植後のGVHD予防にどの程度有効かを明らかにするための全国的な臨床試験を山崎君が中心となって行っています。

また、GVHDを起こすT細胞とは別に、特異的に白血病を攻撃する白血病関連抗原特異的T細胞を誘導するための基礎的検討を近藤君が精力的に行っています。

 

造血幹細胞移植の今後の展望

患者の高齢化や新規分子標的薬の登場によって、治療関連死亡を来さない患者に優しい移植方法が以前にも増して求められるようになっています。

一方、移植後再発やGVHDは依然として大きな壁として立ちはだかっています。

移植に携わる我々血液内科医はこの壁を乗り越えるためにもっと工夫を重ねる必要があります。

アカデミアの世界では、どの雑誌に論文を載せたかがしばしば人物評価の指標に使われています。

しかし、臨床家の研究では、自分のやった仕事がどの雑誌に載ったかではなく、その成果がどの程度臨床に活かされているかの方がむしろ重要です。

今後も若い人と一緒に、臨床の現場に反映できる研究成果を挙げていきたいと思っています。

 

(続く)

造血幹細胞移植の夢と現実:インデックス

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:33 | 血液内科

2011年5月17日

造血幹細胞移植の夢と現実(7)NK細胞とGVL効果増強


造血幹細胞移植の夢と現実(6)移植後再発白血病と再移植より続く

(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。

 

造血幹細胞移植の夢と現実(7)

NK細胞によるGVL効果の増強

臍帯血移植を行うと、造血幹細胞に加えてT細胞やNK細胞などの免疫担当細胞も同時に移植されます。

臍帯血中のT細胞は未成熟であるため、HLAの不適合があってもGVHDが起こりにくいのですが、NK細胞は未成熟であっても強いGVL効果を示すことが中国の留学生盧緒章君の研究で明らかになりました。

また、毒性の低い薬剤を投与することによって、NK細胞に対する白血病細胞の感受性を高められることも分かりました。


臍帯血移植後にはT細胞の回復は遅れますが、NK細胞は移植後早期から回復します。

このT細胞が回復する前に現れる移植後早期のNK細胞がGVL効果の発現に重要であるため、移植後のGVHD抑制にはNK細胞を傷害しない薬剤を用いる必要があります。

このため大畑欣也君が、GVHDの予防に用いられるいくつかの免疫抑制薬についてNK細胞に及ぼす影響を検討したところ、臍帯血ミニ移植後のGVHD予防に頻繁に用いられているミコフェノール酸モフェチル(MMF)が、NK細胞の増殖や働きを強く傷害することが分かりました。

したがって、NK細胞によるGVL効果を温存するためには、MMFを含まないGVHD予防レジメンを用いる必要があることが分かりました。


一方、NK細胞による抗腫瘍効果は、NKG2DというNK細胞を活性化させるレセプターの遺伝子多型によって決まることが分かっていました。

高見君、ニカラグアの留学生J.Luis Espinoza君らは、NK活性の高いNKG2D多型を持つ非血縁ドナーから移植を受けた白血病患者の生存率が、NK活性の低いNKG2D多型を持つ非血縁ドナーからの移植例に比べて有意に高いことを世界で初めて見出しました。

その他に、免疫調節を司るインターロイキン17遺伝子や、パーフォリン遺伝子などの多型も、非血縁ドナーからの移植成績に影響を及ぼすことを明らかにしています。

 

(続く)

造血幹細胞移植の夢と現実(8)移植後再発予防と今後の展望

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:22 | 血液内科

2011年5月16日

造血幹細胞移植の夢と現実(6)移植後再発白血病と再移植


造血幹細胞移植の夢と現実(5)同種免疫療法の限界
より続く

(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。

 

造血幹細胞移植の夢と現実(6)

移植後再発白血病に対する再移植

慢性骨髄性白血病以外の移植後白血病再発に対する唯一の根治療法が、再度の造血幹細胞移植です。

ただし再移植によって白血病を治そうとすると、最初の移植時以上に前処置を強めて白血病細胞を叩かなければなりません。

しかし、一度移植を受けた患者さんは移植前処置やGVHDなどによって既に臓器障害を起こしているため、強い前処置には耐えられません。

かといって前処置を弱くするとすぐに再発してしまうというジレンマがあります。

前処置をできるだけ弱くして、初回とは異なる移植片を用いて移植すれば、初回移植にはなかった移植片対白血病(graft-versus-leukemia、GVL)効果のため、治癒が得られる可能性があります。

2005年のアメリカ血液学会の抄録に、状態の悪い白血病患者に対して一日だけの極端に弱い前処置を用いてHLAの半合致移植を行ったところ、一部の例で長期生存が得られたという報告でありました。

学会には採択されなかったこの抄録の前処置を参考にして、さらに弱い移植前処置で再発白血病患者さんに対して臍帯血移植を行ったところ、無事生着と長期生存が得られました。

このone-day regimenと臍帯血を用いた再発白血病に対する再移植は、山下剛史君、杉盛千春君らが報告して以来、国内の多くの施設で利用され、その有用性と、臍帯血移植の持つ強いGVL効果が確認されています。

実際のところ、金沢大学で再移植を行った移植後再発白血病患者さんのうち、長期生存しているのは全例が臍帯血ミニ移植を受けた例です。


臍帯血は骨髄とは異なり、臨機応変に移植に用いることができます。

このため、従来は予後絶対不良と考えられていた移植後の再発白血病に対しても、化学療法によって白血病細胞を一時的にでも十分に減らすことができれば、ピンポイントで臍帯血移植を行うことにより救命できる可能性があります。

 

(続く)

造血幹細胞移植の夢と現実(7)NK細胞とGVL効果増強

 

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2011年5月15日

造血幹細胞移植の夢と現実(5)同種免疫療法の限界


造血幹細胞移植の夢と現実(4)固形腫瘍(癌)
より続く

(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。

 

造血幹細胞移植の夢と現実(5)

同種免疫療法の限界

全国調査によって、急性白血病の移植後再発に対してはDLIの効果が乏しいことは示されていましたが、DLIに替わる良い治療手段がないため、その後も急性白血病再発に対してDLIが行われていました。

実際には再移植によって良くなる可能性がありながら、漫然とDLIが行われたために重症のGVHDを発症し、不幸な転帰をとる例もありました。

そこでDLIによってGVHDを誘導することが、移植後再発に対して本当に有効なのかどうかを明らかにするため、厚生労働省の班研究参加施設を対象として、大量のDLIをGVHDが起こるまで繰り返し行うという臨床試験を高見君が行いました。

その結果、GVHDが起こった例では寛解が得られる確率がやはり高かったのですが、いったん改善した例であっても骨のような髄外の臓器に再発する例がほとんどであり、治癒が得られた例は皆無でした。

また寛解が得られた例の中には、重症GVHDのため高度の臓器障害を発症した例もありました。

したがって、移植後の急性白血病再発に対するT細胞のGVL効果には限界があると思われました。

 

(続く)

造血幹細胞移植の夢と現実(6)移植後再発白血病と再移植

 

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2011年5月14日

造血幹細胞移植の夢と現実(4)固形腫瘍(癌)


造血幹細胞移植の夢と現実(3)DLIが効くメカニズム
より続く

(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。

 


造血幹細胞移植の夢と現実(4)

固形腫瘍に対する同種造血幹細胞移植の効果

造血幹細胞移植によって血液腫瘍だけではなく固形腫瘍も治したいというのは移植医の誰もが描く夢の一つです。

慢性骨髄性白血病再発に対するDLIの成功をきっかけに、同種造血幹細胞移植の免疫的な抗腫瘍効果を、抗がん薬の効かない固形腫瘍に応用しようとする試みが各地でなされるようになりました。

これには、従来の移植前処置を弱めた骨髄緩和的移植(いわゆるミニ移植)前処置法や、末梢血幹細胞移植の普及によって、同種造血幹細胞移植が高齢者に対しても比較的安全に行えるようになったという背景があります。

2002年頃に、私が留学していたNIHのラボから、腎細胞癌の約4割にミニ移植が奏効するというセンセーショナルな成果が発表されました。

高度先進医療を推進するための文科省からの研究費を受け、高見昭良君が中心となって、第三内科でも腎細胞癌に対するミニ移植の臨床試験を行いました。

その結果、ミニ移植には一定の抗腫瘍効果があるものの、それはGVHDに依存したものであるため、腫瘍量が多い場合には生存期間の延長にはつながらないことが分かりました。

ただし、移植前の腫瘍量が少なかった一人の患者さんは、ミニ移植により腫瘍が消失し、長期の寛解が得られました。また、ミニ移植後の腫瘍組織に細胞傷害性T細胞の浸潤が誘導されていることが、石山謙君、高見君の研究によって示されています。

 

ただ、同種免疫が効きやすい慢性骨髄性白血病や腎細胞がんなどの腫瘍は、進行が遅い腫瘍であり、かつがん化のメカニズムが分子レベルで明らかになっているため、同時に分子標的療法のもっとも良い適応でもあります。

一方で同種免疫療法には多かれ少なかれGVHDによるQOLの低下という問題が付きまとうため、最近ではこれらの腫瘍に対して同種造血幹細胞移植が適応されることは少なくなっています。

その結果、移植医が克服しなければならない悪性腫瘍のターゲットは、分子標的療法が効きにくい、またはその開発が遅れている難治性白血病にシフトしてきています。

 

(続く)

造血幹細胞移植の夢と現実(5)同種免疫療法の限界

 

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2011年5月13日

造血幹細胞移植の夢と現実(3)DLIが効くメカニズム


造血幹細胞移植の夢と現実(2)ドナーリンパ球輸注(DLI)
より続く

(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。

 


造血幹細胞移植の夢と現実(3)

DLIが効くメカニズム

我々臨床家の使命は、臨床の現場で体験した奇跡のメカニズムを解明し、それを他の患者さんの治療に役立てることにあります。

治せる白血病がたとえ特定の種類に限られていたとしても、リンパ球が白血病を攻撃するメカニズムを明らかにできれば、それをその他の白血病治療に応用できる可能性があります。

面白いことに、DLIを行ってから白血病細胞が減少し始めるまでにはリンパ球を輸注してから1−2カ月以上かかります。

このタイムラグは、白血病細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞がDLI後に十分に増殖するまでの期間を示しているように思われました。

そこでDLIを受けた慢性骨髄性白血病患者さんの検体を全国から送ってもらい、DLI後の血液や骨髄中のTリンパ球を近藤恭夫君が詳細に検討したところ、白血病の傷害に関わっている特定のT細胞が、白血病細胞が減少する直前に急速に増加することが分かりました。

また、このような白血病を殺すT細胞は、DLIによって持ち込まれたものではなく、元々患者さんの末梢血に存在してものであることが、その後の小谷岳春君の研究によって明らかになりました。

すなわち、患者さんの身体の中には白血病細胞を特異的に傷害するT細胞が元々存在しているが、様々な免疫寛容のメカニズムによって、そのままではがんを攻撃できません。

ところが、ドナーリンパ球が大量に体内に輸注されると、何らかの機序によって白血病に対する免疫寛容の破綻が誘導され、その結果白血病細胞が攻撃されるようになったと考えられます。

随分昔ですが、化学療法後の急性白血病患者さんでは、治療過程で受けた輸血量の多い例の方が、輸血量の少ない例よりも再発率が低いという報告がありました。

昔は輸血製剤から白血球が十分除去されていなかったため、輸血によって持ち込まれた白血球によって患者さん自身のTリンパ球が刺激され、抗白血病免疫が誘導されていたのではないかと思われます。

 

2000年頃から、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を大量にドナーに投与することによって採取した末梢血中の幹細胞を輸注するという末梢血幹細胞移植が、骨髄移植に代わって盛んに行われるようになりました。

当時G-CSFはリンパ球系には作用しないと考えられていたのですが、大量に投与されるとin vivoでTリンパ球が活性化されることが杉森尚美君の研究によって明らかになりました。

末梢血幹細胞移植では骨髄移植に比べて白血病の再発率が低いことが知られています。

これは単にGVHDの頻度が高いだけでなく、活性化されたリンパ球が患者に輸注されることによって、患者の体内に残った白血病に対する細胞傷害性T細胞が誘導されやすくなるためとも考えられます。

 

(続く)

造血幹細胞移植の夢と現実(4)固形腫瘍(癌)

 

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2011年5月12日

造血幹細胞移植の夢と現実(2)ドナーリンパ球輸注(DLI)


造血幹細胞移植の夢と現実(1)より続く(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。

 

造血幹細胞移植の夢と現実(2)

移植後再発の克服

私が大学院を卒業する1984年頃までの骨髄移植は、100日生きれば成功という厳しい治療でした。

その後、主な移植適応が寛解状態の白血病患者さんに絞られ、新規抗生薬やシクロスポリンが臨床応用されるようになってから、無菌室から生還するのは当たり前という時代に変わって行きました。

移植片の生着(造血の回復)が普通のことになると、次に何とか克服しないといけないと思うようになったのは、移植後の再発です。

地獄をみるような辛い思いをして無菌室から何とか出たにもかかわらず再発してしまうことほど、患者さんや家族にとって残酷なことはありません。

それは苦労した主治医にとっても同じことです。

移植後に再発した白血病が、移植片対宿主病(graft-versus-host disease、GVHD)の発症とともに寛解に至る例があることがその頃から知られていました。

このため、移植片の免疫学的な力を追求すれば、移植後白血病再発という最大の悲劇を回避できるのではないかと思うようになりました。

 

ドナーリンパ球輸注(donor lymphocyte infusion、DLI)のインパクト

留学先のアメリカNIHから大学に帰って移植の臨床に勤しんでいた頃、ドイツのKolbらが、慢性骨髄性白血病の再発が移植ドナーのリンパ球を大量に輸注するだけで完治したという、当時としては画期的な報告をBlood誌に発表しました。

同じ状況の患者さんがいれば是非試してみたいと思っていたところ、兄弟からの移植を受けた慢性骨髄性白血病患者さんが立て続けに3人再発されました。

早速同じようにドナーリンパ球輸注(DLI)を行ったところ、GVHDを発症することなく白血病細胞が見事に消失し、その後も再発の徴候は一切ないまま患者さんは長期生存されています。

がんに対して免疫が働くことは古くから知られていましたが、がんが免疫によって「治癒する」かどうかは懐疑的でした。

慢性骨髄性白血病の移植後再発に対するDLIは、がんが免疫(リンパ球)によって本当に治ることを証明した最初の事例でした。

このように白血病が免疫によって治っていく過程を目の当たりにすることができたのは、医師として幸運であったと思います。このDLI成功の経験は当時主治医をしていた山崎宏人君が、日本では初めて論文として報告しました。

DLIが慢性骨髄性白血病に効くのであれば、その他の急性白血病再発に対しても効果を示す可能性があります。

当時輸血部の准教授をされていた塩原信太郎先生が中心となって、厚生労働省の班研究として全国調査を行ったところ、DLIは慢性骨髄性白血病の慢性期再発に対しては80%の確率で奏効するものの、その他の白血病再発に対してはほとんど効かないことが分かりました。

それでもグリベックという分子標的薬のなかった当時、DLIは移植後再発に対する重要な治療手段であることが認められ、塩原先生の尽力によりこの治療は日本における最初の細胞療法として保険診療になりました。

 

(続く)

造血幹細胞移植の夢と現実(3)DLIが効くメカニズム へ

 

 

【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連

造血幹細胞移植入門(インデックス)

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00 | 血液内科

2011年5月11日

造血幹細胞移植の夢と現実(1)骨髄移植

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)の同門会報から、教授コーナーの記事(by 中尾眞二教授)を紹介させていただきます。

執筆時点から、月日が経過していますので、現状に合わない部分があるかも知れませんが、ご容赦お願いいたします。

 

造血幹細胞移植の夢と現実(1)

2010年8月1日で教授就任後11年が経過しました。定年まで勤め上げることができたとしますと、マラソンで言えば折り返し点を過ぎたところになります。

相変わらず医師不足に苦しんではいますが、一つの教室に勤め続けてきたことが、最近では研究の成果として身を結びつつあるように感じています。

昨年の本コーナーでは、10年の区切りの年であったため、骨髄不全領域における私自身の研究の歩みを紹介しました。

今回は第三内科のもっとも重要な研究テーマである骨髄移植(最近では造血幹細胞移植と言います)について、教授就任前後の研究の流れを紹介したいと思います。研究といっても、私たちが行っているのは臨床寄りの研究ですので難しい話はありません。気軽に読んで下されば幸いです。

 

骨髄移植と第三内科

病棟実習に来る学生と話をしていると、「先生はどうして血液内科を選んだのですか」と聞かれることがよくあります。

その質問に違和感を覚えるのは、当時は血液内科という枠組みではなく、第三内科というナンバー内科であったこともありますが、それに加えて、血液内科を専門とするというよりも骨髄移植でがんを治したいというのが入局のきっかけであったためです。

ご存知のように、日本における近代骨髄移植は、服部絢一初代教授の強力な指導力の下に金沢大学第三内科で産声をあげました(敬虔なクリスチャンでいらした服部先生の名言「不治の病を治した時の喜びは無限に近い」は今も移植医療の原点となっています)。

私が入局した頃、通常の臨床カンファレンスとは別に週1回行われていた骨髄移植カンファレンスは、海外の文献から新しい情報を取り入れて患者さんの治療に役立てようという熱気で満ち溢れていました。

誰も知らない新しい世界に挑戦するという興奮や喜びは、あの頃の骨髄移植カンファレンスを通して学んだような気がします。

免疫と血液を健康な人のものにそっくり入れ替えるというダイナミックな治療に学生時代から魅力を感じていたこともあり、原田実根先生が率いる骨髄移植グループに属することになりました。

 

(続く)

造血幹細胞移植の夢と現実(2)

 

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造血幹細胞移植入門(インデックス)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47 | 血液内科

2011年5月10日

金沢大学「呼吸器研究グループ」紹介(インデックス)

金沢大学第三内科「呼吸器研究グループ」紹介(5)より続く。


<インデックス>

1)呼吸器研究グループ

2)気道疾患グループ

3)肺疾患グループ

4)肺癌グループ

5)呼吸器内科グループ全体

 

【関連記事】  咳嗽の診断と治療

1)ガイドライン

2)咳嗽の定義 & 性状

3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

【関連記事】

慢性咳嗽の診療

非小細胞肺癌治療の最前線

肺がんに気づくサイン

 

 【リンク】

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53 | 呼吸器内科

2011年5月9日

沢大学第三内科「血栓止血グループ」インデックス

 

金沢大学第三内科「血栓止血研究グループ」紹介(5)より続く。


血栓止血研究室(血管診療グループ)

1)血栓止血研究室のテーマ

2)播種性血管内凝固症候群(DIC)

3)抗リン脂質抗体症候群(APS)

4)先天性凝固障害

5)ヘムオキシゲナーゼ−1(HO-1)、アネキシンII             

 

 

【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55 | 血栓止血(血管診療)

2011年5月8日

金沢大学第三内科「血栓止血研究グループ」紹介(5)

金沢大学第三内科「血栓止血研究グループ」紹介(4)より続く。


血栓止血研究室(血管診療グループ)

また最近小児科との共同研究として、ヘム蛋白の分解酵素であるヘムオキシゲナーゼ−1(HO-1)の抗血栓作用についての研究を、大学院生丸山、油野、安本らが開始し、本年度アメリカ血液学会(ASH)で発表いたしました。

まだ発展途上の研究ですが、HO-1は治療戦略の一つとして利用できる魅力的な酵素の可能があると考えております。


一方、保健学科社会人大学院生である検査部生理機能検査室の寺上は、能登沖地震直後に現地に入り、心肺・総合外科の大竹先生や木村先生と共に避難住民を対象とした下肢静脈エコー検査や血栓のマーカーであるFDPやDダイマーを測定した結果を論文としてまとめました。

地震発症直後のDVTの発症状況を提供する、貴重な資料になると考えております。


また新たな研究の方向性として、林らは大動脈瘤に合併するDICの病態に迫るべく大動脈瘤のラット動物モデルを作成し、線溶作用を有するアネキシンIIが高発現していることを免疫組織学的染色およびreal-time RT-PCR法を用いて明らかにしました。

また臨床的には、大動脈瘤手術症例の切除標本と血中分子マーカーを用いた検討を、心肺・総合外科の血管グループと共同研究で行っております。

最近、大動脈瘤壁組織の免疫組織学的検討においてアネキシンIIが濃染することを明らかにし、瘤形成における線溶系の関与を示唆しました。

参考:急性前骨髄球性白血病(APL)とDIC:ATRA、アネキシンII


以上、私たち血栓止血研究室は、生体の最も基本的な生理反応である止血と、人類が克服すべき血栓症を扱っています。

また、この領域は追求する程に味わいのある深淵な学問であると思っています。

志を同じくする同志が一人でも増えることを願ってやみません。                

 

 

【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53 | 血栓止血(血管診療)

2011年5月7日

金沢大学第三内科「血栓止血研究グループ」紹介(4)

 

金沢大学第三内科「血栓止血研究グループ」紹介(3)より続く。


血栓止血研究室(血管診療グループ)

先天性凝固障害の分子病態に関する研究としては、森下および保健学科の学生らを中心に、凝固因子および凝固阻止因子の分子異常について幅広く研究しています。

一般的には先天性凝固因子欠損症では出血傾向を、凝固阻止因子欠損症では血栓傾向を呈することが知られています。

参考;血友病

そのような異常を呈する症例について家族を含めて遺伝子解析を行い、その変異部位の同定を行っています。

今までにプロトロンビン異常症、第VII因子・第X因子・第XI因子・第XII因子・プレカリクレインなどの凝固因子欠損症の解析、またプロテインC・プロテインS(PS)・アンチトロンビンなどの凝固阻止因子欠損症の解析を幅広く行なっており、世界でも報告のない新たな変異部位を次々と明らかにしました。

参考:先天性血栓性素因と病態:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症


現在では、全国各地から様々な欠損症の解析を依頼されており、森下らは嬉しい悲鳴をあげているようです。

さらに、組み換えDNAの手法を用いて異常分子を作成し、その機能解析の研究を、保健学科助教の関谷および大学院生の下川原、柄戸を中心に行っております。


北陸地域は先天性凝固異常症の患者様が比較的多いと考えております。

特に、先天性PS欠損症は日本人に多く、中でもPS Tokushima変異は一般人の55人に1人は異常アレルを有しているとの報告があります。

不育症の原因としてもPS欠損は重要であり、何かおかしいなと思われたときは、いつでも気軽にご相談ください。

 

【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:44 | 血栓止血(血管診療)

2011年5月6日

金沢大学第三内科「血栓止血研究グループ」紹介(3)

金沢大学第三内科「血栓止血研究グループ」紹介(2)より続く。


血栓止血研究室(血管診療グループ)

抗リン脂質抗体症候群(APS)に関する基礎的検討・臨床研究についても精力的にとり組んできました。

国際血栓止血学会において、抗リン脂質抗体の1つである「ループスアンチコアグラント(LA)」の測定・診断ガイドラインの改訂が行なわれたことから、この改定ガイドラインに則った、我が国におけるLA診断法の標準化に向けた取り組みを行っています。

ここ数年、新規抗リン脂質抗体として注目されている「フォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)」については、他施設との共同研究を進めています。

これらの研究の結果、IgM型aPS/PTは微小循環障害を来たし、その結果、妊娠初期流産や網状皮斑、皮膚潰瘍などの皮膚症状をもたらすとともに、劇症型抗リン脂質症候群の原因抗体であることが明らかとなってきました。


外来には、血栓症の患者さんが多数紹介受診され通院されていますが、APSにより死産を経験したことを公表し、適切な治療によりお子様を授かった女優さんの影響などもあり、不育症患者様の紹介あるいは自分から希望しての受診が多いです。

APSはいまだ不明の部分も多い疾患群ですが、徐々に解明され、コントロール可能となりつつある部分もあります。

 

【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35 | 血栓止血(血管診療)

2011年5月5日

金沢大学第三内科「血栓止血研究グループ」紹介(2)


金沢大学第三内科「血栓止血研究グループ」紹介(1)より続く。


血栓止血研究室(血管診療グループ)

さて、当研究室の医局員スタッフは、大学には、朝倉、森下、林、門平の計4人が在籍しています(この部分のみ、同門会誌原稿を現状に合わせて修正しました)。


当研究室は、一貫して「血栓症の克服」に向けて研究を進めています。

特に、播種性血管内凝固症候群(DIC)病態解析と治療法の改善、抗リン脂質抗体症候群(APS)の病態解析・臨床、血栓性疾患の病態解析、凝固異常症の遺伝子解析は、私達が最も力を入れているところです。


DIC研究に関しては、ラットDICモデルを用いた検討を行ってきましたが、LPS誘発DICモデルと組織因子(TF)誘発DICモデルでは全く病態が異なり、前者は臨床の線溶抑制型DICに後者は線溶亢進型DICに類似した病態であることを指摘しました。

なお、このDIC病型分類の概念は私たちが長年にわたって主張してきましたが、血栓止血学会誌にガイドライン的論文の中で掲載されました(2009年)。

また、TFモデルは元来臓器障害を来しにくいモデルですが抗線溶薬を投与すると臓器障害が悪化すること、LPSモデルに対する抗線溶薬の投与は臓器障害をさらに悪化させること、LPSモデルに対するウロキナーゼの投与は臓器障害の進展を阻止することなどの事実から、DICにおける線溶活性化が病態と密接に関連することを報告してきました。

最近では、本来は他疾患に用いられている種々の薬剤が、DIC病態を軽快させるという興味深い結果が蓄積されています。


なお、日本血栓止血学会 学術標準化委員会(SSC)の「DIC部会」の部会長として朝倉が任ぜられ、また、森下、林は部会員に任ぜられました。金沢大学としては日本におけるDICの臨床&研究における責任の重大さを感じているところです。

 

【リンク】

 

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:22 | 血栓止血(血管診療)

2011年5月4日

金沢大学第三内科「血栓止血研究グループ」紹介(1)

金沢大学医学部第三内科(血液・呼吸器内科)の研究室紹介シリーズを続けたいと思います。

今回も金沢大学第三内科同門会報を出典としています。原稿執筆時点から月日が経過していますので、現状とは既に異なっている部分もありますが、ご容赦いただければと思います。

最後は、「血栓止血研究室(血管診療グループ)」です。

 

 

血栓止血研究室(血管診療グループ)

血栓止血研究室は、血栓止血学を臨床・研究・教育のテーマとしています。全身臓器に分布する血管を対象としますので、多くの他領域と関連が深いのが特徴です。

血栓止血学は血液内科の領域の一つと思われがちですが、「血管内科」と言った方がよりわかりやすいかも知れません。


最近の臨床現場での話題の一つといたしまして、遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(商品名:リコモジュリン)が、多くの臨床医に処方されることになったことをあげられます。

2008年5月から播種性血管内凝固症候群(DIC)治療薬として発売されて医療機関の一部で既に処方されていましたが、この度全例調査が終了して、全医療機関で使用可能になりました。

本薬はヘパリンと比較して出血の有害事象は少なく、しかも効果の上回る薬剤です。抗凝固作用のみならず、抗炎症効果も強力である点も注目されています。

炎症性サイトカインや死のメディエーターと言われているHMGB-1を抑制することが知られています。

近年、DICにおける凝固と炎症のクロストーク(病態の悪循環サイクルを形成)が話題になっていますが、本薬はこのクロストークを遮断する上でも期待されています。今後のDIC治療の主軸になると思われます。


深部静脈血栓症や肺塞栓
に関する臨床各科からのコンサルトも相変わらず多いです。

また、術後のDVT発症を予防する目的としてフォンダパリヌクス低分子ヘパリンであるエノキサパリンも、当院においても数多く処方がなされています。今後、血栓止血領域において「予防治療」的な考え方がますます浸透していくと思っています。


現代に生きる人間は出血には強力ですが、血栓症にはとてももろい生物です。

その理由は紙面の関係で省略しますが、全人類が血栓症に対抗する方法を考える必要があると思っています。

個人的には、全人類が疾患の有無とは関係なく、弾性ストッキングを装着したり、抗血栓療法治療薬をサプリ的に内服するような時代がくるような気がしています。

健康的な観点のみならず美容的にもすぐれたオシャレな弾性ストッキングが、いろんな所で売られるそして皆が装着する、いわゆる「全人類 弾スト時代」が到来するのではないでしょうか。



【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:10 | 血栓止血(血管診療)

2011年5月3日

金沢大学第三内科「呼吸器研究グループ」紹介(5)

金沢大学第三内科「呼吸器研究グループ」紹介(4)より続く。


呼吸器内科グループ全体
の臨床研究も展開しております。

1)COPDおよび気管支喘息の長期予後調査(事務局:北、責任者:中積泰人、研究遂行分担者:広瀬達城、織部芳隆)

2)アトピー咳嗽と咳喘息に対するロイコトリエン拮抗薬の有効性(事務局:北俊之、Allergology Internationalに掲載)

3)慢性咳嗽の原因疾患調査:JRS guidelines vs. ACCP guidelines(責任者:阿保未来、片山伸幸)

4)咳喘息からの喘息発症に対するロイコトリエン拮抗薬の予防効果(金沢大学、京都大学、長崎大学 前向き共同研究、責任者:大倉徳幸)、なども地道に進行しています。


呼吸器の疾患は種類も病態も多様であり、一般呼吸器内科医が扱える教科書通りの患者だけではなく、個々の病態を考えながら診療しなければならない患者も少なからず存在します。

「考えながら診療する能力を持つ呼吸器内科医(専門呼吸器内科医)」が求められる訳です。

専門呼吸器内科医の養成には、研究、とくに学位研究が第一ステップとなります。

診療や外勤のため研究時間が十分に確保できない状況での研究活動は容易ではありませんが、良い研究環境を提供できるようにスタッフ一丸となって努力しています。

 

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3)急性咳嗽

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43 | 呼吸器内科

2011年5月2日

金沢大学第三内科「呼吸器研究グループ」紹介(4)

金沢大学第三内科「呼吸器研究グループ」紹介(3)より続く。


肺癌グループ
(チーフ:笠原先生)

2002年9月に全く新しいタイプの肺癌治療薬ゲフィチニブ(イレッサ)が登場しました。

ゲフィチニブは著効を示しても、数ヶ月から数年の内にその効果が消失しますが、次の戦略をどうするかが重大な問題となっています。

そこで、酒井(麻夫)先生は、EGFR-TKI耐性株を用いて、抗がん剤感受性とその機序を明らかにする研究を行い、ゲフィチニブ耐性株では抗癌剤の標的分子TopoIが高発現しているため、抗癌剤に対して高感受性を示すことを明らかにしました(学位論文完成、投稿中)。

EGFR-TKIはEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんには劇的な効果がありますが、遺伝子変異陰性の症例に対する効果規定因子を探索したところ、HGF(hepatocyte growth factor)がEGFR遺伝子変異とは独立したEGF-TKI治療の効果予測のバイオマーカーである可能性が示唆されました。


臨床研究では、

1)高齢者進行非小細胞肺癌に対する、Vinorelbine、Gemcitabine 隔週投与後、Gefitinibを逐次投与する臨床第II相試験。

2)IIIB、IV期非小細胞肺癌に対する、VinorelbineとCarboplatinの併用化学療法後Gemcitabineを逐次療法として追加する第II相臨床試験の二つは論文作成中です。

3)局所進行非小細胞肺癌に対する、Docetaxel / Cisplatin導入化学療法後Docetaxel 毎週投与併用下胸部放射線照射の逐次併用療法の検討 は、35例を集積し残り3年の経過観察中です。

4)EGFR遺伝子変異陰性非小細胞肺癌に対する、Erlotinibの有用性予測因子を探索する第II相試験―バイオマーカー研究ーを2010年夏から開始しました。

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36 | 呼吸器内科

2011年5月1日

金沢大学第三内科「呼吸器研究グループ」紹介(3)


金沢大学第三内科「呼吸器研究グループ」紹介(2)より続く。

 

肺疾患グループ(チーフ:早稲田先生)

間質性肺炎の領域は、病型の多様性(IPF,NSIP, COP, EP, DIPなど)のため、それぞれの病態毎の機序や原因の解明がなかなか進まないのが現状です。

抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体に注目し、間質性肺炎の病型との関連を検討した結果、非特異的間質性肺炎(NSIP)との関連が示唆されています。

長年、乾性咳嗽は間質性肺炎の症状の一つだと信じられてきました。

数年来、それぞれの病型の間質性肺炎患者の咳嗽について、その原因疾患を追求してきました(一般常識に対する挑戦的研究)。

その結果、大部分が慢性咳嗽の原因疾患による咳嗽であることが判明しました。

すなわち、間質性肺炎を軽快せしめることは不可能な場合でも、咳嗽を軽快させることは可能となった訳です。


北陸から発信されているIgG4関連疾患にも興味を持ち解析を進めています。

IgG4関連疾患の呼吸器病変として気道病変が必発であること、淡い斑状陰影、濃い斑状陰影、胸膜に接する濃度上昇などの肺陰影、肺門縦隔リンパ節腫脹は他の臓器と同様にステロイド治療によって速やかに改善するが、気管支壁肥厚や小葉中心性粒状影などのいわゆる気道陰影は改善に乏しいこと、などが明らかになりつつあります。


基礎的研究では、高戸先生は肺の線維化におけるキマーゼの役割について研究し、キマーゼが好中球性炎症を惹起することによって、TGFβを介する肺の線維化に関与していることを明らかにしました(A novel chymase inhibitor TY51469 suppresses silica-induced pulmonary fibrosis by preventing neutrophil accumulation in lung tissue. Experimental Lung Research掲載予定)。

さらに犬塚先生は「アンジオテンシン受容体拮抗薬の肺線維化抑制作用におけるACE2及びAng1-7の関与」について精力的に実験し、ARBの肺線維化抑制効果はACEの減少とACE2の増加を介するAng1-7の増加によってもたらされることを明らかにしました(学位論文投稿中)。


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