金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年2月28日

抗リン脂質抗体症候群と厚生労働省難病(特定疾患)認定:APS(4)

抗リン脂質抗体症候群(インデックスページ)クリック! 抗リン脂質抗体症候群の全記事へリンクしています。


抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)は、厚生労働省の難治性疾患克服研究事業(調査研究対象疾患)に指定されています。

ただし、難治性疾患克服研究事業対象疾患には、調査研究対象疾患医療費助成制度対象疾患があり、抗リン脂質抗体症候群は残念ながら医療費助成制度対象疾患には含まれていませんので、医療費補助はありません。

金沢大学血液内科(第三内科)にも、数多くの抗リン脂質抗体症候群の患者さんが通院されています。この疾患は根治するというよりも、血栓症を発症しないようにコントロールする疾患ですので、多くの患者さんにおいて定期的な通院、永続的な加療が必要になります。

是非とも何らかのかたちで、抗リン脂質抗体症候群の患者さんに対しても医療費の助成があって良いのではないかと思っています。


補足(1)
全身性エリテマトーデス(SLE)や特発性血小板減少性紫斑病(ITP)などの自己免疫性疾患の多くが、医療費助成制度対象疾患になっています。抗リン脂質抗体症候群(APS)も、自己免疫性疾患の一つですので、医療費助成制度対象疾患であっても良いと思われます。
患者さんからも、抗リン脂質抗体症候群は医療費の助成がないかどうかのご質問をよくお受けいたしますが、ご期待に答えることができずいつも申し訳なく思っています。


補足(2)医療費助成制度対象疾患は、以下の45疾患です。
当科(金沢大学血液内科・呼吸器内科)での診療機会が特に多い疾患を色字にしました。

01      ベーチェット病  19     悪性関節リウマチ 33     特発性大腿骨頭壊死症
02     多発性硬化症 20     パーキンソン病関連疾患
34     混合性結合組織病
03     重症筋無力症      (1)進行性核上性麻痺 35     原発性免疫不全症候群
04     全身性エリテマトーデス  
 (2)大脳皮質基底核変性症 36     特発性間質性肺炎
05     スモン  (3)パーキンソン病   
37     網膜色素変性症
06     再生不良性貧血 21     アミロイドーシス 38     プリオン病 
07     サルコイドーシス 
22     後縦靱帯骨化症 (1)クロイツフェルト・ヤコブ病
08     筋萎縮性側索硬化症 23     ハンチントン病
(2)ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病
09     強皮症/皮膚筋炎及び多発性筋炎   
24     モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症) (3)致死性家族性不眠症    
10     特発性血小板減少性紫斑病 
25     ウェゲナー肉芽腫症 39     原発性肺高血圧症 
11     結節性動脈周囲炎 
26     特発性拡張型(うっ血型)心筋症 40     神経線維腫症㈵型/神経線維腫症II型
(1)結節性多発動脈炎 27     多系統萎縮症
41     亜急性硬化性全脳炎
(2)顕微鏡的多発血管炎   
(1)線条体黒質変性症 42     バット・キアリ(Budd-Chiari)症候群 
12     潰瘍性大腸炎 (2)オリーブ橋小脳萎縮症 43     特発性慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧型)
13     大動脈炎症候群 (3)シャイ・ドレーガー症候群     44     ライソゾーム病    
14     ビュルガー病(バージャー病) 28     表皮水疱症(接合部型及び栄養障害型)  

(1)ライソゾーム病(ファブリー病を除く)
15     天疱瘡 29     膿疱性乾癬 
(2)ライソゾーム病(ファブリー病)  
16     脊髄小脳変性症   
30     広範脊柱管狭窄症 
45     副腎白質ジストロフィー
17     クローン病 
31     原発性胆汁性肝硬変  
18     難治性肝炎のうち劇症肝炎 
32     重症急性膵炎  

 
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【シリーズ】
先天性血栓性素因アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症  

1)病態 
2)疫学 
3)症状 
4)血液・遺伝子検査  ←遺伝子検査のご依頼はこちらからどうぞ。
5)診断 
6)治療

 

【関連記事】
先天性血栓性素因の診断
出血性素因の診断
血栓症と抗血栓療法のモニタリング
血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)
先天性アンチトロンビン欠損症の治療
DIC(図解シリーズ)

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2009年2月27日

北陸白血病セミナーのご案内


北陸白血病セミナー               

日 時:平成21 年3 月21 日(土) 16:00より  
場 所:金沢都ホテル 5階  『兼六の間』  


開会の挨拶         富山県立中央病院 血液内科 部長  吉田喬先生


特別講演 (I)

座長  福井大学医学部付属病院            血液内科 教授 上田孝典先生

『Dasatinibの当科での治療経験』

演者  兵庫医科大学病院       血液内科 講師 岡田昌也先生


特別講演 (II)

座長  金沢大学大学院医学系研究科細胞移植学 教授  中尾眞二

『Dasatinib - 副作用とマネージメント -』

演者   京都府立医科大学         血液・腫瘍内科学 教授 谷脇 雅史 先生


CML/ALL   Q & A
京都府立医科大学 谷脇雅史先生 
兵庫医科大学 岡田昌也先生


閉会の挨拶          金沢大学大学院医学系研究科 保健学専攻 教授 大竹茂樹先生



主催 ブリストル・マイヤーズ株式会社

 

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2009年2月26日

第8回 癌と骨病変学術講演会のご案内

第8回癌と骨病変学術講演会


日時:平成21年3月27日(金) 18:30〜
場所:金沢都ホテル 5階 加賀の間
金沢市此花町6-10  TEL: 076-261-2111


プログラム

製品紹介:骨粗鬆症治療剤 ボノテオ錠1mg     
開会の辞:金沢大学 整形外科 教授 富田勝郎先生


特別講演1

座長 ふたば乳腺クリニック 院長 谷屋隆雄先生

       「ビスホスホネートの光と影」

金沢大学附属病院 泌尿器科 講師      溝上敦先生

 

特別講演2

座長 金沢大学 核医学診療科 教授 絹谷清剛先生

      「癌骨転移のメカニズムと治療」

大阪大学大学院歯学系研究科
    口腔分子免疫制御学/生化学 教授      米田俊之先生


主催 アステラス製薬株式会社



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抗リン脂質抗体症候群と不妊症/不育症:APS(3)

抗リン脂質抗体症候群は、女性の方の場合、不育症(習慣性流産を含む)を契機に診断されることが多々あります。

念のためですが「不育症」です。「不妊症」ではありませんので、妊娠成立に関しては普通です。抗リン脂質抗体症候群の患者さんから、自分は妊娠しにくいのではないのかとのご質問をお受けることがありますが、そういう訳ではありません。妊娠はしても、流産を含む不育症になりやすいというのが正しい認識になります。

 


不妊症:種々の原因で妊娠が成立しない状態


不育症:妊娠は成立するものの、以下を満たす場合です

1) 早期流産の繰り返し(習慣性流産 spontaneous recurrent abortions、SRA):正確には、妊娠10週未満の原因不明の流産を3回以上繰り返すもの。

2) 妊娠10週以降で、胎児奇形・染色体異常などのない子宮内胎児死亡(IUFD)が1回以上。

3) 子宮内胎児発育遅延(IUGR)や妊娠高血圧症候群(PIH)などのため、妊娠34週未満に胎児の娩出を必要とするもの。

 

患者さんのご判断で、流産を繰り返すということで不妊症治療専門医を受診されることがありますが、実際は不妊症ではなく不育症(習慣性流産)ということがあります。

習慣性流産であれば、抗リン脂質抗体症候群かどうかの診断が不可欠です。その時点で、抗リン脂質抗体症候群に詳しい医師のいる血液内科や膠原病内科での精査が必要になります(私たちの金沢大学血液内科もその一つです)。

なお、不妊症治療により妊娠が成立しても流産を繰り返すということで抗リン脂質抗体症候群が疑われるケースも少なくありません(この場合は、不妊症かつ不育症ということになります)。



原因不明の不育症(習慣性流産)のなかで、相当数は抗リン脂質抗体症候群(APS)によるものではないかと考えられています。



抗リン脂質抗体症候群における不育症は、子宮壁と受精胚をつなぐ絨網膜、あるいは胎盤・臍帯に血栓が生じるために、胎児への酸素・栄養補給が不足することが大きな原因の一つと考えられています。


不育症の原因を精査し、抗リン脂質抗体症候群の関与が疑われれた場合には適切な治療を行うことで高率(習慣性流産の場合には50〜60%、IUGRやIUFDの場合には70〜80%)で生児を得ることができます。
不育症(習慣性流産)だからと言って決してあきらめる必要はありませんので、患者さんに対する適切なアドバイスを提供できるように、医療関係者としても知識を生整理しておくことが重要です。


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【関連記事】
先天性血栓性素因の診断
出血性素因の診断
血栓症と抗血栓療法のモニタリング
血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)
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2009年2月25日

抗リン脂質抗体症候群と血栓症:APS(2)


【血栓症の分類】
抗リン脂質抗体症候群の理解のために(1)

抗リン脂質抗体症候群を理解する前に、血栓症全体像を理解しておく必要があります。まず、血栓症(thrombosis)は、動脈血栓と静脈血栓に大別されます。

1)    動脈血栓

脳梗塞、心筋梗塞が代表的です。その他には、網膜中心(or 分枝)動脈血栓症、閉塞性動脈硬化症に起因する血栓症、腸間膜動脈血栓症、腎動脈血栓症、内頸動脈血栓症などがあります。

2)    静脈血栓

深部静脈血栓症(deep vein thrombosis, DVT)と肺塞栓症(pulmonary embolism, PE)が代表的です。その他には、網膜中心(or 分枝)静脈血栓症、腸間膜静脈血栓症、腎静脈血栓症、脳静脈洞血栓症、門脈血栓症などがあります。



【エコノミークラス症候群】抗リン脂質抗体症候群の理解のために(2)

深部静脈血栓に起因する肺塞栓は致命的になることがあります。エコノミークラス症候群やロングフライト血栓症という名前で、マスコミでも取り上げられることがありますので、一般の方の関心も高まってまいりました。

エコノミークラス症候群の語源は、飛行機のエコノミークラスのような狭いスペースにいますと、深部静脈血栓&肺塞栓を発症して致命症になるというものです。狭いスペースでは、下肢をあまり動かせないために、下肢の筋肉ポンプ(muscle pump)が働かなくなり、下肢に血液がよどみます。

静脈血栓症の形成に関する三つの要因として、ウィルヒョーの3要素(Virchow's triad)(血管の障害、血流のうっ滞、血液性状の変化)が知られていますが、エコノミークラス症候群では、まさに血流のうっ滞が問題になるのです。

先の新潟中越大震災において、車中泊をされた方の中からエコノミークラス症候群を発症して致命症になった方がおられたことが、当時の大きなニュースになりました。これも、下肢をあまり動かせないような狭い場所に長時間留まったことが原因でした。

エコノミークラス症候群(肺塞栓)は、長時間同じ姿勢でいることにより下肢深部静脈に血栓(thrombus)が生じ,この血栓が下大静脈(まれに上肢の深部静脈血栓症がありますが、この場合は上大静脈)から右心房、右心室を経て肺動脈に血栓が詰まる病気です。

肺塞栓症は肺動脈の血栓ですが、血栓症の特徴は動脈ではなく静脈血栓症なのです(肺動脈の動脈という言葉にだまされないようにしましょう)。


【血栓症の危険因子】抗リン脂質抗体症候群の理解のために(3)

血栓が生じる際には何らかの基礎疾患(危険因子)が存在することもあります。
動脈血栓症(脳梗塞、心筋梗塞など)の場合には、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙などが危険因子になります。
静脈血栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓など)の危険因子は以下の通りです。


静脈血栓症の危険因子

1)    脱水・多血症
2)    肥満
3)    妊娠・出産(特に帝王切開出産)
4)    経口避妊薬
5)    下肢骨折・外傷
6)    手術後(特に骨盤内臓・整形外科領域)
7)    下肢麻痺、長期臥床、ロングフライト
8)    悪性腫瘍の存在
9)    心不全、ネフローゼ症候群
10)    深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往
11)    血栓性素因(詳細は下記)


血栓性素因の疾患(括弧内は動静脈の主としてどちらの危険因子であるかを示します)
(関連記事:血栓性素因の血液検査

1.先天性凝固阻止因子欠乏症(関連記事
・アンチトロンビン欠乏症(静)
プロテインC欠乏症(静)
プロテインS欠乏症(静)

2.線溶異常症
プラスミノゲン異常症(静)
高Lp(a)血症(動&静)

3.後天性血栓性素因
抗リン脂質抗体症候群(動&静)(抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント)
高ホモシステイン血症(動&静)


なお、心房細動(atrial fibrillation, AF)(発作性心房細動を含む)は、脳塞栓の重要な危険因子です。血栓が閉塞する部位は脳動脈ですが、血栓ができる原因は心臓内血液滞留ですので、静脈血栓(凝固血栓)の性格を有しています。ですから、心房細動の抗血栓療法は、抗血小板療法(アスピリン)ではなく、抗凝固療法(ワルファリン)が原則です(関連記事:PT-INRとは)(INR検査)。



【抗リン脂質抗体症候群の血栓症】

上記のように動脈血栓症、静脈血栓症では基礎疾患(危険因子)が異なります。
ところがAPSでは、以下のような特徴があります。

1)    動脈にも静脈にも血栓を起こすこと
2)    血管の太さに関係なく血栓を起こすこと
3)    無治療の場合,半年以内に50%,2年以内に80%という高い頻度で血栓を再発すること(ただし、抗リン脂質抗体症候群の病勢、診断の確からしさ、どのリン脂質に対する抗体かなどによりこの数字は相当大きく変動する可能性があります)

抗リン脂質抗体症候群の症例において血栓症を再発させないようにするためには、正しい病態の評価、適切な治療が必要です。

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先天性血栓性素因の診断

出血性素因の診断

血栓症と抗血栓療法のモニタリング

血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)

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2009年2月24日

抗リン脂質抗体症候群とは:APS(1)


抗リン脂質抗体症候群の概念


抗リン脂質抗体症候群は、英語ではantiphospholipid syndromeです。頭文字をとって、しばしばAPSと略称しています。

抗リン脂質抗体症候群は、抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibodies:aPL)という自己抗体が出現することにより血栓傾向となる極めて高頻度にみられる後天性疾患です(参照:先天性血栓性素因)。

この疾患は、管理人が学生時代には習わなかった疾患です。疾患概念としては比較的新しいと言えます。そのため、全ての臨床家にとって周知された疾患と言う訳ではありません。この疾患であるにもかかわらず診断のなされていない、いわゆる隠れAPSの患者さんが多数おられるのではないかと推測されます。
本疾患は、小児から高齢者まで幅広い年齢層で発症します。ただしこの中でも、不育症(習慣性流産)、若年性血栓症の患者さんに遭遇しましたら、真っ先に疑うべき疾患が抗リン脂質抗体症候群です。

本疾患では、以下が特徴的な臨床症状です。
1) 血栓症(thrombosis)を繰り返す(反復性血栓症)。
2) 不育症(pregnancy morbidity)。

不育症の内容
は以下の通りです。
1)    妊娠初期流産を繰り返す(習慣性流産:spontaneous recurrent abortions, SRA)。
2)    妊娠中期以降に母体内で胎児が死亡する(子宮内胎児死亡:intrauteral fetal death, IUFD)。
3)  妊娠中期以降に母体内で胎児の発育が遅れる(子宮内胎児発育遅延:intrauteral growth  retardation, IUGR)。
4)    重症の妊娠中毒症(最近は妊娠高血圧症候群:pregnancy induced hypertension,PIH,とも言います)のため、妊娠34週未満に胎児を娩出せざるを得なくなる。

 


抗リン脂質抗体症候群分類基準(Sydney Criteria)

臨床症状
1.    血栓
(ア)    血栓は動脈,静脈,微小循環血栓を問わず発症部位・臓器も問わない.
(イ)    血栓は画像的または病理学的に診断される.
(ウ)    病理学的には血管壁に炎症を伴わない血栓である.

2.    不育症:以下の妊娠合併症のいずれかを認める
(ア)    妊娠10週以降の胎児奇形を伴わない流産・死産が1回以上
(イ)    重症妊娠高血圧症候群または胎盤機能不全による妊娠34週未満の出産が1回以上
(ウ)    解剖学的,内分泌学的および染色体異常を認めない,原因不明の妊娠10週未満の流産が3回以上

検査成績

1.  ループスアンチコアグラント(LA):国際血栓止血学会診断基準による
2.  抗カルジオリピン抗体(aCL):血清(血漿)中のIgGまたはIgM型aCLが中等度以上陽性(IgG >40 GPL, IgM > 40 MPLまたは健常成人の99パーセンタイル以上を示す)
3.  抗β2-glycoproteinT抗体(aβ2GPT):血清(血漿)中のIgGまたはIgM型aβ2GPTが中等度以上陽性(健常成人の99パーセンタイル以上を示す)

*LA, aCL, aβ2GPTは12週間以上間隔を空けて陽性である必要がある。

 

抗リン脂質抗体症候群と診療科

抗リン脂質抗体症候群(APS)は、自己免疫疾患(膠原病)の一つです。
このため、抗リン脂質抗体症候群はリウマチ膠原病内科で診療される場合や、血液内科(血栓止血内科,血管内科)で診療されることが多いようです(金沢大学第三内科でも血栓止血分野のエキスパートが充実しますので,多くのAPSの患者さんの診療に携わっています)。

また,本疾患は全身臓器の血管で血栓症をきたしますので、多くの診療科と連携をとりあって診療にあたることになります。

1)脳梗塞、TIA:脳神経外科、神経内科
2)網膜中心(or分枝)動脈(or静脈)血栓症:眼科
3)深部静脈血栓症:血管外科
4)心筋梗塞、肺塞栓症、心臓弁膜症:循環器内科
5)手術後の深部静脈血栓症:整形外科、腹部外科、産婦人科
6)小児の血栓症:小児科
7)不育症:産婦人科 
8)網状皮斑、皮膚潰瘍:皮膚科
9)舞踏病、偏頭痛、てんかん、多発性硬化症様症状:精神神経科、神経内科
10)血小板数減少:血液内科
11)Budd-Chiari症候群、腸管膜動脈(or静脈)血栓症、門脈血栓:消化器内科、消化器外科
など

以上のように、ほとんど全ての診療分野で遭遇する可能性がある疾患です。どの専門領域に進んでもぜひ頭の片隅に置いておいてほしい疾患と言うことができます。

(続く)


(補足)医学部学生さんへ
抗リン脂質抗体症候群(APS)は医師国家試験にも出題されます。血栓症、流産のみならず、「網状皮斑」もキーワードになるようです。ループスアンチコアグラント(LA)や抗カルジオリピン抗体と言った検査も知っていませんと、正答できないと思います。

 

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【関連記事】

先天性血栓性素因の診断

出血性素因の診断

血栓症と抗血栓療法のモニタリング

血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)

先天性アンチトロンビン欠損症の治療

 

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2009年2月23日

移植後微少残存病変(MRD):造血幹細胞移植後の再発(4)


【心のケア・緩和ケア】

 患者は、初めて病気を告知されたときよりも、造血幹細胞移植後の再発時の方がより強い心理的ストレスを受けます。

 ですから、患者に再発を伝える際には、家族やパートナーの同席を求めたり、専門家に心のケアを依頼したり、段階的に伝えるなどの配慮が望ましいのです。

 長期生存が期待できない場合や患者の希望によっては、緩和ケアも重要な選択肢の1つになります。

 

【自家造血幹細胞移植後再発】

 悪性リンパ腫や多発性骨髄腫が主な対象です。

 同種移植や免疫療法(抗体療法・サイトカイン療法・養子免疫療法)、分子標的療法などが考慮されます。ただし、今のところエビデンスは十分に蓄積されていません。


【造血幹細胞移植後のモニタリング】

 移植後微少残存病変(minimal residual disease: MRD)のモニタリングは、再発の早期発見に有用です。

 しかし、どのくらいの頻度で検査すべきかについては十分検討されていませんでした。

 最近Dominiettoは、AML・ALL 80例を対象にWT-1・VDJ・TCRといった移植後微少残存病変(MRD)マーカーを毎月フォローし、分子再発の時点でドナーリンパ球輸注(DLI)を実施しました。これにより、非再発例に匹敵する良好な予後が得られたと報告されています。再発のリスクが高い患者については、このような頻回の移植後微少残存病変(MRD)検査も考慮すべきかもしれあせん。

 国内での前向き試験の実施が望まれるところです。



【造血幹細胞移植後の再発】

1)治療の種類  

2)免疫療法&白血病再発

3)免疫(抑制)療法

4)移植後微少残存病変(MRD)


【シリーズ造血幹細胞移植前処置としてのATG

1)背景

2)作用機序

3)GVHD予防 

4)晩期効果 

5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法 

6)臍帯血移植&GVHD


【関連記事】NETセミナー

汎血球減少のマネジメント:特に骨髄不全について

急性骨髄性白血病の治療

悪性リンパ腫の診断

造血幹細胞移植

移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断

ドナーリンパ球の威力 −ドナーリンパ球輸注(DLI)−

貧血患者へのアプローチ

輸血後鉄過剰症と鉄キレート療法

血液内科に関する研修医からのQ&A

 

【シリーズ溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)


【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連

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2009年2月22日

金沢大学血液内科・呼吸器内科(検索順位)5回目集計

金沢大学 血液内科・呼吸器内科(第三内科)と致しましては、「血液内科」「呼吸器内科」「研修医募集」などの主要キーワード検索でどのあたりに掲載されるか気になるところです。

定期的に行っています集計です。今回は第5回目になります。

 

<Google検索>

「血液内科」での検索 5位/206,000件(6位←11位←14位←18位)

「血液内科 研修医募集」での検索 1位/30,200件3位1位←14位←11位


「呼吸器内科」での検索5位/462,000 件11位12位←12位←11位

「呼吸器内科 研修医募集」での検索5/46,800 件5位3位←6位←7位

 

<Yahoo検索>(2回目の集計)

「血液内科」での検索 8位/2,620,000件10位

「呼吸器内科」での検索38位/20,300,000 件31位

 

前回の集計と比較しますと、Google「呼吸器内科」検索で、大きくジャンプしているのが注目されます。

多くの方にご支援いただいていますことを、この場をかりて厚く御礼申しあげます。

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 10:27 | その他 | コメント(0) | トラックバック(0)

免疫(抑制)療法:造血幹細胞移植後の再発(3)

 

【造血幹細胞移植後の再発時の治療】

1.    免疫抑制療法中止

 慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期再発は、免疫抑制療法の中止のみで約50%の奏功率が期待できますが、他の血液腫瘍への効果は不明です。
なお、活動性移植片対宿主病(GVHD)を有しながら再発した場合には、免疫抑制療法をすぐに中止できないことも多いのが現状です。


2.    化学療法・放射線治療


 免疫療法の有用性を最大限に引き出すため、免疫療法時に完全寛解を達成していることが望しいです。

化学療法:
急性白血病や慢性骨髄性白血病(CML)急性転化再発は、病勢が急速に進行しやすいため、早急に化学療法を行います。

gemtuzumab ozogamicin (GO)・dasatinib:
CD33陽性-急性骨髄性白血病(AML)・Ph陽性-急性リンパ性白血病(ALL)の場合、髄外病変に対する効果を期待して、gemtuzumab ozogamicin (GO)・dasatinibの適応を考慮します。初回移植後の髄外再発率(10-20%)を減らすために、髄外病変の既往など髄外再発の危険性が高い場合は、初回移植の前処置に組み入れるべきかもしれません。

放射線治療:
孤立性髄外再発には放射線治療が推奨されます。反応性は一般に良好ですが、全身性再発が続発しやすいですので、化学療法の併用を考慮します。


3.    免疫療法
 ドナーリンパ球輸注(DLI)再移植のどちらを第一選択にすべきかについては、エビデンスに乏しいです。ただし、化学療法直後にG-CSFで動員して採取した末梢血白血球を輸注するドナーリンパ球輸注と、緩和的前処置後再移植に本質的な差は少ないと考えられます。

ドナーリンパ球輸注・再移植の予後良好因子は、以下のように共通することが多いです。

1)    両治療共通:初回移植から再発までの期間4〜12か月以上
2)    両治療共通:免疫療法時完全寛解・患者年齢20歳未満
3)    ドナーリンパ球輸注のみ:再発時ドナー型キメリズム50%超

ドナーリンパ球輸注の予後良好因子を持つ急性骨髄性白血病(AML)には、ドナーリンパ球輸注が妥当と思われます。

 欧州血液骨髄移植グループ(European Blood Marrow Transplantation Group: EBMT)の報告によりますと、ドナーリンパ球輸注時寛解または予後良好染色体の場合、2年生存率は56%と良好であると報告されています(下図)。

 

再発図

 


緩和的前処置を用いれば、骨髄破壊的前処置移植で懸念される高い治療関連死亡率は改善しますが、再発率の増加により相殺される可能性が高いです。

 AML再発の場合、HCT-CIが再移植の予後に影響する可能性があります。予後因子からドナーリンパ球輸注の効果が期待できず、HCT-CIが2点以下の急性骨髄性白血病(AML)再発に関しては、GOを前処置に組み入れた緩和的前処置再移植を第一選択とすべきかもしれません。あるいは、DLIとGOの組み合わせも有望と思われます。なお、初回移植と異なるドナーを選んでも成績に差はみられないという報告があります。

 逆に、臍帯血移植など初回移植のドナーから再移植ができない場合、別のドナーを選ぶことは可能と考えられます。

 初回移植後4〜5か月以内の急性白血病再発には、DLI・再移植単独の効果はほとんど期待できません。また、再発時期を問わず、ALL再発にDLIはほぼ無効です。

DLI・再移植の効果が期待できない場合、サイトカイン療法や養子免疫療法・抗体療法など、より実験的な治療を検討すべきかもしれません。

 

(続く)

 

 
【造血幹細胞移植後の再発】

1)治療の種類  

2)免疫療法&白血病再発

3)免疫(抑制)療法

4)移植後微少残存病変(MRD)

 

【シリーズ造血幹細胞移植前処置としてのATG

1)背景

2)作用機序

3)GVHD予防 

4)晩期効果 

5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法 

6)臍帯血移植&GVHD


【関連記事】NETセミナー

汎血球減少のマネジメント:特に骨髄不全について

急性骨髄性白血病の治療

悪性リンパ腫の診断

造血幹細胞移植

移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断

ドナーリンパ球の威力 −ドナーリンパ球輸注(DLI)−

貧血患者へのアプローチ

輸血後鉄過剰症と鉄キレート療法

血液内科に関する研修医からのQ&A

 

【シリーズ溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)


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免疫療法&白血病再発:造血幹細胞移植後の再発(2)


【再発後治療の評価】


造血幹細胞移植後の再発症例に対しての治療成績を評価する場合には、以下の点を念頭におく必要があります。

1)初回移植治療以上の成績は期待できないこと。
2)免疫療法を行わない場合の治療成績が極めて不良であること。

初回移植治療後の5年生存率
は、以下の通りです(日本造血細胞移植学会平成19年度全国調査報告書より)。

・急性骨髄性白血病(AML):45%

・急性リンパ性白血病(ALL):38%
・慢性骨髄性白血病(CML):57%
・悪性リンパ腫(ML):53%
・骨髄異形成症候群(MDS):47%
・多発性骨髄腫(MM):44%

ですから、再発後治療の成績はこれが上限となります。

免疫療法を行わない場合、移植後急性白血病再発の5年生存率は5%程度、長期生存率はほぼ0%です。ただし。。。。

 


DLI奏効率

 

・ 一方、CML慢性期再発は、DLIで初回移植と同等の治療成績が期待できます(上図)。ただし、imatinibにより、移植適応のCMLは激減しているのが現状です。
・ 低悪性度非ホジキンリンパ腫も、CML慢性期に匹敵する成績が報告されています。

これらを除きますと、免疫療法の奏功率は10〜30%程度、長期生存率は10〜20%です。

 

 

【移植後の白血病再発:特徴】

移植後白血病再発の特徴は3つあります。

1)    再発時の白血病細胞は増殖能が高いため、一定のGVL効果がみられても、それを上回る速度で進行するために無効に終わることが多いです。

2)    移植後再発の危険因子が、移植時非寛解(抗がん剤治療を繰り返している可能性が高い)・緩和的前処置(骨髄破壊的前処置が困難であった)・高齢であることが示すように、再発時の臓器予備能が低く、再発治療後重篤な臓器障害が起こりやすいです。

3)    再発後治療により骨髄寛解が得られても、髄外再発しやすいという特徴があります。ドナーリンパ球輸注(donor lymphocyte infusion: DLI)後髄外再発は骨髄再発の約2倍起こり、髄外再発に同種抗腫瘍 (graft-versus-malignancy: GVM)効果は期待できないのです。


(続く)



【造血幹細胞移植後の再発】

1)治療の種類  

2)免疫療法&白血病再発

3)免疫(抑制)療法

4)移植後微少残存病変(MRD)



【シリーズ
造血幹細胞移植前処置としてのATG

1)背景

2)作用機序

3)GVHD予防 

4)晩期効果 

5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法 

6)臍帯血移植&GVHD


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【シリーズ溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)


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2009年2月21日

金沢大学医学部:冬学期呼吸器内科試験(第三回)

先日の冬学期呼吸器内科試験の試験問題と解答をブログ記事としてアップいたします。



1.特発性間質性肺炎で認められる特徴的な所見を三つ選択せよ
1)呼気終末のfine cracklesが特徴である
2)残気率が上昇する
3)バチ状指がみられる
4)動脈血ガス分析上、次第にA-aDO2が大きくなる
5)器質化肺炎(OP)はステロイド反応が良好である

答え 3,4,5

2.特発性間質性肺炎の診断・モニタリングにおける血液学的指標を三つ選択せよ
1)KL-6
2)LDH
3)CRP
4)SP-C
5)SP-D

答え 1,2,5

3.気管支肺胞洗浄(BAL)について正しいものを三つ選択せよ
1)BALは滅菌蒸留水で行う
2)BAL液中リンパ球は,ほとんどがT細胞である
3)健常者のBAL液中では,マクロファージが最も多い
4)BALは治療にも用いられる
5)BAL液所見は,喫煙により影響されない

答え 2,3,4

4.間質性肺炎の診断において,重要な問診項目を三つ選択せよ
1)喫煙
2)飲酒
3)毛布
4)ペット
5)住宅

答え 1,4,5

5.自己免疫疾患関連間質性肺炎のスクリ−ニング検査として重要なものを三つ選択せよ
1)抗核抗体
2)リウマチ因子
3)抗Jo-1抗体
4)PR3-ANCA
5)抗Scl-70抗体

答え 1,2,3

6. 咳嗽に関して正しいものを三つ選びなさい。

(1) 発症後3週間以内の咳を急性咳嗽と定義する。
(2) 発症後3週間以上持続する咳を慢性咳嗽と定義する。
(3) 慢性咳嗽の原因は、非感染性疾患より感染性疾患によるものが多い。
(4) 湿性咳嗽の診断と治療の標的は気道の過分泌である。
(5) 乾性咳嗽の発症機序には、気道の咳感受性亢進によって咳嗽が発症する機序と、気管支平滑筋の収縮がトリガーとなって咳嗽が発症する機序がある。

解答:1,4,5

7.咳嗽の診断における検査方法で正しいものを三つ選びなさい。

(1) 感染性疾患では、喀痰グラム染色や抗原検査が病原菌を同定するための迅速法として有用である。
(2) 気道可逆性試験では、ヒスタミン吸入前と吸入15〜30分後にFEV1を測定する。
(3) 好酸球性気道炎症の証明には、気管支鏡を用いた気管支粘膜生検やBAL(気管支肺胞洗浄)が第一選択の検査として行われる。
(4) 誘発喀痰検査では、高張食塩水を吸入する。
(5) カプサイシン咳感受性には性差があり、女性の方が男性よりも亢進している。

解答:1,4,5

8.咳喘息に関して正しいものを二つ選びなさい。
(1) 気管支拡張薬が有効である。 
(2) 気道過敏性は亢進していることが多い。
(3) 吸入ステロイドを使用しない場合、成人例の90%が喘息に移行する。
(4) 誘発喀痰検査を行うと、好中球の増加が特徴的である。
(5) 吸入ステロイド薬の早期導入により、典型的喘息への移行を防止できる可能性がある。

解答:1,5

9. アトピー咳嗽に関して正しいものを三つ選びなさい。
(1) 喉頭や気管の掻痒感(イガイガ感)を伴う乾性咳嗽を唯一の症状とする。 
(2) 女性、特に中年女性の多い。 
(3) 好酸球性気道炎症部位は、主に中枢気道が主体である。
(4) カプサイシン咳感受性試験は正常である。
(5) ヒスタミンH2受容体拮抗薬が有効である。

解答:1,2,3

10. 副鼻腔気管支症候群(SBS)に関して正しいものを三つ選びなさい。

(1) 気道可逆性は陽性である。 
(2) 慢性・反復性の好中球性の気道炎症を上気道と下気道に合併した病態である。
(3) 去痰薬や14、15員環マクロライド系抗菌薬が有効である。
(4) 血清IgA高値、寒冷凝集素価上昇を認めることが多い。
(5) 重症例には吸入ステロイド薬が有効である。

解答:2,3,4

11.閉塞型睡眠時無呼吸症候群について間違っているものを2つ選べ
1:中年以降の男性に多い疾患である
2:無呼吸とは10秒以上の気流の停止をいう
3:睡眠中に1時間あたり10回以上の無呼吸が認められるものをいう
4:以前には認められなかった現代病のひとつである
5:通常激しいいびきを認める

解答: 3、4

12.閉塞型睡眠時無呼吸症候群について正しいものを2つ(三つの誤り)選べ

1:日本人ではほとんどがBMI 30以上である
2:メタボリックシンドロームを合併することが多い
3:自分のいびきのために夜間の不眠を訴える患者が多い
4:うつ病と誤診されることもある
5:夜間頻尿、早朝の頭痛、日中の倦怠感、集中力の欠如などの症状がある

正解  2、4、5(設問の誤りのため、左記のうちの二つで正解とする。)

13.閉塞型睡眠時無呼吸症候群について間違っているものを2つ選べ

1:睡眠時無呼吸はNREM睡眠に出やすい
2:確定診断は終夜睡眠ポリグラフ検査である
3:末端肥大症が原因になることがある
4:扁桃肥大が原因になることがある
5:甲状腺機能亢進症が原因になることがある

正解  1、5

14.閉塞型睡眠時無呼吸症候群について正しいものを3つ選べ
1:治療抵抗性高血圧の原因疾患のことが多い
2:交通事故との関連は少ない
3:死亡することは少ない
4:交感神経活動は密接な関連が認められている
5:子供にもある

正解  1、4、5

15.過換気症候群について正しいものを2つ選べ
1:酸素吸入は禁忌である
2:テタニー様硬直性痙攣が特異的である
3:30歳以上の女性に多い
4:器質的疾患を除外することが重要である
5:紙袋再呼吸法が有効である              

正解  4、5

16.タバコについて正しいものを3つ選べ
1.タバコの煙は蒸気相と粒子相からなる。
2.タバコの煙には4,000種類以上の化学物質が含まれる。
3.タバコの煙には60種類以上の発癌物質が含まれる。
4.主流煙(喫煙者が吸い込む煙)と副流煙(タバコの点火部分から立ち上がる煙)を比べると、人体に対する有害物質は、一般に前者に多く含まれる。
5.タバコは基本的に嗜好品であり、喫煙は古来の伝統文化であるため、常習喫煙者をニコチン依存症とみなすのは医学的に適切ではない。

解答:1,2,3

17.喫煙率について正しいものを一つ選べ
1.2005年の統計では、日本の喫煙率は、男女ともに若い世代(20歳代〜40歳代)の方が、高齢者(60歳代以上)より高い。
2.2005年の統計では、男女とも喫煙率は、10年前に比べると、すべての年代で減少傾向にある。
3.2005年の統計では、男性の喫煙率は、年齢別では20歳代で最も高く、60%を越えている。
4.2005年の統計では、女性の喫煙率は、年齢別では20歳代で最も高く、30%を越えている。
5.欧米の先進国に比べ、日本では女性の喫煙率が高いことが特徴的である。

解答:1

18.タバコによる健康被害について誤っているものを3つ選べ
1.1日の喫煙本数×喫煙年数が200未満(喫煙指数200未満)であれば、健康被害のリスクは低く、許容範囲内の喫煙量である。
2.低タールのタバコは、高タールのタバコより安全性が高いので、タバコ関連疾患の家族歴のある喫煙者に勧められる。
3.喫煙により急性リンパ性白血病の発症リスクが高まる。
4.喫煙者は非喫煙者に比べ周術期に合併症を併発するリスクが高く、手術1か月以上前からの禁煙が勧められる。
5.受動喫煙により、小児喘息の発症リスクが高まる。

解答:1,2,3

19.禁煙が治療法の一つとなる呼吸器疾患を一つ選べ。
1.肺結核
2.自然気胸
3.気管支喘息
4.肺好酸球性肉芽腫症(肺ランゲルハンス組織球症)
5.過敏性肺臓炎

解答:4

20:禁煙について誤っているものを一つ選べ。
1. 医療従事者は、医療機関を受診するあらゆる常習喫煙者に対して、タバコによる健康被害の合併の有無に関わらず、禁煙を勧めるべきである。
2. 禁煙の治療は、主に行動療法と薬物療法からなる。
3. 禁煙の治療に用いる薬物療法は、ニコチン製剤と非ニコチン製剤の2種類に大別される。
4. 禁煙の治療に用いる薬物療法は、喫煙習慣に伴う生活習慣病に対する治療薬といえるので、原則的に長期間(通常6ヶ月以上)継続する。
5. 禁煙の治療は保険診療で行うことができる。

解答:4


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2009年2月20日

治療の種類:造血幹細胞移植後の再発(1)


【造血幹細胞移植後の再発と対応】

移植後再発


同種造血幹細胞移植は同種抗腫瘍 (graft-versus-malignancy: GVM)効果を期待して行われますが、一定の割合で再発し、今のところ再発を防ぐ有効な方法はありません。しかも、過去20年間再発死亡率は減っていないのです(上図)。

したがって、血幹細胞移植後の再発対策は再発後治療が中心となります。


再発後治療の種類

1    免疫療法

  1.1    免疫抑制療法中止

  1.2    ドナーリンパ球輸注(donor lymphocyte infusion: DLI)

  1.3    再移植

  1.4    サイトカイン療法

  1.5    養子免疫療法 

  1.6    抗体療法

2    化学療法・放射線治療

3    緩和ケア

 


再発治療は、上記の表のごとく、(1)免疫療法、(2)化学療法・放射線治療、(3)緩和ケアに大別されます。これらを組み合わせて治療することが多いのです。

長期生存を期待するには免疫療法は不可欠ですが、ランダム化試験で確認されたエビデンスはないのです。


【造血幹細胞移植後の再発】

1)治療の種類  

2)免疫療法&白血病再発

3)免疫(抑制)療法

4)移植後微少残存病変(MRD)

 

【シリーズ造血幹細胞移植前処置としてのATG

1)背景

2)作用機序

3)GVHD予防 

4)晩期効果 

5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法 

6)臍帯血移植&GVHD


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急性骨髄性白血病の治療

悪性リンパ腫の診断

造血幹細胞移植

移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断

ドナーリンパ球の威力 −ドナーリンパ球輸注(DLI)−

貧血患者へのアプローチ

輸血後鉄過剰症と鉄キレート療法

血液内科に関する研修医からのQ&A

 

【シリーズ溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)


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2009年2月19日

溶血性貧血(PNH、AIHA他):インデックスページ

溶血性貧血をシリーズでお届けしてまいりましたが、これで完結いたしましたので、インデックスページを作成しておきたいと思います。


【溶血性貧血】

1)赤血球寿命

2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)

3)溶血性貧血の病型分類

4)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断

5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断

6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療

7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療

8)溶血性貧血の治療(海外との比較)




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2009年2月18日

溶血性貧血の治療(海外との比較):溶血性貧血(8)

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療 :溶血性貧血(7)からの続きです。

 

【溶血性貧血の治療:海外と日本の比較 】

温式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)に対するステロイドの初期投与量は、国内ではプレドニゾロン換算で0.5-1.0 mg/kg/日程度ですが、海外では1.0-1.5 mg/kg/日または40 mg/m2と国内より若干多い傾向にあります。

また、高用量ステロイド療法も試みられ、一定の成果が報告されています。

海外におけるステロイド減量開始の目安はHb 10 g/dLです。

冷式抗体によるAIHAの治療は保存的治療が中心であり、国内外で違いはありません。


発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)に関しては、欧米ではエクリツマブが使用可能です。

また、海外では発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)に血栓症(thrombosis)を伴うことが多いため、血栓症予防・治療対策が重要視されています。

そのほか、海外では、溶血性貧血に伴う葉酸欠乏を防ぐため、葉酸の補充を勧めることが多いです。


 


【溶血性貧血】

1)赤血球寿命

2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)

3)溶血性貧血の病型分類

4)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断

5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断

6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療

7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療

8)溶血性貧血の治療(海外との比較)




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発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療 :溶血性貧血(7)

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療 :溶血性貧血(6)からの続きです。

 

 

【発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療】

厚生労働省のガイドラインを参考に治療を計画します。溶血症状に乏しく造血不全や血栓症がない場合、通常は無治療観察でよいです。

1.溶血発作の治療

(1) 輸血:Hb 9 g/dL以上を目標に赤血球輸血を実施します。貧血の改善による全身状態の回復に加え、PNHタイプ赤血球造血が抑制され、溶血の軽減も期待できます。

なお、PNHに対する輸血には、血漿に含まれる補体や免疫グロブリンを除去するため、長年洗浄赤血球が用いられてきました。しかし、通常の赤血球濃厚液中に含まれる血漿成分はごく微量であり、実際に溶血を来す例はほとんどないことから、輸血は赤血球濃厚液でよいです。

(2) 補液・ハプトグロビン投与:血中遊離ヘモグロビン排泄・代謝促進と腎不全予防を企図して実施します。

(3) 誘因除去:誘因疾患(感染症が契機になることが多いです)を治療します。


2.溶血発作の予防

(1) 誘因回避:ビタミンCを大量に摂取しないようにします。感染症罹患を避けることは難しいですが、発症後は速やかに治療を開始するように指導しておくことも重要です(あらかじめ抗菌薬を持参させる、医療機関に早めに受診するなど)。
 
(2) 溶血治療:ステロイドや蛋白同化ホルモンが用いられることが多いですが、劇的な効果がみられることは少ないです。効果と毒性を考慮した上で、適応を慎重に判断します。


3.血栓予防と治療

欧米に比べ日本は血栓症の合併症は比較的少ないのですが、産褥期や外科手術を契機に発症することがあり、注意が必要です。

女性は経口避妊薬の使用を避けるべきと考えられます(経口避妊薬には血栓症の副作用が報告されているためです)。

血栓症発症時には、一般の血栓症治療と同様に、ヘパリン類治療や、必要があれば血栓溶解療法(線溶療法)を考慮します。ただし、線溶療法には脳出血などの致命的な出血を含めて副作用の問題がありますので、その適応に関しては慎重に判断する必要があります。

急性期にはヘパリン類主体の治療を行いますが、症状が改善したのちの慢性期にはワルファリン(商品名:ワーファリン)治療を行うのが一般的です。

重篤な血栓症を繰り返す症例には、骨髄移植が考慮されることもあります。


4.造血不全の治療

再生不良性貧血の治療方針に準拠して行います。

輸血のほか、シクロスポリンや抗胸腺グロブリン、造血因子、骨髄移植などの適応が考慮されます。


5.妊娠

妊娠により、血栓傾向、貧血・血小板減少の悪化が予想されますので、妊娠は推奨されません。
 


【発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)治療のポイント】


最近、補体による溶血反応抑制を目的として、C5に対するヒト化単クローン性抗体エクリツマブ(eculizumab)が開発されました。

第3相試験では、輸血依存状態のPNH患者97名にエクリツマブが投与され、患者の87%に奏効し、患者の半数が輸血不要となりました。国内での審査・承認が待たれるところです。
 


 


【溶血性貧血】

1)赤血球寿命

2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)

3)溶血性貧血の病型分類

4)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断

5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断

6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療

7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療

8)溶血性貧血の治療(海外との比較)




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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:34 | 溶血性貧血 | コメント(0) | トラックバック(0)

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療 :溶血性貧血(6)

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断 :溶血性貧血(5)からの続きです。

 

【自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療】

厚生労働省研究班の治療ガイドラインを参考に治療を計画します。温式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の第一選択治療はステロイドです。貧血が軽い場合は経過観察を続けてもよいのですが、最終的には治療が必要になることが多いです。



1.温式抗体によるAIHAの治療

1) 初期治療(寛解導入療法)
推奨用法・用量は、プレドニゾロン換算で1.0 mg/kg/日(患者の状態・年齢・合併症により0.5 mg/kg/日まで適宜減量)、連日経口4週(反応性をみて2-6週に適宜調整)。
患者の約40%は治療開始4週までに血液学的寛解となります。その後1か月かけて0.5 mg/kg/日まで漸減します。

その後2週で5 mg(5 mg製剤1錠)を目安に漸減(急性型や直接クームズ試験が早期に陰性化する場合は早めてもよい)し、10-15 mg/日の初期維持量とします。

減量中に悪化した場合(治療例の約5%)は、0.5 mg/kg/日に戻します。
 
2) 維持療法
網赤血球低下とクームズ試験陰性化を目安に、5 mg/日まで減量します。そのまま維持するか、2-4週間隔で漸減を試みます。漸減中に悪化した場合の増量規定はないのですが、2段階前の量に戻すことが多いと思います。
 
3) 2次治療
ステロイド不応またはプレドニゾロン換算で15 mg/日未満に減量できない、副作用・合併症のためステロイド継続が困難、寛解・悪化を繰り返すなどの場合、ステロイド以外の治療を考慮します(ただし保険適応は認められていません)。
2次治療には、免疫抑制薬(イムラン・エンドキサンなど)や摘脾術、輸血・血漿交換などがあります。
 
4) 治療抵抗例・再発例への治療
これまで、悪性リンパ腫に準じた多剤併用化学療法や大量シクロホスファミド療法、免疫グロブリン製剤、ダナゾール、シクロスポリン、胸腺摘出術、ビンカアルカロイド、ヒト化抗CD20モノクローナル抗体(リツキシマブ)、ヒト化抗CD52モノクローナル抗体(アレンツツマブ)などの有用性が報告されています。
 

2.冷式抗体によるAIHAの治療


寒冷凝集素症
発作性寒冷ヘモグロビン尿症に明確な治療ガイドラインはありません。

軽症の場合、寒冷暴露の予防や保温など生活習慣の工夫のみで良好な日常生活がおくれることも多いです。高度の溶血には通常ステロイド治療が行われますが、十分な効果が得られることは少ないです。

悪性リンパ腫に伴う続発性の場合は、現疾患の治療による改善が期待できます。

その他、アルキル化薬、リツキシマブ療法などが試みられています。
 



【自己免疫性溶血性貧血(AIHA)治療のポイント】


プレドニゾロン換算で0.5 mg/kg/日以上使用する場合には、入院治療が望まれます(特に高齢者や合併症を有する例)。

ただし、十分な臨床経験のある血液専門医であれば外来治療も可能だと思います。血液内科病棟は、血液悪性腫瘍疾患・造血不全患者で大抵満床ですので。。。
当科もそのような状況でございます。

血液内科と言いますと、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など造血器悪性腫瘍のイメージが強いかも知れませんが(間違っている訳ではありませんが)、溶血性貧血、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、膠原病、血栓止血疾患のように、良性の血液疾患も多数扱っているのです。

血液内科という標榜ではなく、血液免疫内科と標榜している総合病院も多いです。


 


【溶血性貧血】

1)赤血球寿命

2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)

3)溶血性貧血の病型分類

4)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断

5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断

6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療

7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療

8)溶血性貧血の治療(海外との比較)




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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:33 | 溶血性貧血 | コメント(0) | トラックバック(0)

2009年2月17日

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断 :溶血性貧血(5)

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断 :溶血性貧血(4)からの続きです。

 

【先天性溶血性貧血】

先天性溶血性貧血の中で最も多いのは球状赤血球症です。赤血球形態や家族歴、胆石・ 脾腫の存在などで診断します。

小球性の溶血性貧血がみられた場合には、サラセミアを第一に疑います。

サラセミアを除きますと溶血性貧血は通常正球性貧血になりますが、網赤血球の著増により軽度の大球性貧血を呈することがありますので注意が必要です。

大球性貧血に溶血性貧血がみられれば、巨赤芽球性貧血(ビタミンB12・葉酸欠乏)や骨髄異形成症候群(MDS)の除外が必要になります。

 


【発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)】

PNHの診断は、以下の診断基準を用います。下記のうち、フローサイトメトリー法でPNHタイプ血球を検出することが特に重要です。


発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断基準(平成16年厚生労働省研究班)

1. 臨床所見として、貧血、黄疸のほかヘモグロビン尿(淡赤色尿から暗褐色尿)を認める。ときに静脈血栓、出血傾向、易感染性を認める。先行発症はないが、青壮年を中心に広い年齢層で発症する。

2. 以下の検査所見がしばしばみられる。
1) 貧血および白血球、血小板の減少
2) 血清間接ビリルビン値上昇、LDH上昇、ハプトグロビン値低下
3) 尿上清のヘモグロビン陽性、尿沈渣のヘモジデリン陽性
4) 好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコア低下、赤血球アセチルコリンエステラーゼ 低下
5) 骨髄赤芽球増加(骨髄は過形成が多いが低形成もある)
6) Ham(酸性化血清溶血)試験陽性または砂糖水試験陽性

3. 以下の検査所見によって診断を確実なものとする。
1) グリコシルホスファチヂルイノシトール(GPI)アンカー型膜蛋白の欠損血球(PNHタイプ血球)の検出と定量
2) 骨髄穿刺、骨髄生検、染色体検査等による他の骨髄不全疾患の判定

4. 以下によって病型分類を行う。
1) 臨床的PNH(溶血所見がみられる)
・古典的PNH
・骨髄不全型PNH
2) PNHタイプ血球陽性の骨髄不全症(溶血所見は明らかでない)
・PNHタイプ血球陽性の再生不良性貧血
・PNHタイプ血球陽性の骨髄異形成症候群
・PNHタイプ血球陽性の骨髄線維症、など

5. 参考
1) PNHは溶血性貧血と骨髄不全症の側面を併せ持つ造血幹細胞異常による疾患である。
2) PNHタイプ血球の検出と定量には、抗CD55および抗CD59モノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリー法を用いる。
3) PNHタイプ赤血球が1-10%であれば、溶血所見を認めることが多い。PNHタイプ好中球比率はしばしばPNHタイプ赤血球のそれより高値を示す。
4) 溶血所見として、網赤血球増加、血清LDH上昇、間接ビリルビン値上昇、血清ハプトグロビン値低下が参考になる。
5) 骨髄不全型PNHは、再生不良性貧血-PNH症候群によって代表される。 




自己免疫性溶血性貧血(AIHA)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)先天性溶血性貧血が否定されれば、稀な溶血性貧血ということになります。ただし、先天性溶血性貧血を完全に否定することは難しいです。

最終的に専門医療機関での遺伝子診断が必要になることもあります。その際は、患者の有益性も含め十分に吟味する必要があります。



【その他の溶血性貧血】

 心臓弁膜疾患(特に人工弁置換術後)や大動脈狭窄症、微小血管障害(血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、癌の全身転移、血管炎症候群、悪性高血圧、行軍ヘモグロビン尿症など)がありますと、機械的刺激により赤血球が壊れ、血管内溶血を来すことがあります(赤血球破砕症候群)。

末梢血塗抹標本上破砕赤血球の増加がないか調べるとともに、必要に応じ全身検索を進めることになります。
 


【溶血性貧血】

1)赤血球寿命

2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)

3)溶血性貧血の病型分類

4)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断

5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断

6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療

7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療

8)溶血性貧血の治療(海外との比較)




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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 19:40 | 溶血性貧血 | コメント(0) | トラックバック(0)

血液内科のGoogle検索で1位(金沢大学 血液内科・呼吸器内科)

グーグル1位

 

 金沢大学 血液内科・呼吸器内科といたしましては、「血液内科」や「呼吸器内科」と言った主要キーワードでの検索で、上位に検索されてくるとやはり嬉しいものです。

さて、日曜日に、記念すべきイベント(?)が発生いたしました。

Googleで、「血液内科」の入力で検索したところ、1ページ目の1位(文字通りトップです)に私たちのホームページが検索されてきました。証拠写真を今回の記事に画像で掲載しておきたいと思います。

検索順位は時間単位で変動しており、本日は1位ではなく6位前後なのですが、一時的とは言えども1位で検索されたというのは、まさに記念すべきイベントではないかと思っています。

将来的には、恒常的にベスト3位以内くらいで検索されるようになることを期待しているところです。

今後とも、多くの方にご支援いただけるHP&ブログを目指していきたいと思いますので、どうかよろしくご指導、ご鞭撻のほどお願い申しあげます。



【リンク】

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:20 | その他 | コメント(0) | トラックバック(0)

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断 :溶血性貧血(4)

溶血性貧血の病型分類 :溶血性貧血(3)からの続きです。



【自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断】


まず行う検査

1)    クームズ試験

2)    赤血球形態観察

3)    (必要に応じて)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)タイプ血球検査:フローサイトメトリー法を用いたGPIアンカー型膜蛋白欠損血球の検出

直接クームズ試験陽性ですと、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の可能性が高いですので、さらに以下の表のごとく確定診断へと進めます。




自己免疫性溶血性貧血(AIHA)診断基準
(平成16年厚生労働省研究班)

1. 溶血性貧血の診断基準を満たす。

2. 広スペクトル抗血清による直接クームズ試験が陽性である。
 
3. 同種免疫性溶血性貧血(不適合輸血、新生児溶血性疾患)および薬剤起因性免疫性溶血性貧血を除外する。

4. 1-3によって診断するが、さらに抗赤血球自己抗体の反応至適温度によって、温式(37℃)の1)と、冷式(4℃)の2)および3)に区分する。

1) 温式自己免疫性溶血性貧血
臨床像は症例差が大きい。特異抗血清による直接クームズ試験でIgGのみ、またはIgGと補体成分が検出されるのが原則であるが、抗補体または抗スペクトル抗血清でのみ陽性のこともある。診断は2)、3)の除外によってもよい。

2) 寒冷凝集素症
血清中に寒冷凝集素価の上昇があり、寒冷暴露による溶血の悪化や慢性溶血がみられる。直接クームズ試験では補体成分が検出される。

3) 発作性寒冷ヘモグロビン尿症
ヘモグロビン尿を特徴とし、血清中に二相性溶血素(Donath-Landsteiner抗体)が検出される。

5. 以下によって経過分類と病因分類を行う。
1) 急性:推定発病または診断から6か月までに治癒する。
2) 慢性:推定発病または診断から6か月以上遷延する。
3) 特発性:基礎疾患を認めない。
4) 続発性:先行または随伴する基礎疾患を認める。


6. 参考
1) 診断には赤血球の形態所見(球状赤血球、赤血球凝集)も参考になる。

2) 温式AIHAでは、常用法による直接クームズ試験が陰性のことがある(クームズ陰性AIHA)。この場合、患者赤血球結合IgGの定量が有用である。

3) 特発性温式AIHAに特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が合併することがある(Evans症候群)。また、寒冷凝集素価の上昇を伴う混合型もみられる。

4) 寒冷凝集素症での溶血は寒冷凝集素価と平行するとは限らず、低力価でも溶血症状を示すことがある(低力価寒冷凝集素症)。

5) 自己抗体の性状の判定には抗体遊出法などを行う。

6) 基礎疾患には自己免疫性疾患、リウマチ性疾患、リンパ増殖性疾患、免疫不全症、腫瘍、感染症(マイコプラズマ、ウイルス)などが含まれる。特発性で経過中にこれらの疾患が顕在化することがある。
 
7) 薬剤起因性免疫性溶血性貧血でも広スペクトル抗血清による直接クームズ試験が陽性となるので留意する。診断には臨床経過、薬剤中止の影響、薬剤特異性抗体の検出などが参考になる。







この場合、薬剤性免疫性溶血性貧血を除外しておくことが大切です。

特に、βラクタム環を有する抗菌薬使用後の直接クームズ試験陽性溶血性貧血が有名です。輸血検査技師がクームズ試験陽性を来しやすい薬剤リストを作成していることがありますので、問い合せてもよいと思います。

なお、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の1〜4%は直接クームズ試験陰性です。



以下の場合には、クームズ陰性の自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を疑います。

1)    溶血所見がある。
2)    PNH・先天性溶血性貧血が否定的である。
3)    球状赤血球・赤血球凝集など自己免疫性溶血性貧血(AIHA)に矛盾しない赤血球形態所見がある。
4)    (偶然の)副腎ステロイド使用に反応する。


なお、クームズ陰性自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断には、赤血球結合IgG定量検査が有用です(自治医科大学地域医療学センター地域医療学部門などへ相談されると良いと思います)。


自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断を確定させると同時に、続発性の自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を除外する必要があります。

特に、全身性エリテマトーデス・リンパ増殖性疾患は常に念頭に置く必要があります。必要に応じて、骨髄異形成症候群・悪性腫瘍・妊娠・後天性免疫不全症候群の除外も考慮します。

 


【溶血性貧血】

1)赤血球寿命

2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)

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5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断

6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療

7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療

8)溶血性貧血の治療(海外との比較)




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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:13 | 溶血性貧血 | コメント(0) | トラックバック(0)

2009年2月16日

慢性骨髄性白血病(CML)と分子標的治療:講演会のご案内

下記のごとく、学術講演会のご案内をさせていただきます。


合同症例検討会(戦略的CML治療の幕開け)

日時:2月16日 午後7時30分開始

場所:金沢都ホテル


特別講演

「CML 2008 update: 分子標的治療の新たな課題」

京都大学医学部 血液・腫瘍内科 一戸辰夫 先生

 

(備考) 

まだ、大分先になりますが、下記もあらかじめご案内申しあげます(移植・輸血関連研究会)。

2009年6月6日(土):造血細胞移植関連研究会(会名未定)(金沢ニューグランドホテ
ル)

2009年10月10日(土):日本輸血・細胞治療学会北陸支部例会(旧地方会)(金沢大学
病院新外来棟タカラホール)

 

 

【リンク】

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:53 | 研究会・セミナー案内 | コメント(0) | トラックバック(0)

2009年2月15日

溶血性貧血の病型分類 :溶血性貧血(3)

溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班):溶血性貧血(2)からの続きです。

 

【溶血性貧血の病型分類 】

溶血性貧血の治療方針を決定するためには、溶血性貧血の病型分類を行う必要があります。

さて、溶血性貧血の分類は以下の通りです。


-----------------------------------------------------------------------------------------------------------

溶血性貧血の分類と頻度

1 . 後天性溶血性貧血

  1) 免疫性溶血

   ・  温式抗体による自己免疫性溶血性貧血 (47%)

   ・  冷式抗体による自己免疫性溶血性貧血 (5%)
         a) 寒冷凝集素症 (4%)
         b) 発作性寒冷ヘモグロビン尿症 (1%)

   ・  不適合輸血

   ・  新生児溶血性疾患

   ・  薬剤

  2) 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH) (25%)

  3) そのほか:外傷・微小血管障害、破砕赤血球症、感染、化学薬品・薬剤・毒、熱傷、低 リン血症、スプール細胞貧血、脾機能亢進症 など

 

2.  先天性溶血性貧血  (17%)

  1) 赤血球膜異常

  2) 赤血球酵素異常

  3) ヘモグロビン異常

  4) ポルフィリン症

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

診断と病型分類のポイントは以下の通りです。

 

溶血性貧血の約50%は温式抗体によるAIHAです。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)先天性溶血性貧血を加えると、全体の約90%になります。

したがって、溶血性貧血が疑われれば、まずこの3疾患を念頭に置いて病型診断を進めると良いです。

 

さて、具体的にはどのように検査を進めれば良いのでしょうか。。。(続く)
 

 

【溶血性貧血】

1)赤血球寿命

2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)

3)溶血性貧血の病型分類

4)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断

5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断

6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療

7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療

8)溶血性貧血の治療(海外との比較)




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2009年2月14日

溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班):溶血性貧血(2)

赤血球寿命:溶血性貧血(1)からの続きです。

 

【溶血性貧血の診断 】

溶血性貧血の診断は、厚労省特定疾患 特発性造血障害に関する調査研究班(小峰光博班) が作成した診断基準に基づいて行うのが良いでしょう(以下の通りです)。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------
溶血性貧血の診断基準(厚労省研究班:平成16年)

1. 臨床所見として、通常貧血と黄疸を認め、しばしば脾腫を触知する。ヘモグロビン尿や胆石を伴うことがある。


2. 以下の検査所見がみられる。

  1) ヘモグロビン濃度低下

  2) 網赤血球増加

  3) 血清間接ビリルビン上昇

  4) 尿中・便中ウロビリン体増加

  5) 血清ハプトグロビン値低下

  6) 骨髄赤芽球増加


3. 貧血と黄疸を伴うが、溶血を主因としない他の疾患(巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群、赤白血病、congenital dyserythropoietic anemia、肝胆道疾患、体質性黄疸など)を除外する。


4. 1および2により溶血性貧血を疑い、3により他疾患を除外し、診断の確実性を増す。
しかし、溶血性貧血の診断だけでは不十分であり、特異性の高い検査により病型を確定する。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------
 


上記の診断基準にある便中ウリビリン体検査は省略されることが多いです。
診断基準以外では、LDH上昇(1-2型優位)も有用な所見です。
 
診断基準上は骨髄検査が必須ですが、1)貧血以外に血球数の異常がなく、2)末梢血中に幼若顆粒球・赤芽球がみられないなど血液悪性疾患を支持する徴候がない、3)骨髄検査を安 全に実施できる医師がいない、4)クームズ試験陽性など、条件によっては骨髄検査を留保 する場合もありえます。

なお、フェロキネティクスや赤血球寿命測定は不要です(むしろ 実施可能な施設は少ないです)。

 

 

【溶血性貧血】

1)赤血球寿命

2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)

3)溶血性貧血の病型分類

4)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断

5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断

6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療

7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療

8)溶血性貧血の治療(海外との比較)




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赤血球寿命:溶血性貧血(1)

【溶血性貧血】hemolytic anemia

溶血性貧血とは赤血球(RBC)の破壊亢進により起こる貧血です。

ただし、赤血球の破壊速度が正常の6〜8倍、つまり通常の赤血球寿命120日が短縮しても赤血球寿命が20〜15日までにとどまりますと、骨髄の赤血球造血亢進で代償されるために貧血にはなりません。

換言しますと、これ以上の速度で赤血球の破壊を生じますと、貧血をきたします。

赤血球膜の先天性異常など生来溶血が続きましても、成人になるまで貧血にならないことがあるのはこのためなのです。

この後、溶血性貧血関連のブログ記事をシリーズで、発信してまいりたいと思います。

 

 

【溶血性貧血】

1)赤血球寿命

2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)

3)溶血性貧血の病型分類

4)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断

5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断

6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療

7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療

8)溶血性貧血の治療(海外との比較)




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咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係:好酸球性下気道疾患(4)

前回記事(アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎:好酸球性下気道疾患(3))より続きます。

関連記事(日本語の表あり):アトピー咳嗽 vs. 咳喘息:咳嗽の診断と治療(8)

 


【咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係】

咳喘息(CVA)に関するCorraoらの原著論文には、2つのキーワードがあります。

1)気管支拡張薬が有効な咳嗽

2)気道過敏性が軽度亢進


わが国では「気管支拡張薬が有効な咳嗽」を重要視したために、アトピー咳嗽(AC)(気管支拡張薬が無効な咳嗽)が登場し、欧米では後者を重要視したために非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)(気道過敏性が正常な咳嗽)が登場した歴史があります。


ここで重要なことは、慢性乾性咳嗽の発生機序に少なくとも次の二つがあることです。

1)気管支平滑筋収縮がトリガーとなる咳嗽:咳喘息(CVA)

2)気道表層の咳受容体感受性が亢進して発生する咳嗽:アトピー咳嗽(AC)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬による咳嗽、胃食道逆流症

さらに、咳感受性と気管支平滑筋は全く相互作用を持たないことも重要です。

 

 

【咳喘息(CVA)の認識】:気道過敏性と気管支拡張薬の有効性

咳の図1


上図【1】に示したように、気管支拡張薬の有効性を重要視した場合にはArea CとArea Dが、気道過敏性亢進を重要視した場合にはArea AとArea Cが、咳喘息(CVA)と認識されることになります。

そして、それぞれの裏がアトピー咳嗽(AC)(気管支拡張薬無効)と非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)(気道過敏性正常)となります。したがって、気道過敏性亢進と気管支拡張薬の有効性に強い相関があるか否かが、わが国と欧米の咳喘息(CVA)認識の不一致性を大きく左右することになります。

 

咳の図2

 

 

上図【2】に、金沢大学呼吸器内科が診療した慢性乾性咳嗽患者の気管支拡張薬の有効性メサコリン気道過敏性の関係をプロットしてみました。まず、両者の間には相関を認めないことが明らかです。したがって、気道過敏性亢進が気管支拡張薬の有効性を示さないことになります。

そして問題は、上図【2】に円で囲んだ症例の診断です。日本では咳喘息(CVA)と診断することができますが、欧米ではこのような病態の報告はみられません。なぜならば、気管支拡張薬の有効性を評価していないからです。したがって、咳嗽の発生機序に基づいたわが国における咳喘息(CVA)の認識は、将来の病態的診断への進歩に伴い、より有効な治療法の開発につながる優れたものと考えられます。

 


【アトピー咳嗽と非喘息性好酸球性気管支炎】

前述したように、咳喘息(CVA)に関する日本と欧米の認識の違いによってアトピー咳嗽(AC)非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)が生まれました。

以前の記事の表1&2に示したように、非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)は病理学的には咳喘息に類似し、生理学的にはアトピー咳嗽(AC)に類似します。そして予後は咳喘息(CVA)に類似します。


【まとめ】
以上のように咳喘息(CVA)の考え方が日本と欧米で異なるため、日本ではアトピー咳嗽(AC)が、欧米では非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)が慢性咳嗽を呈する好酸球性下気道疾患として認識されています。

現在の慢性咳嗽の診断は治療的に行われていますが、自然軽快やプラセボー効果の問題、特異的治療が効果的でない場合(重症や難治性)には診断が不能となる問題などがあります。

したがって、咳嗽の発生機序を含めた病態的診断法の開発が将来の重要課題と考えられます。






 

【シリーズ】 好酸球性下気道疾患

1)概念 & β2-刺激薬の特徴

2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 

【関連記事】  咳嗽の診断と治療  <推薦>

1)ガイドライン

2)咳嗽の定義 & 性状

3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

【関連記事】

慢性咳嗽の診療

非小細胞肺癌治療の最前線

肺がんに気づくサイン

 

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2009年2月13日

第9回血液疾患先端フォーラム

下記のフォーラムをご案内申しあげます。

 

第9回 血液疾患先端フォーラムのご案内


日時:平成21年2月28日(土) 17:00より

場所:金沢ニューグランドホテル 5階 銀扇の間

               
【製品紹介】ファンガード最新の話題 

 
【特別講演】 

  座長 金沢大学大学院医学系研究科 細胞移植学 教授 中尾眞二


『 非ホジキンリンパ腫に対する最新の治療動向 』

  名古屋第二赤十字病院 血液・腫瘍内科 部長  小椋美知則先生 


共催 血液疾患先端フォーラム/アステラス製薬株式会社

 

 

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アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎:好酸球性下気道疾患(3)


前回記事(咳喘息:好酸球性下気道疾患(2))より続きます。

関連記事(日本語の表あり):アトピー咳嗽 vs. 咳喘息:咳嗽の診断と治療(8)


【アトピー咳嗽Atopic cough(AC)

<概念>

気管支拡張薬が全く無効で、ヒスタミンH1-拮抗薬とステロイド薬が有効な乾性咳嗽を呈する疾患概念として、1989年に、当科(金沢大学 血液内科・呼吸器内科)の 藤村らが提唱した疾患概念です。

「アトピー素因」とは、過去、現在または未来に、アレルギー疾患を発症した、発症している、または発症する可能性のある素因を意味しており、IgE抗体産生を意味する狭義の意味ではありません。

 

<病態>

前回記事(咳喘息:好酸球性下気道疾患(2))の表に示したように、咳感受性亢進を呈する好酸球性気管・気管支炎が基本病態です。咳感受性とは気道表層の知覚神経(C-線維かAδ-線維かの同定は不明)の過敏性を言います。末梢気道に好酸球性炎症を認めないのが咳喘息と大きく異なる病態です。

 

 


【非喘息性好酸球性気管支炎nonasthmatic eosinophilic bronchitis(NAEB)

<概念>

 1989年、Gibson PGらが「病理学的には喘息と同様に朝の喀痰中に好酸球増加がみられるのに、生理学的には喘息とは異なり気道過敏性が亢進していない病態」の発見に対して使用した言葉です。

最初から疾患概念として提唱した訳ではなく、好酸球性気道炎症と気道過敏性亢進の関係に一石を投じたものです。以降、英国のBrightling CEが中心となってこの病態を精力的に検討しています。


<病態>

前回記事(咳喘息:好酸球性下気道疾患(2))の表に示したように、好酸球性気道炎症が喘息と同様に中枢気道から末梢気道まで存在しますが、気道過敏性は亢進していない病態です。

病理学的には咳喘息(CVA)に類似してい¥ますが、生理学的にはACに類似しています。




(続く)

 

【シリーズ】 好酸球性下気道疾患

1)概念 & β2-刺激薬の特徴

2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 

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1)ガイドライン

2)咳嗽の定義 & 性状

3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

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咳喘息:好酸球性下気道疾患(2)


前回記事(概念 & β2-刺激薬の特徴:好酸球性下気道疾患(1))より続きます。

なお、関連記事としまして、日本語の表はアトピー咳嗽 vs. 咳喘息:咳嗽の診断と治療(8)からご覧いただけます。


咳の表1



【咳喘息】Cough variant asthma(CVA)


前回記事で書かせていただいた基本事項を背景として、最初に咳喘息が報告されました。

<概念>
1979年Corraoらは、喘鳴や呼吸困難を伴わない(喘息とは診断できない)慢性咳嗽に対して、気管支拡張薬の経口投与が奏効した6症例を喘息の亜型として報告しています。

この6症例では気道過敏性が軽度亢進しており、1年半の追跡中に2名が典型的喘鳴を発症したため、喘息の前段階と認識されています。

その後、「咳喘息」と命名されましたが、欧米、本邦ともに頻度の多い原因疾患です。

 


咳の表2



<病態>
今回の記事内の2つの表(咳喘息、非喘息性好酸球性気管支炎、アトピー
咳嗽の比較)に示したように、生理学的所見も病理学的所見も典型的喘息に酷似していますが、過剰な気管支平滑筋収縮が起こらず、咳嗽のみが表現型となる点が喘息とは異なります

本疾患における咳嗽発生機序の詳細は明らかではありませんが、気管支平滑筋内の知覚神経(Aδ線維)が平滑筋の軽度収縮によって刺激されてインパルスを咳中枢へ送る機序が示唆されています。

したがって、気管支平滑筋を弛緩させる気管支拡張薬が有効な咳嗽を呈することになります。





(続く)

 

【シリーズ】 好酸球性下気道疾患

1)概念 & β2-刺激薬の特徴

2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 

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1)ガイドライン

2)咳嗽の定義 & 性状

3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

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2009年2月12日

概念 & β2-刺激薬の特徴:好酸球性下気道疾患(1)

【好酸球性下気道疾患の概念】

日本における慢性咳嗽の三大原因疾患は以下の通りです。

1)    咳喘息(cough variant asthma; CVA)(乾性咳嗽)

2)    アトピー咳嗽(atopic cough; AC)(乾性咳嗽)

3)    副鼻腔気管支症候群(湿性咳嗽)

咳喘息とアトピー咳嗽は、誘発喀痰中に好酸球を認めることが多く、好酸球性下気道疾患に分類されます。

欧米では、喀痰中好酸球増多正常気道過敏性を呈する疾患概念として

非喘息性好酸球性気管支炎(nonasthmatic eosinophilic bronchitis; NAEB)

が提唱されています。咳喘息、アトピー咳嗽、非喘息性好酸球性気管支炎のそれぞれについて整理してみたいと思います。



【β
2-刺激薬の特徴:咳嗽との関係】

β2-刺激薬は、気管支平滑筋収縮に対しては抑制効果を発揮しますが、気道表層の咳受容体および延髄の咳中枢に対しては抑制効果を持たないことが基本的な事項になります。
ですから、気管支平滑筋収縮が関係しない咳嗽には鎮咳効果を持ちません。

咳受容体&咳中枢に対しては抑制効果のない根拠:

1)正常者および喘息患者において、酒石酸咳感受性とメサコリン気道過敏性は相関しないこと。

2)正常者において、メサコリン誘発気管支平滑筋収縮は酒石酸およびカプサイシン咳感受性を変化させないこと。

3)正常者において、β2-刺激薬吸入による気管支平滑筋の弛緩は酒石酸咳感受性を変化させないこと。

4)正常モルモットでも咳感受性亢進を伴うアレルギーモルモットでも、β2-刺激薬の全身投与はカプサイシン咳感受性を全く変化させないこと。


(続く)

 

【シリーズ】 好酸球性下気道疾患

1)概念 & β2-刺激薬の特徴

2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 

【関連記事】  咳嗽の診断と治療  <推薦>

1)ガイドライン

2)咳嗽の定義 & 性状

3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

【関連記事】

慢性咳嗽の診療

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2009年2月11日

慢性咳嗽&ガイドライン:咳嗽の診断と治療(11)

 胃食道逆流症(GERD):咳嗽の診断と治療(10)からの続編です

(咳嗽ガイドライン関連記事)

 

【慢性咳嗽のその他の原因】

 慢性咳嗽の原因としては、既に記事にしたものの他に、以下もあります。

1.    ACE阻害薬による咳嗽
2.    慢性気管支炎
3.    かぜ症候群後遷延性咳嗽(感染後咳嗽)
4.    心因性・習慣性咳嗽
5.    肺癌
6.    気管・気管支結核
7.    気道内異物
8.    間質性肺炎
9.    気管支漏(ブロンコレア)
など。


【シリーズ「咳嗽の診断と治療」を完結するにあたって】

 咳嗽の原因や原因疾患を知ることは、医療者側にとっても患者側にとっても有益です。
知らないほど心配・不安なことはありません。

さらにそれぞれの原因疾患には、軽症や中等症に対しては、有効な治療法が確立されています。しかしながら、重症や難治性では治療的診断は不可能になります。

どんな疾患でもそうであるように、病態学的に診断し、診断に基づいて治療を始めることが必要ですし、咳嗽に関するガイドラインは将来に向けて成長しなければならないと思います。

さらに、より強力で即効性のある治療法の開発も重要です。






(続く)

 

【シリーズ】  咳嗽の診断と治療

1)ガイドライン

2)咳嗽の定義 & 性状

3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

【関連記事】 好酸球性下気道疾患

1)概念 & β2-刺激薬の特徴

2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 


【関連記事】NETセミナー

慢性咳嗽の診療

非小細胞肺癌治療の最前線

肺がんに気づくサイン

 

 
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女性医師就業継続支援事業(石川県)

本日、以下のような案内をいただきました。石川県としても、女性医師就業継続支援を行うべく努力されているようです。

女性医師の多い、私達の金沢大学 血液内科・呼吸器内科としても、この「支援事業」を支援するために、ブログ記事にしておきたいと思います。



女性医師就業継続支援事業


石川県では、結婚出産育児など家庭の事情で離職し、しばらく仕事をされていない女性医師で再就業を希望される方のための相談窓口を設置しました。

◇ ブランクがあるので勤務できるか不安
◇ 院内保育所のある病院に勤務したい
◇ 復帰前にトレーニングをうけたい

     などの相談・お問い合わせをお受けします。

◇ 今は仕事を続けているが、育児で大変
◇ こういう改善ができたらよいのに

という女性医師の方についてもご相談・ご意見をお寄せください。



<相談窓口・お問い合わせ先>

石川県健康福祉部医療対策課内
石川県地域医療サポートセンター   
電話:076-225-1449(直通)
FAX:076-225-1434
Eメール:iryoujin@pref.ishikawa.lg.jp


<ホームページでも各種情報提供しています>


石川県地域医療サポートセンターのホームページ内「女性医師就業継続支援事業」をご覧ください

石川県地域医療サポートセンターのアドレスは下記のとおりです
http://www.pref.ishikawa.jp/iryou/support/center.html

 

【以下は当科ブログで掲載中の関連記事です】

子育て女性医師に対する取り組み(5回シリーズ)

女性医師の時代の足音が聞こえますか

1. 金沢大学血液内科・呼吸器内科 女医会

2. 女性医師の役割

3. 女性医師問題・バンク

4. 医師不足の解消へ

5. 医師不足と業務のあり方

6. 女性医師と多様な働き方


研修医・入局者募集へ 

女性医師からのメッセージ(カテゴリー) 

金沢大学 血液内科・呼吸器内科HPへ


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:59 | 女性医師(当科)からのメッセージ | コメント(0) | トラックバック(0)

胃食道逆流症(GERD):咳嗽の診断と治療(10)

 

副鼻腔気管支症候群(SBS):咳嗽の診断と治療(9)からの続編です(咳嗽ガイドライン関連記事)。 



【胃食道逆流症】 gastro-esophageal reflux disease(GERD)

概念

胃酸が食道に逆流することによって、何らかの症状や合併症が生じている状態を胃食道逆流症(gastro-esophageal reflux disease:GERD)と言います。ただし、内視鏡的な逆流性食道炎とは一致しません。

GERDの症状の一部に乾性咳嗽があります。

また、乾性咳嗽が唯一の症状の場合もあります。


病態

以下の2つの機序が考えられています。

1)reflex mechanism
胃食道逆流によって食道下端に存在する迷走神経末端が刺激され、迷走神経反射を介して咳嗽が発生する機序です。

2)microaspiration mechanism
胃食道逆流によって胃内容物が気管・気管支に少量誤飲され、気管支平滑筋や咳受容体が直接刺激されることによって咳嗽が発生する機序です。

また、咳嗽によって誘発された胃食道逆流がさらに咳嗽を悪化させるという咳嗽‐逆流自己悪循環(cough-reflex self-perpetuation cycle)説も提案されています。


診断

胃食道逆流症(GERD)による咳嗽を疑うのは、以下の図(再掲です)に示した治療的診断に失敗した時です。

 

6のフロー

 

 

GERDを疑えば、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を投与しますが、咳嗽が改善するまでに必要な平均期間は161〜179日であり、長期間の投与が必要です。PPIによって咳嗽が消失すればGERDと診断できます。

 簡易診断基準を以下に示します。

 

胃食道逆流による慢性咳嗽の簡易診断基準

1.治療前診断基準

 8週間以上継続する慢性咳嗽で,以下のいずれかを満たす
(1)胸やけ、呑酸など胃食道逆流を示唆する上部消化器症状を伴う
(2)咳嗽の原因となる薬剤の服用(ACE阻害薬など)がなく,抗菌薬,H1拮抗薬,気管支拡張薬および吸入ステロイド薬が無効

2.治療後診断

胃食道逆流に対する治療(プロトンポンプ阻害薬、H2拮抗薬など)により咳嗽が軽快する

 


治療

十分量のPPIを投与します。
著効例では投与2週間で咳嗽の著しい改善を示すことが報告されていますが、通常は4週間以上の投与が推奨されています。
PPIが無効な症例では、外科的治療(fundoplication)が実施されることもあります。






(続く)

 

【シリーズ】  咳嗽の診断と治療

1)ガイドライン

2)咳嗽の定義 & 性状

3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

【関連記事】 好酸球性下気道疾患

1)概念 & β2-刺激薬の特徴

2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 


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第31回日本造血細胞移植学会総会(札幌)

先日、以下の学会が開催されました。
金沢大学 血液内科・呼吸器内科(今回は血液内科)からも大勢の参加、発表がありました。

学会参加の証拠写真(?)をアップしておきたいと思います。
日頃の大変な激務の中、しばしのつろぎの瞬間の画像です。

また、明日からの激務に向けて、決意を新たにしているところです。

右下の写真では、管理人には「明日からもまた頑張ろう〜」と気勢を上げているように見えます。
背景の雪像は、お前達に任せたぞ〜と、応援しているようです。


第31回日本造血細胞移植学会総会


テーマ:    パイオニアスピリットと移植医療の進歩
会長:    笠井 正晴 (特定医療法人 北楡会 札幌北楡病院)
会期:    2009年2月5日(木)〜2月6日(金)


 

学会2

学会1

 

 

 

 

 

 



投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:52 | 血液内科 | コメント(0) | トラックバック(0)

2009年2月10日

副鼻腔気管支症候群(SBS):咳嗽の診断と治療(9)

アトピー咳嗽 vs. 咳喘息:咳嗽の診断と治療(8)からの続編です(咳嗽ガイドライン関連記事)。 

 

【副鼻腔気管支症候群】Sinobronchial Syndrome(SBS)

概念

慢性・反復性の好中球性の気道炎症を上気道と下気道に合併した病態です。
上気道の病変は慢性副鼻腔炎(とくに上顎洞炎)です。下気道の病変は慢性気管支炎びまん性気管支拡張症びまん性汎細気管支炎の三つに分類されます。

本疾患は慢性湿性咳嗽を呈する代表的疾患です。14、15員環マクロライドが奏効する点で本疾患の認識は極めて重要と言えます。


病態

何らかの気道防御機構の障害に関連して発症すると推測されていますが、詳細は不明です。


診断

簡易診断基準を以下に示します。

 

副鼻腔気管支症候群(Sinobronchial Syndrome:SBS)の簡易基準診断
(下記の1〜3の全てを満たす)

1.呼吸困難発作を伴わない咳嗽(しばしば湿性)が8週間以上継続

2.以下の3つの所見のうち,1つ以上を認める
(1)後鼻漏,鼻汁および咳払いといった副鼻腔炎に伴う自覚症状
(2)上咽頭や中咽頭における粘液性ないし粘液膿性の分泌物(後鼻漏)の存在ないしcobblestone appearanceといった副鼻腔炎に伴う他覚所見,
(3)副鼻腔炎を示唆する画像所見

3.14ないし15員環マクロライド系抗菌薬や去痰薬が有効

 


副鼻腔炎の検出には、副鼻腔の画像所見(液体貯留像や粘膜肥厚像)が有用ですし、鼻汁スメアに好中球を認めることは重要な所見となります。

後鼻漏や咳払い(throat clearing)は副鼻腔炎の存在を強く示唆することになります。

喀痰中に肺胞マクロファージに加えて多数の好中球を認めることは、下気道における好中球性気道炎症の存在を示す重要な所見です。


治療

軽症:

気道粘液修復薬(L-カルボシステイン)が有効です。びまん性汎細気管支炎のように末梢気道の去痰が必要な場合には気道粘膜潤滑薬(塩酸アンブロキソール)を併用します。


中等症:

常用量の1/4〜1/2量の14,15員環マクロライド薬を併用します。


重症&増悪時:

喀痰培養で検出された病原菌に感受性のある抗菌薬の常用量を1〜3週間上乗せします。症状が軽快すれば薬剤を減量・中止します。再燃時には同様な治療を繰り返します。




(続く)

 

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5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

【関連記事】 好酸球性下気道疾患

1)概念 & β2-刺激薬の特徴

2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 


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アトピー咳嗽 vs. 咳喘息:咳嗽の診断と治療(8)

 

 咳喘息:咳嗽の診断と治療(7)からの続編です(咳嗽ガイドライン関連記事)。 



【アトピー咳嗽】atopic cough

概念

気管支拡張薬が全く無効で、ヒスタミンH1-拮抗薬とステロイド薬が有効な乾性咳嗽を呈する疾患概念として、1989年に我が国から提唱された疾患概念です。

「アトピー素因」とは、過去、現在または将来に、アレルギー疾患を発症した、発症している、または発症する可能性のある素因を意味していますが、IgE抗体産生を意味する狭義の意味ではありません。


病態

以下の表(以前の記事でも掲載しています、再掲です)に示したように、咳感受性亢進を呈する好酸球性気管・気管支炎が基本病態です。咳感受性とは気道表層の知覚神経(C-線維かAδ-線維かの同定は不明)の過敏性を言います。

アトピー咳嗽は、好酸球性炎症が中枢気道のみであり末梢気道には認めない点が、咳喘息と大きく異なる病態です。

慢性咳の表*




診断

アトピー咳嗽の簡易診断基準を以下に示します。


アトピー咳嗽の簡易診断基準

1.    喘鳴や呼吸困難を伴わない乾性咳嗽が3週間以上持続
2.    気管支拡張薬が無効
3.    アトピー素因を示唆する所見 (※) または誘発喀痰中好酸球増加の1つ以上を認める
4.    ヒスタミンH1-拮抗薬または/およびステロイド薬にて咳嗽発作が消失


(※)アトピー素因を示唆する所見:


1)    喘息以外のアレルギー疾患の既往あるいは合併
2)    末梢血好酸球増加
3)    血清総IgE値の上昇
4)    特異的IgE陽性
5)    アレルゲン皮内テスト陽性

 

この治療的診断では、気管支拡張薬が無効なために咳喘息が否定できていて、ヒスタミンH1-拮抗薬ないしステロイド薬で軽快することが診断根拠となっています。


治療
以下の図(咳喘息とアトピー咳嗽の治療方針)に示したような治療を行います。

咳階段

左側は咳喘息、右側はアトピー咳嗽の治療です。
稀には両疾患の合併もあります。
効果が不十分な時は上方の治療薬を追加します。
症状が軽快した場合、咳喘息では長期吸入ステロイド療法が推奨されますが、アトピー咳嗽では治療を終了します。


アトピー咳嗽の重症度分類by 治療効果

軽症:ヒスタミンH1-拮抗薬で咳嗽が消失。
中等症:吸入ステロイド薬の併用で咳嗽が消失。
重症:上記に加えて、経口ステロイド薬の上乗せによって咳嗽が消失。
難治性:上記のいずれでも咳嗽が消失しない場合。

重症と難治性は専門医の診療が好ましいです。

アトピー咳嗽は、喘息への移行を認めませんので、症状が軽快すれば治療を中止できます。

(続く)

 

【シリーズ】  咳嗽の診断と治療

1)ガイドライン

2)咳嗽の定義 & 性状

3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

【関連記事】 好酸球性下気道疾患

1)概念 & β2-刺激薬の特徴

2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 


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2009年2月9日

咳喘息:咳嗽の診断と治療(7)


診断フローチャート:咳嗽の診断と治療(6)からの続編です(咳嗽ガイドライン関連の記事)。 

遷延性咳嗽と慢性咳嗽の中でも代表的原因疾患について、ブログ記事にさせていただきます。


【咳喘息】cough variant asthma(CVA)


概念

1979年Corraoらは、喘鳴や呼吸困難を伴わない慢性咳嗽を訴え、気道過敏性が軽度亢進し、気管支拡張薬の経口投与によって咳嗽が消失した6症例を喘息の亜型として報告しています。その後咳喘息と命名されましたが、欧米、本邦ともに頻度の多い原因疾患です


病態

以下の表に示したように、生理学的所見も病理学的所見も典型的喘息に酷似していますが、過剰な気管支平滑筋収縮が起こらず、咳嗽のみが表現型となる点が喘息とは異なります。

 

慢性咳の表*

 

 本疾患における咳嗽発生機序の詳細は明らかではありませんが、気管支平滑筋内の知覚神経(Aδ線維)が平滑筋の軽度収縮によって刺激されてインパルスを咳中枢へ送ることが示唆されています。

したがって、気管支平滑筋を弛緩させる気管支拡張薬が有効な咳嗽の病状を呈することになります。

 

診断

咳喘息の簡易診断基準を以下に示します。


咳喘息の簡易診断基準 (下記1〜2の全てを満たす)
————————————————————————————
1. 喘鳴を伴わない咳嗽が8 週間 (3週間) 以上持続。
聴診上もwheezesを認めない。

2. 気管支拡張薬が有効                      
————————————————————————————
参考所見
1) 喀痰・末梢血好酸球増多を認めることがある (特に前者は有用)
2) 気道過敏性が亢進している



喘息とは診断できない咳嗽に対して、気管支拡張薬が奏効するのは咳喘息だけであることが重要です。

 

治療

軽症: 気管支拡張薬のみ、又はロイコトリエン拮抗薬の併用で咳嗽が消失。
中等症: 吸入ステロイド薬の併用で咳嗽が消失。
重症: 経口ステロイド薬の併用で咳嗽が消失。
難治性:上記の治療でも咳嗽が消失しない場合。

重症と難治性は専門医の診療が必要です。

咳喘息の30%は数年の内に典型的喘息を発症しますが、長期吸入ステロイド療法はこれを予防する効果があります。


  
(続く)

 

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1)ガイドライン

2)咳嗽の定義 & 性状

3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

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1)概念 & β2-刺激薬の特徴

2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 


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2009年2月8日

診断フローチャート:咳嗽の診断と治療(6)

6のフロー

 

 

 

咳嗽の発症機序:咳嗽の診断と治療(5)からの続編です。

 

【遷延性咳嗽と慢性咳嗽の各論】

8週間以上持続する慢性咳嗽では、95%以上の症例において診断と治療が可能です。

しかし、一般臨床では、咳嗽の持続期間が8週間以上では長すぎる(現実的ではない)と考えられるため、遷延性咳嗽と慢性咳嗽を合わせて解説したいと思います。

 

 

1.遷延性咳嗽&慢性咳嗽の原因疾患

主な原因疾患ないし原因に関しては以前の記事を参照いただければと思います(遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽:咳嗽の診断と治療(4))。

感染後咳嗽、百日咳、肺炎クラミジア、マイコプラズマなどの感染症による遷延性咳嗽が抗菌薬治療によって軽快せず、8週間以上持続する場合には、これらの感染症がトリガーとなって慢性咳嗽の原因疾患が発症したと判断すべきです。

決して漫然と抗菌薬治療を継続してはいけないのです。

 

2.遷延性咳嗽&慢性咳嗽の診断

疾患の診断は病態的に行うのが正当ですが、咳嗽の分野は発展途上であり、病態把握のための検査は普及していません。

したがって現状では、頻度の多い原因疾患、治療法の特異性、治療効果の即効性などを加味した治療的診断に頼らざるを得ません(上図を参照)

ただし、咳嗽には自然軽快やプラセボ効果があり有効と判定してしまうこと、逆に治療抵抗性(難治性)の症例では診断不能となってしまうことが重大な問題であり、治療的診断から病態的診断への脱却が不可欠です。



(続く)

 

 

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3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

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2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 


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咳嗽の発症機序:咳嗽の診断と治療(5)


遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽:咳嗽の診断と治療(4)からの続編です。



【咳嗽の発生機序】

湿性咳嗽
:喀痰を喀出するための生理的咳嗽。診断と治療の標的は気道の過分泌です。

乾性咳嗽:咳嗽が一次的に発生する病的咳嗽。診断と治療の標的は咳嗽そのものです。


乾性咳嗽の発生機序には、少なくとも以下の2つがあります。

1)気道表層の咳受容体の感受性亢進によって咳嗽が発生する機序:
アトピー咳嗽胃食道逆流による咳嗽ACE阻害薬による咳嗽などが該当する。

2)気管支平滑筋の収縮がトリガーとなって咳嗽が発生する機序:
咳喘息のみが該当します。


(続く)

 

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3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

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7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

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2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 


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遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽:咳嗽の診断と治療(4)

 

 咳嗽の定義 & 性状:咳嗽の診断と治療(3)からの続きです。

咳嗽に関するガイドライン」に関連した記事です。

 


【遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽】


遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽の原因疾患は以下の通りです。

慢性咳

 

遷延性咳嗽と慢性咳嗽の診療のアウトラインを以下の図に示します。

慢性咳ライン

 

 

我が国における慢性咳嗽の三大原因疾患は、以下の通りです。

1)咳喘息(乾性咳嗽)

2)アトピー咳嗽(乾性咳嗽)

3)および副鼻腔気管支症候群(湿性咳嗽)

 

遷延性咳嗽ではこれらにかぜ症候群後遷延性咳嗽(感染後咳嗽と省略、乾性咳嗽)が加わります。

さらに頻度は低くなりますが、胃食道逆流による咳嗽(乾性咳嗽)、ACE阻害薬による咳嗽(乾性咳嗽)、心因性・習慣性咳嗽(乾性咳嗽)などにも注意が必要です。



(続く)

 

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10) 胃食道逆流症(GERD)

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2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 


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2009年2月7日

急性咳嗽:咳嗽の診断と治療(3)

 

咳嗽の定義 & 性状:咳嗽の診断と治療(2)からの続きです。



【急性咳嗽】

急性咳嗽(がいそう)の原因疾患を以下に示します。

1.胸部X線で異常を認める重篤な疾患

a. 心血管系疾患: 肺血栓塞栓症、うっ血性心不全
b. 感染症: 肺炎、肺結核
c. 悪性腫瘍: 原発性・転移性肺腫瘍
d. 免疫アレルギー的機序: 各種間質性肺疾患


2.胸部X線で異常を認めない場合のある感染性疾患

普通感冒、急性気管支炎、マイコプラズマ感染、クラミジア感染、百日咳、インフルエンザウイルス感染、慢性気道疾患急性増悪、急性鼻副鼻腔炎、RSウイルス感染、ヒトメタニューモウイルス感染

3.遷延性・慢性咳嗽の原因疾患の初発
気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽、鼻副鼻腔炎、GERD、ACE阻害薬

4.健常成人ではまれな疾患:誤嚥、気道内異物など





急性咳嗽のアウトラインを以下の図に示します。

咳2


急性咳嗽のなかで最も頻度の高いのは、感染性疾患です。その中でも鼻腔から喉頭までの上気道のウイルス感染によるかぜ症候群の頻度が最も高いです。特に治療を行わなくとも自然治癒することが多いです。

その後、咳嗽の持続期間が長くなってきますと、非感染性疾患による遷延性・慢性咳嗽の頻度が増加してきます。

また、急性咳嗽の診療を行う場合には、全ての遷延性咳嗽と慢性咳嗽が発症当初は急性咳嗽の形をとるため、急性咳嗽の診断においても遷延性および慢性咳嗽の原因疾患に対する知識が要求されることになります。

(続く)

  

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3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

【関連記事】 好酸球性下気道疾患

1)概念 & β2-刺激薬の特徴

2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 


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咳嗽の定義 & 性状:咳嗽の診断と治療(2)

ガイドライン:咳嗽の診断と治療(1)からの続きです。


「咳嗽に関するガイドライン」に関連した記事を続けます。今回は咳嗽の定義と性状です。



【咳嗽の定義】

<咳嗽の持続期間>

● 急性咳嗽 (acute cough):3週間未満の咳嗽。

● 遷延性咳嗽 (prolonged cough):3週間以上持続する咳嗽。

● 慢性咳嗽 (chronic cough):8週間以上持続する咳嗽。



<咳嗽の性状>


● 乾性咳嗽
喀痰を伴わない、あるいは少量の漿液性喀痰を伴う咳嗽。
咳嗽そのものが苦痛となる病的咳嗽です。咳嗽そのものが治療対象となります。

● 湿性咳嗽
喀痰を喀出するための咳嗽。
生体防御機構としての生理的咳嗽です。気道の過分泌が治療対象となります。

● 狭義の慢性咳嗽
8週間以上持続する咳嗽が唯一の症状であり、胸部単純X線検査やスパイログラフィーなどの一般検査や身体所見では原因を特定できない咳嗽です。



(続く)

 

【シリーズ】  咳嗽の診断と治療

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3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

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2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 


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ガイドライン:咳嗽の診断と治療(1)

 


【咳嗽ガイドラインの背景】

(日本)
日本呼吸器学会咳嗽に関するガイドライン」が発刊(2005年9月)。
(欧米)
1998年:ACCPからevidence-based consensus panel reportとして「Managing Cough as a Defense Mechanism and as a Symptom」 が発刊。
2006年:ACCPから改訂版「Diagnosis and management of cough: ACCP evidence-based clinical practice guidelines」が発刊。
2006年:英国で「Recommendations for the management of cough in adults」が発刊。

 

【慢性咳嗽の主要な原因疾患】各ガイドラインの記載内容

咳1




【咳嗽の三大原因疾患】

欧米
1)    鼻・副鼻腔疾患による咳嗽
2)    胃食道逆流による咳嗽
3)    喘息性咳嗽(咳喘息)


日本
1)    咳喘息
2)    アトピー咳嗽
3)    副鼻腔気管支症候群



鼻・副鼻腔疾患による咳嗽と胃食道逆流による咳嗽の咳嗽発生機序が明確には解明されていないこと、人種や地域性が異なることなどが欧米と我が国の咳嗽原因疾患の相違の原因となっている可能性があります。

 


【ガイドライン作成へ】
上記のような背景に基づいて、我が国の実地臨床に役立てることを目的とした独自のガイドラインが作成されました。

これまでにも欧米では咳嗽に関するconsensus reportが執筆されていますし、日本においても用いられてきました。しかし、上記のように本邦の咳嗽患者の原因疾患と欧米のそれとが必ずしも一致しません。

この度のガイドラインは、従来の欧米からの報告にとらわれない、我が国独自のものとなっています。また、呼吸器の専門医のみではなく、むしろ一般臨床医に使用していただくことを目標にしています。ですから、市中の一般病院や診療所においても実施可能な診断的治療をフローチャートで示すことが心がけられているのです。

(続く)

 

【シリーズ】  咳嗽の診断と治療

1)ガイドライン

2)咳嗽の定義 & 性状

3)急性咳嗽

4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽

5)咳嗽の発症機序

6)診断フローチャート

7)咳喘息

8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息

9)副鼻腔気管支症候群(SBS)

10) 胃食道逆流症(GERD)

11)慢性咳嗽&ガイドライン

 

【関連記事】 好酸球性下気道疾患

1)概念 & β2-刺激薬の特徴

2)咳喘息

3)アトピー咳嗽 & 非喘息性好酸球性気管支炎

4)咳喘息・アトピー咳嗽・非喘息性好酸球性気管支炎の関係

 


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慢性咳嗽の診療

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肺がんに気づくサイン

 

 
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2009年2月6日

先天性血栓性素因の治療:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(6)


アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(5)
からの続きです。




 【先天性血栓性素因の治療】

先天性血栓性素因、具体的には先天性アンチトロンビン(Antithrombin:AT)、プロテインC(Protein C:PC)、プロテインS(Protein S:PS)欠損症の患者における血栓症の急性期および慢性期の内科的治療は、以下のような抗凝固療法が基本になります。


急性期
ヘパリン類:未分画ヘパリン、低分子ヘパリン(商品名:フラグミン)、ダナパロイド(商品名:オルガラン)いずれかの経静脈的投与。なお、分画ヘパリン、低分子ヘパリンは24時間持続点滴、オルガランは1日2回の静注になります(関連記事:ヘパリン類の種類と特徴ヘパリン類の表)。

慢性期
ワルファリン(商品名:ワーファリン)の内服。ワルファリンは、永続的に内服していただくことが多いです。


ヘパリン類からワルファリンに切り替えていく際に注意すべき点は、先天性プロテインC欠損症では、ワルファリン投与開始1〜2日後に皮膚壊死(電撃性紫斑病 purpura fulminans)をおこす可能性があることです。そうならないように、ヘパリン併用下にワルファリンを少量から治療域にまで増量していき、治療域で安定した後にヘパリンを中止することが大切です。

先天性アンチトロンビン欠損症に対する血栓症の治療、あるいは周産期や術後の血栓傾向に対しては、予防的にアンチトロンビン濃縮製剤を使用する場合があります(関連記事:先天性アンチトロンビン欠損症の治療)。

先天性プロテインC欠損症における静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)、電撃性紫斑病に対しては、血漿由来活性化プロテインC(APC)製剤を抗凝固剤として使用することもできますが、驚くほど高価なことがネックになっています。

 

 

【シリーズ】先天性血栓性素因アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症

1)病態 
2)疫学 
3)症状 
4)血液・遺伝子検査  ←遺伝子検査のご依頼はこちらからどうぞ。
5)診断 
6)治療

 

 

【関連記事】

先天性血栓性素因の診断

出血性素因の診断

血栓症と抗血栓療法のモニタリング

血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)

先天性アンチトロンビン欠損症の治療

 

 

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先天性血栓性素因の診断:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(5)

アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(4)からの続きです。

 

 【先天性血栓性素因の診断の流れ】

先天性アンチトロンビン(Antithrombin:AT)、プロテインC(Protein C:PC)、プロテインS(Protein S:PS)欠損症といった先天性血栓性素因の診断の流れは、以下のようになります。

1)先天性血栓性素因を疑わせる臨床所見があること(ただし家族調査family studyで診断される場合は臨床所見がないことがあります)。

2)AT、PC、PSいずれかの活性低下を認めること。

3)AT、PC、PSの低下が後天的要因を除外できること。

4)最終的には、遺伝子診断が得られれば診断が確定します。



【先天性アンチトロンビン(AT)欠損症の診断】

 本症は常染色体優性遺伝形式をとります。ホモ接合体は致死的ですので、通常はヘテロ接合体として認められます。血中AT活性は正常の50%程度を示します。以下のように分類されます。

●    I 型:AT抗原量・活性ともに低下する古典的欠乏症(産生異常)。
●    II 型:抗原量が正常であるものの活性が低下するいわゆる分子異常症。さらに以下のサブタイプに分類されます。
○     II 型−RS:反応中心部位(reactive site:RS)に異常を認めプロテアーゼ阻害活性が低下するタイプ。
○     II 型− HBS:へパリン結合部位(heparin binding site:HBS)に異常を認めるタイプ。U型-HBSでは、ホモ接合体が報告されています。
○     II 型−PE:単一の遺伝的変異が多面的な機能異常(pleitropic effects:PE)を示すタイプ。

 

【先天性プロテインC(PC)欠損症の診断】

 本症は常染色体優性遺伝で、ほとんどの場合ヘテロ接合体として認められます。血中PC活性値は、多くの場合、正常の30〜60%程度です。2つのタイプに分類されます。

●    I 型:活性と抗原が同程度に低下する産生異常。
●    II 型:抗原値は正常であるものの活性値が低下する分子異常。

現在までに300以上の症例報告がありますが、I 型へテロ接合体が約8割と圧倒的に多く、II 型ヘテロ接合体が1割強です。残りが、ホモ接合体と複合へテロ接合体ですが、きわめて稀(50万〜70万人に1人)です。


【先天性プロテインS(PS)欠損症の診断】

 本症は常染色体優性遺伝形式をとり、発症頻度は先天性血栓性素因の中で最も多いです。
臨床症状は先天性PC欠乏症と類似しており、検査所見もヘテロ接合体では血中PS活性値は正常の30〜60%程度を示します。PS活性値が低下している場合は、後天性に低下する病態の可能性を考えながら、先天性欠損症の診断とサブタイプの決定を行います。

●    I 型:遊離型PS抗原量もPS活性も低下する産生異常症。
●    II 型:遊離型PS抗原量は正常であるもののPS活性が低下する分子異常症。

 


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 (続く)

 

【シリーズ】先天性血栓性素因アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症

1)病態 
2)疫学 
3)症状 
4)血液・遺伝子検査  ←遺伝子検査のご依頼はこちらからどうぞ。
5)診断 
6)治療

 

 

 【関連記事】

先天性血栓性素因の診断

出血性素因の診断

血栓症と抗血栓療法のモニタリング

血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)

先天性アンチトロンビン欠損症の治療

 

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:24 | 血栓性疾患 | コメント(0) | トラックバック(0)

2009年2月5日

先天性血栓性素因と血液・遺伝子検査:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(4)

アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(3)からの続きです。

 

検査所見上の特徴


【血液検査】

一般に血栓性素因が疑われる場合には、ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)、抗カルジオリピン抗体(IgG抗体)、抗カルジオリピンーβ2グリコプロテインI抗体(抗aCL-β2GPI複合体抗体)測定による抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)の検索を行います。

さらに生理的凝固阻止因子であるアンチトロンビン(Antithrombin:AT)、プロテインC(Protein C:PC)、プロテインS(Protein S:PS)の血中活性を測定し、先天性血栓性素因をスクリーニングします。

また、血中ホモシステインや、Lp(a)濃度の測定も行っておきたいところです。

 

(1)アンチトロンビン

血中アンチトロンビン(AT)レベルの測定は、ヘパリン存在下でのトロンビンまたはXa阻害効果を合成基質を用いて活性を測定する方法が一般的です。

抗原量は、抗AT抗体を用いた免疫学的方法により測定します。

ヘパリン使用時に採血しますと、AT活性が低下しデータの信頼性が落ちるので注意が必要です。

 

AT活性低値を示す場合としては、以下が代表的です。

1)先天性AT欠損症

2)消費性凝固障害(播種性血管内凝固症候群:DIC)

3)炎症性サイトカインの作用による産生低下

4)炎症(血管透過性亢進)による血管外漏出(敗血症DICなど)

5)肝予備能低下(肝硬変、劇症肝炎、肝不全)によるAT産生低下

6)尿中への喪失(ネフローゼ症候群)

7)薬剤(エストロゲン製剤、L-asparaginaseなど)の影響

8)その他

 

(2)プロテインC

プロテインC(PC)、プロテインS(PS)はいずれも、凝固VII、IX、X、II因子とともにビタミンK依存性蛋白です。ですから、PC、PSはビタミンK欠乏症やビタミンKの拮抗薬であるワルファリン内服でも低下いたします。

PC活性の測定には、凝固時間法と合成基質法とがあります。

両者ともに蛇毒由来プロテインC(PC) activator(プロタック)で血漿中PCを十分活性化し、生じた活性化PC(activated PC:APC)によるAPTT延長効果をみる方法が凝固時間法であり、発色合成基質の分解能をみる方法が合成基質法です。

合成基質法ではワルファリン内服患者におけるPIVKA-PCが偽高値を示したり、Glaドメインなどに変異がある先天性PC異常症ではPC活性値が偽高値となり診断を見落とす可能性があるので留意すべきです。

PC抗原量の測定は、総PC濃度測定法と、正常なGlaを有するPCを特異的に測定する方法とがあり、共にELISAを用います。

 

PC活性低値を示す場合としては、以下が代表的です。

1)先天性PC欠損症

2)肝予備能低下(肝硬変、劇症肝炎、肝不全)によるPC産生低下

3)ビタミンK欠乏症:食事摂取量の低下、抗生物質の長期連用、胆道閉塞(閉塞性黄疸)、ワルファリン内服など。PCは半減期が大変短く、ビタミンK欠乏状態や肝予備能低下で速やかに活性が低下します(これは後記のPSとの違いです)。

4)凝固活性化による消費(DICなど)

5)血管内皮細胞傷害に基づく血管外漏出

6)その他。

たとえば深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)症例にワルファリンを投与してしまってから血栓性素因の精査を行いますと、先天性欠損症との鑑別はきわめて困難となってしまいます。

したがって、臨床サイドも検査部サイドも、血栓性素因が疑わしい症例ではワルファリン投与前の検体保存を心がけるべきなのです。

 

(3)プロテインS

血中プロテインS(PS)活性は、活性化PC(activated PC:APC)のコファクター(補助因子)活性を凝固時間法で測定することができますが、保険適用外検査です。

PS抗原量は、総PS抗原濃度、遊離型PS濃度、C4BP結合型濃度をELISA法にて測定できます。

遊離型PS抗原量は、女性が男性よりも低値です。

加齢による変動は男性で認められ、80代では30代の8割以下まで低下します。

通常遊離型PS抗原量はPS活性を反映しますが、異常PS分子の場合は遊離型PS抗原量と活性は乖離する場合がありますので、先天性血栓性素因の検索にはPS活性の測定が望ましいと言えます。

しかしながら血栓性素因のスクリーニング検査では、通常保険適用のある遊離型PSしか測定できないのが現状です。

一方、PS活性測定によるPS欠損症の診断にも限界があることが指摘されており、健常者でもPS活性が低下したり、日本人に多いPS Tokushima変異(155 Lys→Glu)のヘテロ接合体ではPS活性が低下しない場合があります。

 

PS活性低値を示す場合としては、以下が代表的です。

1)先天性PS欠損症

2)肝予備能低下(肝硬変、劇症肝炎、肝不全)によるPS産生低下

3)ビタミンK欠乏症:食事摂取量の低下、抗生物質の長期連用、胆道閉塞(閉塞性黄疸)、ワルファリン内服など。しかし、半減期の短いPCほどは低下しないことが多いです。

4)妊娠、経口避妊薬使用時

5)全身性エリテマトーデス

6)抗リン脂質抗体症候群(APS)

7)ステロイド内服

8)ネフローゼ症候群

9)その他

 


【遺伝子検査】

施設によっては、さらに家族を含めた遺伝子レベルの解析まで行う場合があります。

しかし、必ずしも遺伝子変異部位が特定できるとは限らず、今までの遺伝子解析法ではPS欠損症の40〜50%程度は遺伝子異常が同定されないと言われています。

遺伝子解析が必ずしも最終的な診断法となりえるわけではありませんが、ワルファリン服用中のPCあるいはPS低下例で変異部位が同定できますと、先天性欠損症の診断が確定し、威力を発揮する場合が多々あるのです。
 


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その後は、担当専門医師と直接連絡をとっていただくことになると思います。


なお、上記メールアドレスは医療関係者から当科への遺伝子解析依頼目的のものです。それ以外の目的でメールをいただいても対応できない状況ですので、どうぞよろしくご理解のほどお願いいたします。


参考書籍:

臨床に直結する血栓止血学」(先天性血栓性素因に関しても詳述されています)

 


P.S.

今までも、全国の各地域から多数のご依頼をお受けしています。
金沢大学から遠方の地域であっても何ら支障ございませんので、ご遠慮なくご連絡くださいませ。

 



 (続く)

 

【シリーズ】先天性血栓性素因アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症

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2)疫学 
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:04 | 血栓性疾患 | コメント(0) | トラックバック(0)

先天性血栓性素因と症状:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(3)

アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(2)からの続きです。



【臨床症状】


先天性血栓性素因のヘテロ接合体患者は、通常は幼少時にはあまり血栓症はみられません。ただし、血栓症の70〜80%が40歳以前に発症します。

先天性血栓性素因の多くは、静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)で、下肢の深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)や肺塞栓(pulmonary embolism:PE)などを発症しますが、まれな場所(脳静脈洞血栓症、門脈血栓症、腸間膜静脈血栓症など)に発症する場合もあります。



特に以下の血栓症の場合には、先天性血栓性素因(先天性アンチトロンビン欠損症、先天性プロテインC欠損症、先天性プロテインS欠損症など)があることを予測して検査する必要があります。

1)若年性発症
2)まれな場所に発症
3)再発性
4)家族性
5)抗凝固療法中にもかかわらず血栓症を反復
6)習慣性流産を含む不育症




ただし、血栓症の発症には、以下のような引き金となる他の危険因子の存在も重要ですので、問診の際に十分把握する必要があります。

1)外傷
2)手術
3)感染
4)妊娠
5)ホルモン補充療法
6)経口避妊薬の内服
7)長期臥床
8)ロングフライト(旅行者血栓症)



なお、プロテインC(PC)欠損症とプロテインC(PS)欠損症は、55歳以前の動脈血栓発症のリスクを増加させ、静脈血栓症ばかりでなく動脈血栓症も発症しやすいことが最近明らかとなっています。


また、PC欠損症のホモ接合体および複合へテロ接合体は極めてまれですが、新生児期より皮膚の壊死を伴う電撃性紫斑病(purpura fulminans)や、重篤な静脈血栓症を呈することがあります。


 (続く)

 

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1)病態 
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6)治療

 

 

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2009年2月4日

臍帯血移植&GVHD:造血幹細胞移植前処置としてのATG(6)

【臍帯血移植前処置のATG】

臍帯血移植では、急性GVHD予防に加え、ホスト免疫を抑制し生着不全を防ぐ目的で、ATGが使用されます。

欧州血液骨髄移植グループの報告では、臍帯血移植患者の77%がATGを含む移植前処置を受けていました。臍帯血移植においても、ATGが急性GVHD予防効果を有することが報告されています。

臍帯血移植はGVHDの発症頻度が低いと考えられてはいますが、感染症とともに重症GVHDの発症も、臍帯血移植の成否を大きく左右しているのです。

ATGを含まない前処置を受けることの他には、複数臍帯血移植・緩和的前処置は急性GVHDの発症をうながす危険因子であったという報告があります。今後臍帯血移植における急性GVHD予防対策はますます重要になると考えられます。

臍帯血移植62例の前処置に抗胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(商品名:サイモグロブリンTG) 6-7.5 mg/kgを用いたイタリアからの報告によりますと、2-4度急性GVHDの頻度は15%、3-4急性GVHDはわずか2%でした。
特に、緩和的前処置後に複数臍帯血移植を実施する場合、治療関連死亡を防ぐため、ATGによるin vivo purgingが有用かもしれません。

日本ではATGが移植に適応を有していなかったこともあり、移植前処置にATGが用いられることは少なかったですが、今後実施が予定されている臨床研究の結果が待たれるところです。



【重要性の増すGVHD対策とATG】

 日本では、graft-versus-malignancy効果の増強を主眼とする研究が盛んですが、実はGVHDなど移植関連合併症死亡(約40%)のほうが原病死亡(約15%)よりも多いのです。

GVHD後遺症や進行性の臓器障害など、晩期障害による死亡やQOL低下の問題も最近特にクローズアップされてきています。GVHDは、予防・診断・治療法も含めて未解明の部分も多いのですが、ATGを適切に使用することにより、移植成績が改善する可能性は十分あると考えられます。

 

 

【シリーズ造血幹細胞移植前処置としてのATG

1)背景
2)作用機序
3)GVHD予防 
4)晩期効果 
5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法 
6)臍帯血移植&GVHD

 

 

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2009年2月3日

先天性血栓性素因と疫学:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(2)

アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(1)からの続きです。

【疫学】


血栓性素因の関連遺伝子に関しては、人種差が注目されています。

欧米における血栓症発症の二大危険因子であるFactor V Leiden変異(活性化プロテインC抵抗性)やプロトロンビンG20210A変異は、日本人には見られません。

日本人一般住民を対象とした報告によると、アンチトロンビン(Antithrombin:AT)、プロテインC(Protein C:PC)、プロテインS(Protein S:PS)の各欠乏症の発症頻度は以下の通りです。

 

先天性PC欠乏症の発症頻度:0.13%(欧米人と差はなし)

先天性AT欠乏症の発症頻度:0.15%(欧米人と差はなし)

先天性PS欠乏症の発症頻度:1.12%(欧米人での発症頻度 0.16〜0.21%と比較して、5〜10倍も高いことが判明しています)

 

特に、PS分子異常症であるPS Tokushima変異(PS K196E:196 Lys→Glu)ヘテロ接合体は一般住民の55人に1人も見られ、日本人の遺伝子多型と考えられます。

最近報告された日本人の深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)患者173例を対象としてPS、PC、ATの遺伝子背景について解析したところ、いずれかの遺伝子にアミノ酸変化を伴う変異を有する症例が約30%検出されています(文献)。

特にPS遺伝子変異を有する症例が16%と全体の約1/6を占め、血栓症の重要な危険因子であることが明らかになっています。

一方で、AT、PC、PSの遺伝子検査だけでは7割弱の症例の原因が特定できないことも示していることになります。血栓性素因の原因検査の難しさを表わしていると言えます。

 (続く)

 

 

【シリーズ】先天性血栓性素因アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症

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2)疫学 
3)症状 
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6)治療

 

 

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2009年2月2日

先天性血栓性素因と病態:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(1)

 

森下論文1



【はじめに】
血栓症には、動脈硬化性病変を基盤として発症する動脈血栓症と、血流の停滞や凝固活性化により発症する静脈血栓とがあります。

「血栓性素因」とは、いわゆる「静脈や動脈に血栓が生じやすい傾向」を示しています。

動脈硬化性病変の進展により動脈血栓症を発症する糖尿病、高血圧、高脂血症などは通常は「血栓性素因」には含めず、動脈硬化性病変がなくても血栓症を発症し、くり返し起こしてくるような病態を「血栓性素因」として扱っています。

先天性血栓性素因としては、生理的凝固阻止因子であるアンチトロンビン(Antithrombin:AT)プロテインC(Protein C:PC)プロテインS(Protein S:PS)の欠乏症(欠損症)が知られています。

一方、後天性血栓性素因の代表は抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)です。APSの診断には、ループスアンチコアグラントや抗カルジオリピン抗体の測定が必要になります。

その他の血栓性素因としては、高Lp(a)血症、高ホモシステイン血症なども知られています。

今回のシリーズでは、先天性血栓性素因の中でも、AT、PC、PS欠損症についてブログ記事にしたいと思います。

 

【病因および病態】
アンチトロンビン(AT)は、血液凝固活性化の結果として生じるトロンビン(FIIa)、活性型第X因子(FXa)、活性型第IX因子(FIXa)などの活性型凝固因子(セリンプロテアーゼ)に対する生理的凝固阻止因子です。血液凝固制御機構において極めて重要な機能を果たしています。

ATの活性型凝固因子に対する阻止効果は、ヘパリン(血管内皮に存在するヘパリン様物質や、治療薬として投与されるヘパリン)存在下で約1,000倍にも加速されることが知られています。

ATには、ヘパリン結合部位と、トロンビンやFXaなど活性型凝固因子との結合部位の2つの重要な部位があります。ATのヘパリン結合部位にヘパリンが結合することで、ATが構造変化し、ATの活性型凝固因子に対する阻止効果が増強するのです。

 

プロテインC(PC)は、血管内皮細胞に存在するトロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)に結合したトロンビンにより活性化され活性化PC(activated PC:APC)となります。APCは血管内皮や血小板のリン脂質上でプロテインS(PS)と複合体を形成し(PSを補酵素として)、活性型第V因子(FVa)、活性型第X因子(FXa)を分解・失活させることで凝固反応を阻止します。

また、APCは線溶阻止因子であるプラスミノゲンアクチベーターインヒビター-1(plasminogen activator inhibitor:PAI-1)を中和し、線溶活性化を促進すると考えられています。

血中PSの約60%は補体制御蛋白の一種であるC4b結合蛋白(C4BP)と結合しており、約40%が遊離型として存在することが知られています。

APCに対する補酵素活性を有するのは、PSのうち遊離型PSのみです。この遊離型PSの低下が血中PS活性の低下につながると考えられています。C4BPとの複合型PSは、遊離型PSの補酵素活性を阻害します。したがってC4BP値の増減が、血中PS活性に影響することになります。

このように、AT、PC、PSなどの生理的凝固阻止因子に先天的な欠損や質的異常がみられますと、過凝固状態を呈し、血栓傾向となるのです。

 (続く)

 

参考:

先天性凝固異常症状(総論)インデックス

先天性凝固異常症状(各論)インデックス

 

 

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5)診断 
6)治療

 

血液凝固検査入門(インデックスページ) クリック! 血液凝固検査入門シリーズの全記事へリンクしています。

 

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2009年2月1日

急性GVHD:造血幹細胞移植前処置としてのATG(5)


【急性GVHDに対するpre-emptive ATG】

Bacigalupoらは、抗胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(商品名:サイモグロブリンTG)15 mg/kgの欠点(GVHDが減少する一方、感染症と再発が増加)を補うために、移植前処置時はTG 7.5 mg/kgにとどめ、移植後7日目または9日目にTG 1.25 mg/kgを追加投与する「急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法」を考案しました。

急性GVHDハイリスク170例を対象に、移植7日目または9日目にpre-emptive ATGを受ける2群に割りつけて臨床研究が実施されました。

詳細はまだ明らかになっていませんが、移植7日目群の方が重症急性GVHDは低頻度でした。

同時に、ATG使用例の移植後EBウイルス関連リンパ増殖性疾患発症を予防するため、移植5日目にリツキシマブ200 mgを予防投与することが推奨されています。
これにより、EBウイルスが1,000コピーを上回る症例はわずか5%に過ぎなかったと報告しています。

(続く)

 

 

【シリーズ造血幹細胞移植前処置としてのATG

1)背景
2)作用機序
3)GVHD予防 
4)晩期効果 
5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法 
6)臍帯血移植&GVHD

 

 

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