金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年12月31日

心臓弁膜症と後天性von Willebrand症候群


後天性von Willebrand症候群は、後天性血友病とならんで、最近何かと注目される疾患です。

今回紹介させていただく論文では、人工僧帽弁不全に後天性von Willebrand症候群を合併する点の検討がなされています。



「人工僧帽弁不全における後天性von Willebrand症候群」

著者名:Perez-Rodriguez A, et al.
雑誌名:Eur J Haematol 87: 448-456, 2011.


<論文の要旨>


重症の大動脈弁狭窄症患者のうち15〜25%で出血症状がみられますが、後天性von Willebrand症候群(AVWS)のためと考えられています。ただし、これまで人工僧帽弁(MV)不全においてAVWSを合併する報告はありませんでした。


著者らは、人工MV(不全あり)に対して適切な抗凝固療法の行われていた5症例で出血がみられた症例を経験しています。

全員入院加療が必要となり、2例では輸血が行われました。不全を伴っていない人工弁の2例をコントロールとしました。


術前に抗凝固薬(参考:PT-INR)を中止しましたが、APTTの延長が持続していました。

血小板機能解析では、4例ではclosure time(CT)が延長していました。

第VIII因子活性(FVIII:C)、VWFリストセチンコファクター活性(VWF:RCo)、VWFコラーゲン結合能(VWF:CB)の上昇がみられましたが、VWF抗原(VWF:Ag)が最も上昇していました。


VWFの large multimerの欠損とともに、VWF:RCo/VWF:Ag比やVWF:CB/VWF:Ag比の低下がみられました。術後には、全パラメーターは著増し、上記の比、CT、VWFマルチマー構造は正常化しました。

人工MV不全患者においてもAVWSを合併していることがあり、このことは出血と関連しているものと考えられました。

人工MV不全患者において抗凝固療法が理由として考えられない出血に遭遇した場合には、AVWSも考慮すべき
と考えられました。

【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17 | 出血性疾患

2011年12月30日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)忘年会:平成23年


忘年会

 

金沢大学第三内科忘年会が、平成23年12月17日(土)(於:ANAクラウンプラザホテル金沢)に行われました。

いろんな意味で大変に感動した忘年会になりました。

ドクター3人による演奏もありました。上記画像では右上です。
曲目はパッフェルベルのカノンでした。
その素晴らしさに鳥肌が立ったのは管理人だけではないと思います。

その他にも多くの出し物がありました。

多忙を極めているなか、懸命に準備された方々には、心から敬服いたします。

金沢大学第三内科バンザイ! と言いたいと思います。

 

 【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:59 | その他

2011年12月29日

米国International cough conference(金沢大学呼吸器内科)


国際学会参加の感想記事をアップさせていただきます。

「2011年 International cough symposiumnについて」 

 by  大倉徳幸(金沢大学呼吸器内科)


American international cough conferenceに出席しました。参加人数は120名程で、会場はニューヨーク・アフィーニアマンハッタンホテルで行われました。

国際学会としては決して大きな集会ではないですが、名前のとおり内容がすべて咳に関する演題ばかりであり、多くの国際的な咳の研究者が集うため、咳に興味がある者にとっては密度の濃い内容をもった学術集会です。この会は毎年ロンドンとニューヨークで交互に開かれます。


この会に参加するのは5年ぶりの2回目になります。ロンドンで初めて参加した時は、Discussionで司会者から質問されても内容を全く理解できなかった苦い記憶があります。

僕の研究テーマは、気管支平滑筋収縮と咳嗽反応の関係、咳喘息の咳嗽発症メカニズムについてです。藤村先生の御指導のもと、ちょうど5年前から始めた研究テーマであり、5年間のまとめとして自信を持って提示しようと臨みました。

未だ英会話には全くの自信はありませんでしたが。単身参加であり、顔見知りの日本人の先生方も何人かいらっしゃいましたが、基本的にアウェーでの発表です。

ところで欧米と日本の咳嗽に関するガイドラインにおいて、慢性乾性咳嗽に対する治療戦略は大きく異なります。

その大きな違いとして、日本では気管支拡張薬の効果を確認して咳喘息の診断治療となるのですが、欧米では気管支拡張薬の効果ではなく、気道過敏性の有無で咳喘息の診断を行います

しかしながら気管支拡張薬が有効な咳嗽にもかかわらず、気道過敏性が正常な患者さんが存在することも事実です。また欧米のガイドラインでは、アトピー咳嗽の診断もできません。咳喘息の約30%が典型喘息に移行するといわれていますが、アトピー咳嗽はそうではありません。両者の鑑別は重要だと考えられます。


現段階で、この咳喘息の咳嗽発症メカニズムについての研究の結論としては、咳喘息の咳嗽発症機序は気管支平滑筋収縮における咳嗽過敏反応であるということです。つまり健常人では、軽度の気管支平滑筋収縮にておいても反応がない一方、咳喘息患者では軽度の気管支平滑筋収縮に対しても咳嗽反応が起こるということです。

一般的な気道過敏性検査では一定の気管支平滑筋収縮を起こすためのメサコリン閾値濃度を測定するので、この気管支平滑筋収縮における咳嗽の過敏反応と気道過敏性は一致しません。このような内容を発表しました。

会場からは方法に関する質問がいくつかあったものの活発な討論とまではいかず、残念なような、ほっとしたような気分でした。


それにしても欧米と疾患概念や治療戦略が異なる分野なんて非常に珍しいのではないでしょうか。異なった視点からの研究により、分かっていく真実があると思います。

内向きにならず、むしろ積極的に国際的な学会や紙上でdiscussionしていければいいなあと思いました。

そのためには英論文の発表と英会話の熟練が必要であると改めて感じた会でした。ニューヨークは大都会すぎて、学会としてはもう少し静かなところが良いような気がしますが、是非また行きたい所です。

 

咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(インデックス)


【関連記事】  咳嗽の診断と治療

1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55 | 呼吸器内科

2011年12月28日

血液形態学2:金沢大学血液内科試験問題

平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>

今回は、血液形態学の問題(後編)です。

参考:
貧血患者へのアプローチ
溶血性貧血
汎血球減少のマネジメント:特に骨髄不全について


問1(後).    スライドの細胞は何か? 細胞名を記入せよ。


スライド4
スライド5
 


(正答)

(4)リンパ球
(5)巨核球



参考:造血幹細胞移植入門(インデックス)



【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
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2011年12月27日

血液形態学1:金沢大学血液内科試験問題

平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>

今回は、血液形態学の問題です。

参考:
貧血患者へのアプローチ
溶血性貧血
汎血球減少のマネジメント:特に骨髄不全について


問1(前).    スライドの細胞は何か? 細胞名を記入せよ。

スライド1
スライド2
スライド3


(正答)

(1)好中球または分節核好中球または分節核球
(2)単球
(3)多染性赤芽球、または赤芽球



参考:造血幹細胞移植入門(インデックス)



【リンク】
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2011年12月26日

骨髄中の細胞など:金沢大学血液内科試験問題


平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>

今回は、血液一般の問題です。

参考:
貧血患者へのアプローチ
溶血性貧血
汎血球減少のマネジメント:特に骨髄不全について



問2.    次の文の括弧の中に適切な言葉を記入せよ。

1)骨髄中の幼若顆粒球のうち、アズール顆粒がもっとも目立つのは(    )である。
2)骨髄中の赤芽球のうち、赤血球にもっとも近い細胞は(    )である。
3)鉄芽球性貧血では(    )の15%以上を環状鉄芽球が占める。
4)補体による血管内溶血を来す代表的疾患は(     )である。
5)貧血の鑑別診断において必須の検査項目は(     )球の測定である。
6)急性骨髄性白血病とそれ以外の急性白血病とを鑑別するための基本的な特殊染色は(     )染色である。
7)サラセミアでは血清鉄は(  )値を示す。
8)血液や骨髄の塗抹標本を観察する際には、(   )球が重なっていない細胞がよく伸びた部位を選んで観察する。
9)造血幹細胞移植のために用いる移植片には、骨髄、臍帯血、(    )がある。
10)慢性炎症の際、肝で産生される(      )は腸管からの鉄吸収を抑制する。



(正答)

1)
前骨髄球
2)正染性赤芽球
3)赤芽球
4)発作性夜間血色素尿症
5)網赤血または網状赤血
6)ペルオキシダーゼ
7)
8)赤血
9)末梢血
10)ヘプシジン

参考:造血幹細胞移植入門(インデックス)


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2011年12月25日

貧血など:金沢大学血液内科試験問題


平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>

今回は、リンパ腫、MDSほかの問題です。

参考:
貧血患者へのアプローチ
溶血性貧血
汎血球減少のマネジメント:特に骨髄不全について



問3.   
42歳の女性が労作時の息切れと倦怠感のため近医を受診したところ、血球減少を指摘された血液内科に紹介された。

血液検査では白血球数2900/μl、 赤血球数184万/μl、ヘモグロビン7.9 g/dl、ヘマトクリット22.9%、血小板数5.5万/μl、であった。

身体所見では舌乳頭の消失と、年齢不相応な白髪がみられた。

1)MCV(四捨五入)値を冪数(乗)表示の単位をつけて記載せよ。
2)疑われる疾患は何か。巨赤芽球性貧血または悪性貧血


(正答)
1)
124x10-15L
2)巨赤芽球性貧血または悪性貧血



問4.    鉄欠乏性貧血に関する記載のうち誤りはどれか。


(1)    血小板がしばしば増加する。
(2)    治療の基本は食餌療法である。
(3)    鉄飽和率は上昇する。
(4)    治療後にみられる最初の反応の兆候はMCVの上昇である。
(5)    鉄剤の内服は通常3カ月は必要である。

a. (1) (2) (3) b. (1) (2) (5) c. (1) (4) (5) d. (2) (3) (4) e. (3) (4) (5)


(正答)d



問5.    治療法で誤った結びつきはどれか。1つ選べ。


a.    再生不良性貧血 − ウサギ抗胸腺細胞グロブリン
b.    赤芽球癆 − シクロスポリン
c.    自己免疫性溶血性貧血 − 副腎皮質ステロイド
d.    骨髄異形成症候群 − アザチオプリン
e.    発作性夜間ヘモグロビン尿症 − 抗C5抗体


(正答)d



問6.    発作性夜間血色素尿症にみられる所見はどれか。


(1)    静脈血栓症
(2)    間接クームス試験陽性
(3)    血清フェリチンの上昇
(4)    血小板減少
(5)    PIG-A遺伝子変異

a. (1) (2) (3) b. (1) (2) (5) c. (1) (4) (5) d. (2) (3) (4) e. (3) (4) (5)

(正答)c


問7.    次の組み合わせのうち正しいのはどれか。

(1)    鉄欠乏性貧血−菲薄赤血球
(2)    骨髄異形成症候群−偽ペルゲル核異常
(3)    鉛中毒−好塩基性斑点
(4)    再生不良性貧血−巨大血小板
(5)    鎌状赤血球貧血−破砕赤血球

a. (1) (2) (3) b. (1) (2) (5) c. (1) (4) (5) d. (2) (3) (4) e. (3) (4) (5)


(正答)a


参考:造血幹細胞移植入門(インデックス)


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2011年12月24日

リンパ腫など:金沢大学血液内科試験問題


平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>

今回は、リンパ腫、MDSほかの問題です。

参考:悪性リンパ腫の診断



問8.    骨髄異形成症候群に関する記載のうち誤りはどれか。


(1)    がん化学療法の進歩に伴い、二次性が増加している。
(2)    血球減少と形態異常によって診断される症候群である。
(3)    ほとんどの例で染色体異常が検出される。
(4)    貧血がある例では、網状赤血球の増加がみられる。
(5)    60歳以上の患者では同種造血幹細胞移植の適応はない

a. (1) (2) (3) b. (1) (2) (5) c. (1) (4) (5) d. (2) (3) (4) e. (3) (4) (5)

(正答)
e


問9.    リンパ系腫瘍に関する記載のうち正しいのはどれか。

(1)    B細胞リンパ腫の中では濾胞性リンパ腫がもっとも多い。
(2)    ホジキンリンパ腫においてEBウイルスが関与していることは稀である。
(3)    成人T細胞性白血病/リンパ腫では皮膚病変がしばしばみられる。
(4)    高悪性度リンパ腫ではKi67陽性細胞の割合が高い。
(5)    リンパ形質細胞性リンパ腫では通常IgMの単クローン性増加がみられる。

a. (1) (2) (3) b. (1) (2) (5) c. (1) (4) (5) d. (2) (3) (4) e. (3) (4) (5)

(正答)e


問10.    次の組み合わせのうち正しいのはどれか。


(1)    マントル細胞リンパ腫−ヘリコバクター・ピロリの除菌
(2)    びまん性大細胞型B細胞リンパ腫−R-CHOP療法
(3)    中枢神経系B細胞リンパ腫−高用量メトトレキサート療法
(4)    ホジキンリンパ腫−ABVD療法
(5)    節外性NK/T細胞リンパ腫−リツキシマブ

a. (1) (2) (3) b. (1) (2) (5) c. (1) (4) (5) d. (2) (3) (4) e. (3) (4) (5)


(正答)d



参考:造血幹細胞移植入門(インデックス)


【リンク】
 
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2011年12月23日

白血病ほか:金沢大学血液内科試験問題


平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>

今回は、白血病ほかの問題です。

参考:造血幹細胞移植入門(インデックス)



問26.    本邦の成人患者に関する記述で正しいのはどれか。

(1)    急性骨髄性白血病より急性リンパ性白血病の方が発症頻度は高い。
(2)    急性骨髄性白血病のFAB分類ではM2の発症頻度が最も高い。
(3)    多発性骨髄腫の罹患率は女性より男性の方が高い。
(4)    多発性骨髄腫の人口10万人あたりのおおまかな年間発症数は30人である。
(5)    慢性骨髄性白血病は白血病全体の約50%を占める。

a. (1)(2)  b. (2)(3)  c. (3)(4)  d. (4)(5)  e. (1)(5)

(正答)b


問27.    疾患名と臨床症状の組み合わせで誤っているのはどれか。1つ選べ。


a.    急性単球性白血病 − 歯肉腫脹
b.    慢性骨髄性白血病 − 脾腫
c.    真性多血症 − 顔面紅潮
d.    原発性骨髄線維症 − 巨脾
e.    多発性骨髄腫 − 顎骨壊死

(正答)e


問28.    疾患名と検査所見の組み合わせで誤っているのはどれか。2つ選べ。

a.    急性リンパ性白血病 − Auer body
b.    慢性骨髄性白血病 − 好塩基球の増加
c.    真性多血症 − tear drop
d.    骨髄線維症 − leukoerythroblastosis
e.    多発性骨髄腫 − rouleaux formation

(正答)a,  c


問29.    好中球ALP染色(NAP)スコアが低値を示すのはどれか。2つ選べ。

a.    慢性骨髄性白血病慢性期
b.    慢性骨髄性白血病急性転化
c.    発作性夜間ヘモグロビン尿症
d.    真性多血症
e.    類白血病反応

(正答)a,  c


問30.    疾患名とその診断に必要な検査所見の組み合わせで誤っているのはどれか。2つ選べ。

a.    フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 − t(9;22)
b.    急性前骨髄性白血病 − t(15;17)
c.    慢性リンパ性白血病 − bcr/abl融合遺伝子
d.    真性多血症 − Jak2V617F遺伝子変異
e.    多発性骨髄腫 − IgM型M蛋白

(正答)c,   e


問31.    各疾患の腫瘍細胞と表面マーカーの組み合わせで誤っているのはどれか。1つ選べ。

a.    急性骨髄性白血病(AML-M0)− CD33(+)
b.    急性リンパ性白血病(B-ALL)− CD19(+)
c.    急性リンパ性白血病(T-ALL)− CD3(+)
d.    多発性骨髄腫 − CD38(+)
e.    多発性骨髄腫 − CD19(+)

(正答)e


問32.    疾患名と治療法・治療薬の組み合わせで誤っているのはどれか。1つ選べ。


a.    慢性骨髄性白血病慢性期 ― メシル酸イマチニブ
b.    真性多血症 ― ハイドロキシウレア
c.    血栓症状を伴う本態性血小板血症 ― 低用量アスピリン
d.    MGUS − MP(メルファラン+プレドニゾロン)療法
e.    若年の多発性骨髄腫 ― 自家末梢血幹細胞移植

(正答)d


問33.    各疾患の治療効果の判定方法について正しいのはどれか。2つ選べ。

a.    急性骨髄性白血病の完全寛解(CR):骨髄中の芽球が5%未満
b.    急性リンパ性白血病の完全寛解(CR):末梢血中の芽球が5%未満
c.    慢性骨髄性白血病の血液学的完全寛解(CHR):脾腫の有無は問わない
d.    慢性骨髄性白血病の細胞遺伝学的完全寛解(CCR):染色体が正常核型
e.    多発性骨髄腫における完全寛解(CR):血清遊離軽鎖(free light chain)κ/λ比の正常化

(正答)a,   d


問34.    造血器腫瘍の治療に用いられる抗がん剤とその代表的な副作用の組み合わせで誤っているのはどれか。

(1)    ダウノルビシン − 心機能障害
(2)    レチノイン酸(ATRA) − 播種性血管内凝固症候群
(3)    L-アスパラギナーゼ ― 肝炎
(4)    サリドマイド − 深部静脈血栓症
(5)    ボルテゾミブ − 末梢神経障害

a. (1)(2)  b. (2)(3)  c. (3)(4)  d. (4)(5)  e. (1)(5)

(正答)b


問35.    各疾患の予後に関する記述で正しいのはどれか。2つ選べ。


a.    t(8;21)の染色体異常を有する急性骨髄性白血病は予後不良である。
b.    FLT3変異を有する急性骨髄性白血病は予後不良である。
c.    フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の予後は20年前とほとんど変わらない。
d.    del(17p)の染色体異常を有する多発性骨髄腫は予後不良である。
e.    無症候性多発性骨髄腫は年1%の割合で症候性骨髄腫やアミロイドーシスに進展する。

(正答)b,   d

参考:造血幹細胞移植入門(インデックス)


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2011年12月22日

輸血問題:金沢大学血液内科試験問題


平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>
今回は、輸血関連の問題です。


20.  ABO型不適合赤血球輸血について正しいものはどれか。1つ選べ。

a)    死亡率は50%である。
b)    まず行うべきことは、輸血中止である。
c)    人為的ミスが原因になることは少ない。
d)    O+血をB+患者に輸血すると、ABO不適合輸血になる。
e)    輸血していた製剤は、血液型が確認できれば廃棄して良い。


(解説)

a)    死亡率は20%である。
b)    最初の対応は輸血中止である。次に輸血セットを交換し、乳酸または酢酸リンゲル液を急速静注する。
c)    人為的ミスが過半数を占める。
d)    ABO異型輸血だが、輸血可能であり、適合輸血となる。
e)    不適合輸血量は予後と関連するため、輸血量の確認も必要である。

(答え)b


21.  不規則抗体について正しいものはどれか。1つ選べ。

a)    自然抗体は主にIgGである。
b)    妊婦の不規則抗体検査は不要である。
c)    不規則抗体の陽性率は約1-2%である。
d)    「不規則抗体=血液型関連抗体」である。
e)    免疫抗体は主に不適切な予防接種により産生される。


(解説)
a)    主にIgMである。
b)    必要である。
c)    正しい。
d)    不規則抗体は規則抗体(抗A、抗B)以外の血液型関連抗体である。
e)    輸血・妊娠・移植が主な原因。

(答え)c


22.  輸血療法に関して正しいものはどれか。1つ選べ。

a)    輸血した血小板の約50%は脾臓に捕捉される。
b)    新鮮凍結血漿は、融解後5時間以内に輸注する。
c)    アルブミン投与後の血管回収率は通常約40%である。
d)    体重80kgの患者に赤血球製剤を2単位輸血すれば、Hbは約2 g/dL増加する。
e)    血清アルブミン値2.5 g/dLは、アルブミン投与の絶対適応である。

(解説)
a)    1/3が脾臓で補足される。
b)    3時間以内に輸注する。
c)    正しい
d)    1 g/dL増加する。
e)    低アルブミン血症は絶対適応ではない。

(答え)c


23.  血液製剤に関して正しいものはどれか。1つ選べ。

a)    400 mL全血献血から1単位の血漿製剤ができる。
b)    血液製剤から白血球除去を行う目的は、有効性向上である。
c)    凍結赤血球製剤は、まれな血液型へ対応するため用いられる。
d)    血液製剤には、人以外の動物血を原料として製造された医薬品も含まれる。
e)    免疫グロブリン製剤は、生物由来製品感染症等被害救済制度の対象外である。

(解説)
a)    2単位
b)    副作用予防
c)    正しい
d)    血液製剤は、人の血液を原料として製造された医薬品を指す。
e)    対象である

(答え)c


24.  血液製剤に関して正しいものはどれか。1つ選べ

a)    赤血球製剤は室温で保存する。
b)    血漿製剤の有効期間は採血後2年間である。
c)    血液製剤を生理食塩水と併用することはできない。
d)    4月1日の献血で得られた血小板製剤の有効期間は、4月4日の24時である。
e)    4月1日の献血で得られた赤血球製剤の有効期限は、4月22日の24時である。

(解説)
a)    2-6℃で保存する。
b)    1年間である。
c)    血液製剤は唯一生理食塩水のみ併用可能である。
d)    血小板製剤は、採血日を1日目として、最終使用日は4日目である。
e)    赤血球製剤は、採血日を1日目として、最終使用日は21日目である。

(答え)d


25.  輸血前検査に関して正しいのはどれか。1つ選べ。

a)    副試験は省略できない。
b)    主試験は血液型検査の一種である。
c)    患者のHAV・HBV・HCV検査を行う。
d)    緊急輸血前の輸血関連検査用採血は不要である。
e)    ABO式血液型検査の原則は、2回採血・2回検査である。


(解説)
a)    省略して良い。
b)    交差適合試験の一種である。
c)    HBV・HCV・HIV検査を行う。
d)    血液型検査や交差試験の結果を待つ必要は無いが、採血は行う。
e)    正しい。

(答え)e






【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2011年12月21日

血液凝固検査:金沢大学血液内科試験問題


関節内出血:金沢大学血液内科試験問題
より続く

平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>

  疾患・病態 出血時間 PT APTT Fbg HPT
a ビタミンK欠乏症 正常 延長 延長 正常 正常
b von Willebrand病 延長 正常 正常 正常 正常
c 血小板無力症 延長 正常 延長 正常 正常
d アスピリン内服 延長 正常 延長 正常 正常
e 劇症肝炎 延長 延長 延長 低下 低下

PT:プロトロンビン時、APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間、Fbg:フィブリノゲン、HPT:ヘパプラスチンテスト

(解説)
a. 
ビタミンK欠乏症では、HPTが低下します。
b. von Willebrand病では、APTTが延長します。
c. 血小板無力症では、APTTは正常です。
d. アスピリン内服では、APTTは正常です。
e. 劇症肝炎では、血小板数および凝固因子が低下します。


(正答)e



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2011年12月20日

関節内出血:金沢大学血液内科試験問題


血管内皮の抗血栓作用:金沢大学血液内科試験問題
より続く

平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>


問19.   

患者:12歳男性。

幼少時より関節内出血が頻回にみられている。弟も同様であった。

血液検査は下記の通りであった。
血小板数 23.3万/μL,PT 10.6秒,APTT 69.1秒,フィブリノゲン 217 mg/dL,FDP 2.1 μg/mL。
血液凝固第IX、XI、XII因子は正常であった。

この患者の血液検査異常がみられるのはどれか。1つ選べ。


a.    出血時間
b.    血小板凝集能
c.    血液凝固第VII因子
d.    血液凝固第VIII因子
e.    von Willebrand因子


(解説)

幼少時からの関節内出血をきたしている男性です。弟も同様であるため、先天性の出血性素因が考えられます。

特に、国家試験や卒業試験などで、関節内出血とくれば、まず血友病と考えて良いでしょう。

予想通り、APTTは延長しています。PT出血時間が正常であるところにも注目します。

APTTが延長していて、血液凝固第IX、XI、XII因子が正常ですから、血液凝固第VIII因子活性が低下していると考えられます。

a. 血友病では、出血時間は正常です。
b. 
血友病では、血小板凝集能は正常です。
c. 
血液凝固第VII因子が低下している場合には、PTが延長しているはずです。
d. 正しいです。
e. von Willebrand因子が低下すると、出血時間が延長します。


(正答)d

参考:医師国家試験 問題対策:血液内科(血栓止血領域)



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2011年12月19日

血管内皮の抗血栓作用:金沢大学血液内科試験問題


鼻出血&貧血:金沢大学血液内科試験問題
  より続く

平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>


問18.    血管内皮の抗血栓作用と関連しているのはどれか。1つ選べ。

a.    組織因子
b.    von Willebrand因子
c.    組織因子経路インヒビター(TFPI)
d.    α2 プラスミンインヒビター(α2 PI)
e.    プラスノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)


(解説)
血管内皮の抗血栓作用(参考:血管内皮と血管)と関連した物質としては、トロンボモジュリン、へパリン様物質(アンチトロンビンおよび組織因子経路インヒビター(tissue factor pathway inhibitor:TFPI)が結合)、PGI2(プロスタサイクリン)、一酸化窒素(NO)、組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)などが知られています(参考:リコモジュリントロンボモジュリン製剤)。

a. 組織因子の作用によって、外因系凝固が動きます。
b. von Willebrand因子は、血小板粘着に必要です。第VIII因子のキャリアー蛋白でもあります。
c. 組織因子経路インヒビター(TFPI)は、血管内皮の抗血栓作用に寄与しています。
d. α2 プラスミンインヒビター(α2 PI)は、プラスミンと結合することによって、線溶阻止的に作用します。
e. プラスノゲンアクチベーターインヒビターPAI)は、組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)と結合することによって、線溶阻止的に作用します。


(正答)c


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2011年12月18日

鼻出血&貧血:金沢大学血液内科試験問題


ビタミンK欠乏症など:金沢大学血液内科試験問題 より続く

平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>


問17.   

患者:20歳女性。
頻回かつ止血困難の鼻出血の精査目的に来院した。血液検査は下記の通りであった。

Hb 7.6 g/dL,血小板数 33.8万/μL,出血時間15分,PT 10.3秒,APTT 72.5秒,フィブリノゲン 243 mg/dL,FDP 3.5 μg/mL.

妹も、幼少時より鼻出血がみられやすい。

この疾患の止血治療として正しいものはどれか。1つ選べ。


a.    濃厚血小板
b.    新鮮凍結血漿 
c.    副腎皮質ステロイド
d.    デスモプレシン(DDAVP)
e.    遺伝子組換え第VIII因子製剤


(解説)
鼻出血(粘膜出血)がみられる女性です。妹も幼少時から鼻出血がみられるため、先天性の出血性素因が考えられます。女性ですから、血友病ではありません。

検査所見では、出血時間の延長と、APTTの延長がみられています(PTは正常になっています)。
von Willebrand病と考えられます。

a. 濃厚血小板は、血小板数が著減した場合などに使用することがあります。
b. 新鮮凍結血漿(FFP)は、凝固因子を早急に補充したい場合に使用することがあります。
c. 副腎皮質ステロイドは鼻出血に無効です。
d. 抗利尿ホルモンであるデスモプレシン(DDAVP)は、血管内皮から、von Willebrand因子を放出させる作用があります(参考:止血剤の種類と疾患)。
e. 遺伝子組換え第VIII因子製剤は、血友病Aの止血治療に使用されます。


(正答)d


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2011年12月17日

ビタミンK欠乏症など:金沢大学血液内科試験問題


TTP & HUS:金沢大学血液内科試験問題
より続く

平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>


問16.    血栓止血関連疾患の治療に関する記載として正しいのはどれか。1つ選べ。


a.    老人性紫斑病に対しては、ビタミンC内服が有効である。
b.    心原性脳塞栓の再発予防としては、アスピリン内服が有効である。
c.    アレルギー性紫斑病に対しては、新鮮凍結血漿の投与が有効である。
d.    閉塞性黄疸を合併したビタミンK欠乏症に対しては、ビタミンKの点滴静注が有効である。
e.    第VIII因子インヒビターの出血に対しては、遺伝子組換え第VIII因子製剤が有効である。


(解説)
a. 老人性紫斑病では、経過観察のみで大丈夫です。
b. 心原性脳塞栓の再発予防としては、アスピリンではなくワルファリン内服が有効です。本年(本記事執筆時点)からは、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)も使用できるようになりました。
c. アレルギー性紫斑病では経過観察で良い症例が多いです。一部の症例では、第XIII因子製剤が使用されることがあります。
d. ビタミンKは脂溶性ビタミンですので、その吸収に胆汁を必要とします。閉塞性黄疸では、ビタミンKの吸収が不十分のため、経口投与ではなく点滴静注でビタミンKを補充します。
e. 第VIII因子インヒビターの出血に対して、遺伝子組換え第VIII因子製剤は無効のため、バイパス製剤を使用します。バイパス製剤には、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(ノボセブン)や活性型プロトロンビン複合体製剤(ファイバ)があります。


(正答)
d

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2011年12月16日

TTP & HUS:金沢大学血液内科試験問題


播種性血管内凝固症候群(DIC):金沢大学血液内科試験問題
より続く

平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>


問15.    血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)の両者に共通した所見の記載として正しいはどれか。1つ選べ。


a.    血清LDHの低下
b.    網状赤血球の上昇
c.    ADAMTS13活性の低下
d.    直接ビリルビンの上昇
e.    血清ナトリウムの上昇


(解説)

a. 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)では、いずれもLDHは上昇します。
b. 両疾患で、
網状赤血球は上昇します。
c. 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)では、ADAMTS13活性が低下しますが、溶血性尿毒症症候群(HUS)では低下しません。
d. 
両疾患で、直接ではなく間接ビリルビンが上昇します。
e. いすれの疾患においても、他の病態の合併がなければ、血清ナトリウムの変動はありません。



(正答)b

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2011年12月15日

播種性血管内凝固症候群(DIC):金沢大学血液内科試験問題


抗リン脂質抗体症候群(APS):金沢大学血液内科試験問題
より続く

平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>


問14.    播種性血管内凝固症候群(DIC)の記載として正しいものはどれか。1つ選べ。
a.    PT、APTT、フィブリノゲン、血小板数ともに正常であれば、DICを否定できる。
b.    急性前骨髄球性白血病(APL)に合併したDICでは、フィブリノゲンが著減する。
c.    敗血症に合併したDICでは、血中プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)が正常である。
d.    固形癌に合併したDICでは、血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が正常である。
e.    敗血症に合併したDICでは、血中プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)が著増する。


(解説)
a. このような所見であっても、FDPの上昇があれば播種性血管内凝固症候群(DIC)と診断されることがあります。
b. 急性前骨髄球性白血病(APL)に合併したDICでは、フィブリノゲンが著減します。
c. 全てのDICにおいて、プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)は必ず上昇します。
d. 全てのDICにおいて、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)は必ず上昇します。
e. 敗血症に合併したDICでは線溶阻止因子PAIが著増するために、線溶活性化に対して抑制がかかります。血中プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)は、軽度上昇に留まることが多いです。



(正答)
b

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2011年12月14日

抗リン脂質抗体症候群(APS):金沢大学血液内科試験問題


出血 & 血栓傾向:金沢大学血液内科試験問題
より続く

平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)<問題の紹介と正答>


問13.    典型的な抗リン脂質抗体症候群(APS)に関する記載内容として、正しいものはどれか。1つ選べ。

a.    リン脂質依存性凝固時間が短縮する。
b.    静脈血栓症では腸間膜静脈血栓症が最も多い。
c.    ループスアンチコアグラントが陰性であれば、APSを否定できる。
d.    習慣性流産の女性に対しては、ワルファリンによる抗凝固療法を行う。
e.    APS患者血漿:コントロール血漿=1:4の混合血漿で、凝固時間の延長が是正されない。


(解説)

a. 抗リン脂質抗体症候群(APS)では、リン脂質依存性凝固時間(APTTカオリン凝固時間など)は延長します。
b. 静脈血栓症では深部静脈血栓症(DVT)が最も多いです。
c. ループスアンチコアグラントが陰性であっても、抗カルジオリピン抗体が陽性であれば、APSと診断されることが多々あります。
d. ワルファリンには、催奇形性の副作用があります。
e. その通りです(参考:クロスミキシングテスト)。


(正答)
e

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2011年12月13日

出血 & 血栓傾向:金沢大学血液内科試験問題


平成23年度 金沢大学血液内科学系統講義試験:細胞移植学(血液内科)が行われました。
<平成23年12月6日(火)試験時間 14時〜15時(60分間)>


問題の紹介と解答を少しずつアップしていきたいと思います。


問12.    下記の疾患のうち出血、血栓の両者がみられる疾患・病態はどれか。1つ選べ。


a.    高Lp(a)血症
b.    高ホモシステイン血症
c.    異常プラスミノゲン血症
d.    溶血性尿毒症症候群(HUS)
e.    Bernard-Soulier症候群(BSS)



(解説)

a. 高Lp(a)血症は、血栓傾向になります。
b. 高ホモシステイン血症は、血栓傾向になります。
c. 異常プラスミノゲン血症は、血栓傾向になります。
d. 溶血性尿毒症症候群(HUS)は、血小板活性化に伴う血栓傾向がみられますが、血小板数が著減して出血傾向もきたします。
e. Bernard-Soulier症候群(BSS)は、血小板膜糖蛋白GPIb/IXの先天性欠損がみられ、出血傾向をきます。


(正答)d

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2011年12月12日

2010年米国血液学会報告(ASH 2):金沢大学血液内科


2010年米国血液学会報告(1):金沢大学血液内科より続く


ASH3

 

ASH2

 

幸い気候は比較的温暖で天候にも恵まれ、とても過ごしやすい学会期間でした。

学会の醍醐味のもう一つは世界中から集まる研究者や臨床医との交流です。

学会期間は学内外を問わず、色々な先生方との交流を深める事ができました。

画像は第3内科のメンバーで行った食事会の写真と、学会最終日の午後の空いた時間に観光したフロリダディズニーワールドでの写真です。


この学会を通して、世界中の研究者の発表を目の当たりにし、また様々な研究者・臨床医との交流を通して、私自身の研究生活の出発年としてとてもいい刺激を得る事ができました。

今回の参加を通じて湧き起こってきた情熱やアイディアを活かし、1人でも多くの患者さんを救うべく、患者さんの治療に還元できるような研究を目指して頑張りたいと思います。


最後になりましたが、このような機会を設けて下さった中尾教授をはじめとする第3内科の諸先生方、また関係者の方々に感謝申し上げます。

ありがとうございました。


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2011年12月11日

2010年米国血液学会報告(1):金沢大学血液内科


ASH1

 


「2010年米国血液学会に参加して(1)」
  by 細川晃平(平成21年入局)

第3内科では2年間、病棟フリーとなり研究を中心とした生活があります。

私は平成21年度に大学院入学の後、平成22年度より2年間の研究生活を開始させて頂いておりますが、その1年目に米国血液学会に参加させて頂く機会を頂きましたので、御報告させて頂きます。

2010年12月4日から12月7日の4日間、第52回米国血液学会(ASH)がフロリダ州オーランドにて開催されました。ASHはアメリカの学会ではありますが、世界最大の血液学会として知られており、教科書やレビューなどで名前を連ねる著名な先生方が教育講演を行い、最先端の発表が行われる世界的な集まりです。総演題数は4000ほど、参加者は数万人に達する学会で、今回の会場は全米で2番目に大きいコンベンションセンターという事でした。会場から次の会場まで歩いて10〜15分かかることもあり予定通り発表を聞けない事もありました。

第3内科からは、中尾教授・大竹教授を始め総勢9名が参加致しました。採択率はおおよそ6割程度との事ですが、当教室からは7題が採択され、金沢大学の存在感を示す事ができたように思います。今回はそのうち4題が口演発表に採択されました。採択率10-20%と言われる口演発表に金沢大学の演題が4題も採択され、金沢大学第3内科の一員として非常に誇らしく感じました。

高見昭良先生は、博士研究員のLuis Espinoza先生とともに、NKG2DやGranzymeなどの遺伝子多型が非血縁者間同種移植の成績に及ぼす影響を明らかにし、大きな注目を集めました。

博士研究員の片桐孝和先生は再生不良性貧血患者にみられる6番染色体短腕のLOH(6pLOH)を世界で初めて報告し、骨髄不全研究に新たなブレイクスルーを見出しました。

保健学科の森下英理子先生はサイトカインで誘導されるTFやPAI-1の血管内皮細胞における発現に及ぼすクルクミンの影響を報告され、ASHの最終口演発表を終えられました。


私自身は初めての国際学会の参加でしたが、とにかく世界の血液内科学・血液内科診療は現在どのような事に着目し、どのような方向に進んでいるのかという観点で見聞を広めつつ、また現在私自身が中尾教授の指導の下で行わせて頂いている研究に関連した発表は可能な限り聞いて、演者に少なくとも一つは質問しようという意気込みで臨みました。

ASHの教育講演はまさにその世界の第一人者が話をしますので、非常に分かりやすいレビューと最先端の研究成果が提示され、非常に勉強になりました。

臨床研究領域ではレナリドマイドなどの新規薬剤の臨床試験の結果報告などが多かったようですが、NK細胞療法による白血病治療やMSC(Mesenchymal stem cell)を利用した細胞治療など、日本ではあまり聞く機会のない話を聞く事ができました。

基礎研究領域ではLeukemia (myeloma) stem cellなどの幹細胞をターゲットとしたこれまでにない治療戦略の話や、ゲノムワイド関連解析(GWAS)などのゲノム網羅的解析に関する発表が多い印象を受けました。

骨髄不全研究の領域では、演者をつかまえて質問をいくつかする事ができ、自分の行っている研究に参考になる情報を得る事ができたのは、大変有益であったと思います。


(続く)2010年米国血液学会報告(ASH 2):金沢大学血液内科


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2011年12月10日

呼吸器内科:学会員&専門医数

呼吸器専門医

 


内科領域の中でも、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科は、患者数が多い領域です。
患者数から考えますと、これら領域を専門とする臨床医、専門医は同程度数いても良いはずではないかと思います。

しかし、現状はどうでしょうか。。。

呼吸器内科は学会の会員数も少ないですが、専門医も極めて少ないことが上図から分かります。

医学部学生さん、研修医の皆さんに、じっくりみていただきたいグラフではないかと思います。

日本の医学の発展のためにも、バランスのとれたスタッフ数が配置されると良いですね。


なお、金沢大学におきましても、呼吸器内科のスタッフ数の比率がとても少ないように感じているのは、管理人だけではないと思います。



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2011年12月9日

富山の輸血事業に従事して:インデックス(金沢大学血液内科)

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2011年12月8日

富山のHUSと輸血:吉田喬先生(金沢大学第三内科)


富山県赤十字血液センター:吉田喬先生(金沢大学第三内科)より



富山の輸血事業に従事して(3)


私が富山県赤十字血液センターに来ましてもう一つの大きな出来事は、平成23年5月に全国ニュースにもなりました焼肉屋におけるO111による食中毒事件です。

患者さんは富山県を中心に北陸三県にまたがり、患者数に比してHUSDICなどを合併した重症患者さんが多数発生して血漿交換などが多数例で行われました。

これまで報告されてきたHUSと異なった臨床像を呈したこともあって、血小板輸血も多くされたことです。

多くの症例が富山県の病院で治療が行われたため、新鮮凍結血漿、濃厚血小板が一週間で富山県の通常の一カ月分が発注され、富山県はもちろん北陸三県でも対応しきれず愛知県からも応援して頂き乗り切ることができました。

このような突発的な事件の時はもちろんですが、血小板不応の原因の一つであるHLA抗体の出現がしばしば見られます。

その時にはHLA適合の血小板を探す必要がありますが、北陸で献血ドナーが得られないことが多く、愛知ブロックを始め全国から探して供給され、供給に対しては全国的に協力体制ができています。

化学療法、造血幹細胞移植などの臨床の最前線から完全な管理職になったわけで、戸惑いもありましたが価値観も切り替えるようにしています。

勤務時間中ほとんど動かなくなったため、少しでも運動不足解消のため、昼休みには雪の立山を眺めながら田んぼのあぜ道を散歩して、以前の患者さんに声をかけられたりしています。

血液学会、各種研究会には出席するようにして臨床の知識を維持するように心がけていますが、やはり臨床的な感、体力などがが衰えて行くのを実感しているところです。

このように日赤本社、愛知ブロックセンターへの出張や、マリエ献血ルームや献血バスの検診がなければ富山県血液センターにいて時間的に余裕もありますから、近くに来られた時には立ち寄って頂ければと思います。


(続く)富山の輸血事業に従事して:インデックス(金沢大学血液内科)




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2011年12月7日

富山県赤十字血液センター:吉田喬先生(金沢大学第三内科)


富山の輸血事業:吉田喬先生(金沢大学第三内科)
より



富山の輸血事業に従事して(2)


富山県立中央病院では多くの造血器腫瘍に対して化学療法、造血幹細胞移植を行ってきたため、富山県内で最も多くの血液製剤を扱い、患者さんのためとはいえ、時間外、休日を問わずに血液製剤を発注してきたことを思い出します。

今回血液製剤を供給する立場となり、半年(註:本原稿執筆時点)が経過しましたが、献血者確保のための各種イベントの開催、採血の安全性の確保、より安全な輸血医療のための遡及調査、迅速で効率的な対応が要求される供給など、それぞれの業務において、多くの職員の皆さんの努力のおかげで成り立っていることを再認識させられています。 


富山県赤十字血液センターに来まして初めて知りましたが、日本赤十字社の血液事業は効率を上げるため広域化、集約化が進められています。

3月11日の東日本大震災はまだ記憶に新しいところですが、震災直後はすぐにできるボランテイア活動として富山県のみならず北陸及び全国的に多くの方に献血に協力して頂きました。

しかしながら阪神淡路大震災と異なり、被災された方の多くは津波による轢死が多くて、輸血を必要とするような手術は少なく、病院も被害を受けて手術件数が減少したこともあって、東北の輸血使用料はむしろ例年より少なくて済みました。

しかし東北ブロックの拠点となる予定の宮城センターが被害を受けて、輸血の検査、供給ができなくなり、関東から応援することになり、当センターも含めた全国の血液センターから供給の応援に行き、乗り切ることができました。

今回は未だ青森、秋田、福島の地域センターの検査、製造の機能がまだ残っていましたから乗り切ることができましたが、完全に宮城に移行してから震災が発生していれば、青森、秋田、福島への血液の供給も必要となり、今回より広範囲の応援が必要で、東北の医療機関に支障なく対応できたかどうかわかりません。

北陸三県も愛知ブロックに統合する方向で検討されてきましたが、今回のような大災害のみならず、北陸は毎冬雪によって閉ざされることもまれではないため、石川に検査、製造の機能を残すように働きかけて何とか踏みとどまっているところです。


(続く)富山のHUSと輸血:吉田喬先生(金沢大学第三内科)




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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31 | 血液内科

2011年12月6日

富山の輸血事業:吉田喬先生(金沢大学第三内科)


金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)の大先輩で、富山県立中央病院を定年退職後に富山県赤十字血液センター所長に就任された吉田喬先生の近況報告です。



富山の輸血事業に従事して(1)


平成23年4月より富山県赤十字血液センター所長に就任し、ようやく新生活に慣れてきたところです。

19年前、金沢大学第三内科から富山県立中央病院に血液内科を設立するために参り、これまで造血幹細胞移植を中心に血液疾患の診療にあたってきました。

この間、富山大学に血液専門の教室ができなかったこともあり、富山県内では富山県立中央病が最も多くの血液疾患を扱う施設となり、当院に来て頂いた多くの教室員の皆さんの協力があって、初期の目標は達成できたと思っています。

しかし同門会に対しては幹事をしていながら、厚生労働省の班会議と重なっていたことも多くて、十分な対応ができなかったことを申し訳なく思っています。

これからは時間的にも余裕ができたこともあり、同門会長の近藤邦夫先生の下で協力していきたいと思っています。


就任前から日本赤十字社の社長、副社長、血液本部長から面談を受け、4月になってから全国の所長を集めた会議で講習を受けてきました。

そこで渡される輸血に関する資料で、富山県は常に全国の下から多くが5-6番目で、富山の2つほど上に石川県があって、下に福井県があるという状況です。

これまでは、造血細胞移植学会、骨髄バンクなどの移植症例数、骨髄ドナー数などのデータでは、富山県、石川県は全国的にもそれほど下位ではなく、むしろ上位にいたこともありました。

献血者数、輸血使用量など輸血に関する指標は人口に比例しますからやもえないことですが、北陸の血液事業の規模が小さいことを再確認させられました。

(続く)富山県赤十字血液センター:吉田喬先生(金沢大学第三内科)




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2011年12月5日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)インデックス

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2011年12月4日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(5)


金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(4)
より


臨床医の研究と専門性(5)


専門家であることの楽しみ

血液内科という狭い領域の中でさえ、すべての疾患に一流の対応できないというのは忸怩たる思いがありますが、一方で、特定の領域について臨床と研究をしていることには楽しみもあります。

専門性が高くなると、その領域の患者さんが診療を求めて集まってくるだけでなく、全国の主治医から、診療に関する質問が寄せられるようになります。

一度相談を受けると、その患者さんのことが気になって仕方がないので、その後の経過を必ず教えてもらうようにしています。

そうすることによって、専門領域に関する知識がますます深まり、次の患者さんに対してはさらによい医療を行うことができるようになります。

また、病態を研究するために必要な患者さんの検体も自然に沢山集まることになります。

そうした多くの患者さんについて、検査結果や臨床経過を詳細に検討することによって、世界の誰も気付いていない新知見が明らかになることも稀ではありません。


(続く)金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)インデックス  へ



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2011年12月3日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(4)


金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(3)
より


臨床医の研究と専門性(4)


一流の研究は一般臨床とは両立し得ない

そこで、「臨床と研究を両立させることは可能か」という、最初の学生さんの質問に戻ります。

この質問を受けて、25年前、アメリカNIHにいた時にこの件について何度か議論したことを思い出しました。

NIHには当時300人以上の日本人フェローが研究しており、他大学から来ている研究者との交流はその後の大きな財産になっています。

臨床の教室から来ている研究者の答えは、例外なく「両立は不可能」でした。

大きな大学の臨床教室には、もっぱら臨床を担当している医師がいて、研究担当医師が業績を挙げるのをサポートしているということでした。

それはそれで効率のよいシステムなのでしょうが、臨床当番を踏み台にして研究が成り立っているようで、何か腑に落ちないものを感じました。


同じ教室の中で差別化をしなくとも、一人が分担する疾患を絞れば、臨床と研究を両立できるのではないか。

私自身はそう信じて、帰国してからは、特定の領域に絞って臨床と研究の両方に携わってきました。

その結果は、決して大成功したという訳ではないのですが、ある領域については、治療や病態について世界中の誰よりもよく理解していると、最近では実感できるようになりました。

したがってこの考えも、大きく間違ってはいなかったようです。

このため、先の学生の質問には「広い領域で一流の臨床家でありながら、基礎研究で一流の成果を出すのは無理。しかし、臨床の専門領域を絞れば、臨床と基礎研究を両立させることは不可能ではない」と答えました。


(続く)金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(5)



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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:03 | 血液内科

2011年12月2日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(3)


金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(2)
より


臨床医の研究と専門性(3) 

専門分野が狭くなる理由 

 
今回の記事や三内のブログでもたびたび紹介してきましたが、臨床医が行った研究の成果は、発表された雑誌のランクではなく、それがどの程度臨床の役に立つものかで評価されるべきだと私は考えています。

いくらよい雑誌に論文が掲載されても、それが診療の役に立たなければ、診療の合間に(患者さんを診る時間を犠牲にして)研究をしている臨床家の仕事としては価値が低い。

ただ、臨床の役に立つ仕事であれば業績はどうでもよいかというとそうではなく、インパクトファクターの高い雑誌に論文が載らないと、科学研究費のような競争的研究資金が獲得できません。

このため、比較的早く診療の役に立つ研究成果を、それなりにインパクトファクターが高い雑誌に発表していくことが必要です。

ただし、これは他の研究者との競争になるため、なかなか容易ではありません。

本当は色々な病気の研究もしたいのですが、研究費を獲得して研究を続けるためには、限られた領域を深く掘り下げることによってユニークな成果を挙げる必要があります。

その結果として、臨床家の研究分野はどうしても狭くなります。

私の場合、その領域は骨髄不全と造血幹細胞移植ということになります。



(続く)金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(4)



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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01 | 血液内科

2011年12月1日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(2)


金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(1)
より続く


臨床医の研究と専門性(2) 


臨床教室の研究

この記事を読んでいる人の中には、これから研究生活に入るかどうかを迷っている人もいるはずなので、臨床教室の大学院がどういうものかを紹介しておきます。

臨床教室の大学院に入ると、入院患者さんの診療を担当しないベッドフリーの期間が2年前後与えられ、その期間内に学位研究を仕上げるのが一般的です。

ただ、ベッドフリーの期間や、その期間中に外来・当直などの義務があるかどうかなどは教室の事情によって大きく異なります。

診療人数に余裕がある教室では、数年間完全に基礎の研究室で(アルバイトだけしながら)過ごすところもあります。


私自身は、昔から人の少ない三内で育ちましたので、研究だけをしていた期間は大学院時代もほとんどありませんでした。

当時の三内では、論文が書けるだけのデータが出ると、その時点で入院患者さんを担当することになっていました。

このため、実質的な研究期間も1年半ほどだったと思います。

もっとも、その頃三内で行われていた骨髄移植はまだ実験段階の治療でしたので、患者さんを担当していても研究をしているような気分ではありました。


そのような中途半端な研究期間では底辺の広い基礎研究は行えませんが、臨床志向の強い私のような人間には、診療しながらの研究というのが性に合っていたようです。

研究だけの生活が自分に向いていないことは、のちに米国に留学する機会をもらい、臨床に全く関わらない生活を2年間送った際にも感じました。

アルバイトも当直もしない生活は気楽で余裕もあったのですが、病気という目の前の動機がないためか、今一つ研究に身が入りませんでした。

大学に戻ってからは、研究に割ける時間は3分の1以下になりましたが、診療を通じて様々なアイデアが湧いてくるために、それを研究で実証することに楽しみを見出せるようになりました。


(続く)金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(3)



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