金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年8月31日

DICとアンチトロンビン(AT)4:アルブミンとの相関/AT製剤

DICとアンチトロンビン(AT)3:敗血症でアルブミンとの相関より続く。  

AT4
 

救急領域播種性血管内凝固症候群(DIC)における、アンチトロンビン(AT)TATの相関(上段)、アンチトロンビン(AT)とアルブミンの相関(下段)をみた結果です。

やはり、アンチトロンビン(AT)はTATとの間には相関がありませんが、アルブミンとの間には有意の正相関がみられています。

この報告でさらに興味深いのは、AT濃縮製剤投与前のみならず投与後でもアンチトロンビン(AT)とアルブミンの相関が維持されている点です(右下の図)。

つまりAT濃縮製剤投与前にアルブミン濃度が低値であった症例では製剤投与後のAT活性上昇は軽度ですが、製剤投与前にアルブミン濃度が正常であった症例では製剤投与後のAT活性上昇が十分であることを意味しています。

AT濃縮製剤によるAT活性上昇効果を、アルブミン濃度によって予知できることになります。
大変に興味深いです。
 

(続く)DICとアンチトロンビン(AT)5:アルブミンとの相関/産科

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42 | DIC

2013年8月30日

DICとアンチトロンビン(AT)3:敗血症でアルブミンとの相関

DICとアンチトロンビン(AT)2:敗血症、TATより続く。

 
AT3
 


播種性血管内凝固症候群(DIC)における、TATアンチトロンビン(AT)活性の相関図を前の記事で紹介いたしました。全く相関はみられませんでした。DIC合併のない場合であっても、同様に相関はみられませんでした。


今回は、敗血症における血清アルブミン(Alb)とアンチトロンビン(AT)活性の相関です。

上段に示すように、両者の間には有意の正の相関がみられています。

また、播種性血管内凝固症候群(DIC)の有無にかかわらず、正の相関関係がみられている点も注目されます。


つまり、DICにおいて血中アンチトロンビン(AT)活性が低下する場合であっても、それは消費性凝固障害のためではなく、アンチトロンビンとアルブミンは共有する機序で低下するものと考えられます。


(続く)DICとアンチトロンビン(AT)4:アルブミンとの相関/AT製剤

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:13 | DIC

2013年8月29日

DICとアンチトロンビン(AT)2:敗血症、TAT

DICとアンチトロンビン(AT)1:APLと敗血症より続く。

 
AT2


播種性血管内凝固症候群(DIC)においては、アンチトロンビン(AT)活性が低下する場合があります(低下しないことも多いです)。AT活性が低下する最も遭遇しやすいDICの基礎疾患は敗血症です。

上図は、敗血症症例において、凝固活性化マーカーであるTATとアンチトロンビン(AT)の相関をみたものです。

もしも、敗血症に合併したDICにおいてAT活性の低下がDIC(消費性凝固障害)のためであったならば、TATとAT活性の間には負の相関があっても良いはずです(上図では右上です)。しかし全く相関関係はありません。
DICの合併がない敗血症でも同様です(上図では左上です)。

これらの結果から、敗血症においてAT活性が低下する場合であっても、それはDICのためではないと考えさせます。

 

(続く)DICとアンチトロンビン(AT)3:敗血症でアルブミンとの相関

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:21 | DIC

2013年8月28日

DICとアンチトロンビン(AT)1:APLと敗血症

AT1


播種性血管内凝固症候群(DIC)においては、血中アンチトロンビン(AT)活性が低下することが大きな特徴の一つと考えられてきた歴史があります。
確かに、敗血症に合併したDICにおいてはAT活性が低下しやすいですが、AT活性が全く低下しないDICも多数あります。

急性前骨髄球性白血病(APL)では、肝不全の合併がなければAT活性は全く低下しません。AT活性120〜130%とむしろ上昇することすらあります。APL以外の急性白血病においても同様です。

固形癌に合併したDIC
においても、肝不全の合併がなければAT活性はほとんど低下しません。

非ホジキンリンパ腫(NHL)や慢性骨髄性白血病の急性転化(図ではCML)を基礎疾患としたDICでは、AT活性が低下することがありますが、DICのためというよりも多くの場合は肝不全の合併のためです。

劇症肝炎(FH)ではAT活性が著減しますが、これもDICのためではなく肝臓でのAT産生低下が主因です。

DICにおけるAT活性低下が話題になりやすい理由としては、敗血症に合併したDICが多くの臨床医に関心をもたれているためではないかと思われます。

 

 (続く)DICとアンチトロンビン(AT)2:敗血症、TAT

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43 | DIC

2013年8月27日

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理:インデックス

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(8)凝固検査より続く。


抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理:インデックス

1)はじめに
2)流産の機序
3)診断
4)血栓症治療
5)不育症治療
6)ヘパリン注意点
7)症例
8)凝固検査

 

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:10 | 血栓性疾患

2013年8月26日

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(8)凝固検査

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(7)症例より続く。


抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(8)凝固検査

妊娠中は健常妊婦であっても生理的変化として凝固亢進、線溶抑制状態になることが知られています。

実際、APTTは短縮傾向となり、FDP、Dダイマーも妊娠経過とともに漸増し基準値を大きく上回るようになります。

抗血栓療法を行うにあたり、血栓症のリスクを正確に反映するような凝固線溶マーカーがあれば非常に心強い所ですが、現時点で確立された検査はありません。

逆に、妊婦において凝固線溶マーカーの異常がみられても病的とするか否か、慎重な判断が必要です。

妊娠高血圧症候群の際は血管透過性の亢進を反映してアンチトロンビンの低下がみられます。


2012年1月よりヘパリンカルシウムの在宅自己注射が正式に認可されました。

今回の認可をうけてAPS合併妊婦の精神的、経済的負担は大きく軽減されたといえます。

欧米では低分子ヘパリン(LMWH)の投与が主流ですが、LMWHであれば1回/日投与が可能となり、さらなる負担軽減が望めます。

今後の医療環境の進歩、そして妊婦でも安全に使用できる抗凝固薬の開発が待たれます。

(続く)抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理:インデックス

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52 | 血栓性疾患

2013年8月25日

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(7)症例

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(6)ヘパリン注意点より続く。


抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(7)症例紹介

【症例】20歳代後半女性。

【既往歴】
22歳;妊娠23週、死産。
23歳;妊娠26週、子宮内胎児死亡。右下肢深部静脈血栓症

【病歴】

2回の妊娠中期以降死産あり。
深部静脈血栓症に対し非妊娠時はワルファリン内服をおこなっていた。
第2回妊娠時よりaPL陽性であることが判明しており、第3回妊娠時は低用量アスピリン・ヘパリン療法を行い、妊娠34週に帝王切開にて出産。
今回第4回目の妊娠が判明し当科紹介受診。

【血液検査所見】
WBC 3490/μL, Hb 9.9g/dL, 血小板数 24.3万, PT-INR 2.08(ワルファリン内服中), APTT 42.3秒, 抗カルジオリピン抗体 >120U/mL, β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体 >125U/mL, 抗核抗体 20倍, ループスアンチコアグラント(dRVVT)1.5

【経過】
ワルファリンは低用量アスピリンおよびヘパリンカルシウム5000単位、8時間毎、皮下注に切り替え、外来経過観察となった。

妊娠21週ごろより頸管長短縮のため入院管理となり、同時にヘパリンカルシウム皮下注は未分画ヘパリンの持続点滴へと切り替えた。

妊娠32週ごろより血小板数の低下傾向(5万/μL)、血圧上昇傾向がみられはじめ、以後も血圧はさらに上昇し浮腫も増強、子宮収縮頻回、子宮内胎児発育遅延がみられ妊娠33週2日に帝王切開術施行となった。

術後速やかに血小板数は改善し、ワルファリン再開としている。

(続く)抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(8)凝固検査

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39 | 血栓性疾患

2013年8月24日

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(6)ヘパリン注意点

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(5)不育症治療より続く。


抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(6)ヘパリンの注意点

妊娠中は催奇形性のため最も標準的な経口抗凝固薬であるワルファリンは使用できません。

妊娠時の抗凝固療法はヘパリン類の皮下注あるいは経静脈投与によって行われます。

投与経路に関し、持続点滴であればヘパリンの血中濃度はほぼ一定に保たれますが、皮下注射の場合、投与経過時間によって血中濃度は大きく変動します。
一般的には投与約3時間後に血中濃度がピークに達しますので、APTTのモニタリング、特にAPTT過延長の有無を確認する場合には皮下注3~6時間後の採血が望ましいです。

ヘパリンの副作用として、1)出血、2)ヘパリン起因性血小板減少症(heparin induced thrombocytopenia;HIT)、3)長期投与に伴う骨粗鬆症などがあげられます。

ヘパリン類開始当初はAPTTによるモニタリングに加え、HITの除外のために投与開始2週間以内に血小板数を確認することも重要です。

皮下投与に伴い投与部位の出血に加え、腫れ、かゆみがみられることがあります。

外用薬等を処方する場合もありますが、投与部位のローテーションがきちんと行われているか、注射手技は安定しているか、などについて再確認することも重要です。

(続く)抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(7)症例

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:26 | 血栓性疾患

2013年8月23日

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(5)不育症治療

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(4)血栓症治療より続く。


抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(5)不育症治療

不育症に対する治療

流死産予防としては、低用量アスピリン・ヘパリン療法が標準的治療として確立されています。

当院では抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断がなされた場合、挙児希望があった時点よりアスピリン(バイアスピリン100mg/日)の内服を開始し、子宮内に胎嚢が確認された時点で予防投与量未分画ヘパリン(UFH)(5000単位12時間ごと皮下注)の自己注射を開始します。

アスピリンは妊娠36週まで内服し、UFH皮下注は分娩前日までの投与を原則としていますが、よりリスクが高い症例では分娩前よりUFH持続点滴に切り替え、分娩4〜6時間前に中止する方法をとっています。

低用量アスピリン・ヘパリン療法以外にも、アスピリン単独投与の有用性の報告や、初期流産の既往のみの症例では胎盤形成期である妊娠16週前後までに限ったヘパリン投与を行うプロトコールの報告もみられますが、質の高い臨床試験での検証にはいたっていません。

しかし、現実には、厳密に診断基準を満たさない症例等でアスピリン単独療法が行われることも多いのではないかと推測されます。


アスピリンは胎盤を通過し、その血小板機能抑制作用は約1週間持続します。

胎児における動脈管早期閉鎖などの先天異常の可能性については欧米の報告で否定されていますが、内服時期によっては分娩時の出血量の増加につながるとの報告もあります。

本邦では、添付文書上、「出産予定日12週以内の妊婦には投与しないこと」と記載されており、アスピリン投与についてはその投与期間についても十分な説明と同意が必要です。

2012年1月よりUFH(ヘパリンカルシウムモチダ)の在宅自己注射が保険適用となり、APS合併妊婦を取り巻く医療環境は医療費および保障の面でも大きく前進しました。

とはいえ、長期にわたるヘパリン皮下投与は精神的にも手技的にも患者負担の大きい治療であることに変わりはありません。

ヘパリン治療の際の留意点については後述しますが、医師による指導のみならず、産科医療に携わるすべてのスタッフの理解と協力が必要と考えられます。

(続く)抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(6)ヘパリン注意点

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:04 | 血栓性疾患

2013年8月22日

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(4)血栓症治療

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(3)診断より続く。


抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(4)血栓症治療

<血栓症の既往のある妊婦>

すでに動静脈血栓症の既往を有する抗リン脂質抗体症候群(APS)合併妊婦は、妊娠によってさらに血栓傾向が高まるため、より慎重な抗血栓療法が必要です。

妊娠以前に合併した血栓症に対してはすでに抗血栓療法が行われていますが、静脈血栓症に対する最も標準的な抗凝固薬であるワルファリンは催奇形性のため妊娠中に投与することはできません。

妊娠5週までに、ワルファリンは未分画ヘパリン(UFH)あるいは低分子ヘパリン(LMWH)へ切り替える必要があります。

深部静脈血栓症合併症例では弾性ストッキングによる理学療法も有用です。

産科合併症の既往がある場合はアスピリンが併用されます。


実際、治療の際に問題となるのがヘパリンの投与量です。

妊娠中は、APTTは短縮するため、いわゆる予防投与量(UFH;ヘパリンカルシウム 5000単位12時間ごと皮下注)ではAPTTは延長しないことが多いです。

欧米ではLMWH(APTTは延長しません)の皮下注製剤がもっぱら使用されていますが、本邦で使用できるLMWHのうち、エノキサパリン(クレキサン;皮下注製剤)は術後の静脈血栓予防に使用が限定されており、ダルテパリン(フラグミン)は妊婦での使用は認められていません。

血栓の既往に対してすでに十分な抗血栓療法がなされ、妊娠前より病変部が良好にコントロールされている場合には予防投与量UFHによる管理も可能と考えられますが、ハイリスク患者では不十分である可能性が高いです。

また、妊娠中新たに血栓症を起こした症例には、1日量のUFH投与量をさらに増量しAPTTを基礎値の1.5〜2倍に延長させるような用量調節が必要となります。

産後はヘパリン投与からワルファリン内服への切り替えを行います。

本邦ではワルファリンの添付文書上、授乳をさけるよう記載がありますが、欧米ではワルファリンは授乳婦でも内服可能な薬剤に分類されています。

(続く)抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(5)不育症治療

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25 | 血栓性疾患

2013年8月21日

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(3)診断

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(2)流産の機序より続く。


抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(3)APS関連不育症の診断

<抗リン脂質抗体症候群の診断基準案>(2006年改訂)

(臨床所見が1つ以上、検査所見が1つ以上存在した場合、抗リン脂質抗体症候群と診断する)

臨床所見
・動静脈血栓症
・妊娠合併症
a. 1回以上の胎児奇形のない妊娠10週以降の子宮内胎児死亡
b. 1回以上の新生児形態異常のない妊娠34週以前の妊娠高血圧腎症、子癇または胎盤機能不全に関連した早産
c. 3回以上の連続する原因不明の妊娠10週未満の流産(本人の解剖学的、内分泌学的原因、夫婦の染色体異常を除く)

検査所見(12週間以上の間隔で2回以上陽性)
a. ループスアンチコアグラント (LA)陽性:国際血栓止血学会のガイドラインに基づいた方法で測定
b. IgG型またはIgM型の抗カルジオリピン抗体(aCL)陽性:標準化されたELISA法において、中等度以上の力価(>40GPL or MPL,または>99パーセンタイル)
c. IgG型またはIgM型の抗β2-GPI抗体陽性:標準化されたELISA法において、中等度以上の力価(>99パーセンタイル)
 


<抗リン脂質抗体関連不育症の診断>

2006年に改訂されたAPS診断基準を上記に示します。

Miyakis S, Lockshin MD, Atsumi T, et al: International consensus statement on an update of the classification criteria for definite antiphospholipid syndrome (APS). J Thromb Haemost 2006; 4: 295-306.

 

この診断基準によれば、
(a)    1回以上の胎児奇形のない妊娠10週以降の子宮内胎児死亡
(b)    1回以上の新生児形態異常のない妊娠34週以前の妊娠高血圧腎症、子癇または胎盤機能不全に関連した早産
(c)    3回以上の連続する原因不明の妊娠10週未満の流産(本人の解剖学的、内分泌学的原因、夫婦の染色体異常を除く)

上記(a)~(c)の妊娠合併症に加え、aPLとして、抗カルジオリピン抗体(aCL)、抗β2グリコプロテインI抗体(aβ2GPI、本邦ではβ2GPI依存性抗カルジオリピン抗体(aCL-β2GPI))あるいはループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant; LA)が12週以上の間隔をあけて2回以上陽性になることが診断に必須となっています。

しかし、この診断基準に準ずれば、たとえaPLが陽性でも初期流産2回の既往では抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome;APS)とは診断されないことになります。

初期の習慣性流産に対してaPLの関与を否定する考え方もありますが、産科領域では2回の流産歴で不育症に対する精査を希望する患者も多く、このような症例でaPLが陽性の場合、診断基準を満たさないため治療介入を行わないとする選択肢は実際の臨床現場では受け入れ難いのではないかと推測されます。

また、検査所見においても、aCLあるいはaCL-β2GPIが再現性をもって、かつ中等度力価以上陽性であることが必要ですが、低力価aPL陽性の不育症症例や再現性の確認を待たず妊娠してしまう症例への対応については判断が難しいところです。

産科、特に不育症領域におけるAPS診療の特殊性として、上記aCL、aCL-β2GPI、LA検査以外にキニノーゲン依存性抗フォスファチジルエタノラミン抗体(kininogen-dependent antiphophatidylethanolamine antibody; aPE)やIgM型aCLなどが測定されている点があげられます。

現在保険診療範囲内で測定できるaPLは、IgG型aCLおよびaCL-β2GPI、LA(希釈ラッセル蛇毒時間、リン脂質中和法)のみですから、aPEは自費診療あるいは研究費の形で測定されることになりますが、IgM型aCLを除いてこれらの検査の有用性については未だ確立していません。

今後、よりエビデンスレベルの高い臨床試験による検証が待たれます。

(続く)抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(4)血栓症治療

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53 | 血栓性疾患

2013年8月20日

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(2)流産の機序

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(1)はじめにより続く。


抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(2)流産の機序

胎盤
Nat Rev Rheumatol.  2011;7(6): 330-9より改変

 


流死産の機序

抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome;APS)における抗リン脂質抗体(aPL)による流死産発症機序は未だ不明な点も多いですが、現時点では、1)絨毛細胞に対する直接作用と、2)子宮胎盤循環における血栓形成作用が推定されています。

上図は、Nat Rev Rheumatol.  2011;7(6): 330-9より引用、改変しています。

(続く)抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(3)診断

 

<リンク>

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:34 | 血栓性疾患

2013年8月19日

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(1)はじめに

抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(1)


<はじめに>

抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome;APS)は、抗リン脂質抗体(Antiphospholipid antibodies; aPL)の存在下に、臨床症状として動静脈血栓症および様々な妊娠合併症を来す疾患です。

産科合併症とaPLとの関連については20世紀後半より注目されていましたが、正式にAPSとして世に紹介されたのは1986年になってからです。

Harris EN: Syndrome of the black swan. Br J Rheumatol 1987; 26: 324-6

産科合併症を契機に診断されるAPSでは、いわゆる動静脈血栓症の合併がない症例も多いです。

実際、同じAPSという病名の患者を診療していても、産科で診る患者と内科で診る患者とではその臨床像が大きく異なります。

このため産科医と内科医との間で、APSに対する病態認識や治療方針に若干の隔たりがあることも事実です。

aPLに関する検査が標準化されていないだけでなく、産科独自に行われている検査の存在、臨床像の多様性(妊娠初期の習慣性流産から中期以降の死産、早産、妊娠高血圧症候群そして深部静脈血栓症などの血栓症併発症例など)等の点から、良質な臨床試験が得られにくい分野ともいえます。

本シリーズでは、内科医の目線から産科診療に内在する特殊性もふまえつつ、APSの妊娠管理について概説していきたいと思います。

(続く)抗リン脂質抗体症候群(APS)の妊娠管理(2)流産の機序

 

<リンク>

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:27 | 血栓性疾患

2013年8月18日

血液内科学系統講義試験:骨髄など

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 

次の文の括弧の中に適切な言葉を記入せよ。

1)骨髄中の細胞でもっとも大きいものは(      )である。

2)造血幹細胞が分化し、成熟血球になるまでの期間はおよそ(       )週間である。

3)幼若な細胞では核中の(         )が明瞭であることが多い。

4)末梢血中の好塩基球増加を特徴とする代表的な疾患は(         )である。

5)慢性炎症に伴う貧血の原因として重要なヘプシジンは(        )による刺激を受けて肝で産生される。

6)貧血の鑑別診断において測定すべき検査項目は網赤血球数の(     )である。

7)(       )染色は急性骨髄性白血病と急性単球性白血病の鑑別に用いられる。

8)組織中の鉄は主に(       )として存在する。

9)健常者において、骨髄から末梢血に造血幹細胞を動員するために用いられるのは(      )である。

10)骨髄穿刺で評価するのは細胞形態、染色体などであるのに対して、骨髄生検では細胞の(  )や線維化の有無を観察する。




(解答)

1)巨核球
2)2 
3)核小体または核網 
4)慢性骨髄性白血病
5)インターロイキン6またはIL-6
6)絶対値
7)エステラーゼ
8)フェリチン
9)G-CSFまたは顆粒球コロニー刺激因子
10)密度



スライドの細胞は何か?細胞名を記入せよ。(スライドは省略します)


1)  ( 赤芽球  )
2)  ( 好中球  )
3)  ( 好酸球  )
4)  ( リンパ球 )
5)  ( 単球   )

 

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2013年8月17日

血液内科学系統講義試験:貧血、MCV、LDH

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 


58歳の女性。

生来健康であったが、2年ぶりに受けた2012年11月の検診で初めて貧血を指摘された。

二次検査のため近医を受診したところ、貧血に加えてLDHが高値であったため血液内科受診を勧められた。

多忙であったため放置していたが、2013年4月、時間に余裕ができたため血液内科を受診した。

血液検査では白血球数2900/μl、 赤血球数184万/μl、ヘモグロビン7.9 g/dl、ヘマトクリット22.9%、血小板数5.5万/μl、LDH 1160 IU/Lであった。

既往歴に特記すべきことはなく、偏食や飲酒の習慣はない。

1)MCV(四捨五入)値を冪数(10X)表示の単位をつけて記載せよ。

2)次に行うべき検査は何か?




(解答)
1)124x10-15L

2)ビタミンB12測定

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2013年8月16日

血液内科学系統講義試験:貧血など

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 


鉄欠乏性貧血の診療に関する記載のうち正しいはどれか。

(1)    ヘリコバクター・ピロリの除菌が有用なことがある。
(2)    血清中の総鉄結合能は低下する。
(3)    治療の基本は鉄剤の静脈内投与である。
(4)    どれだけ検査しても原因が不明の場合、虚偽性貧血を疑う。
(5)    鉄剤の内服でもっとも多い副作用は消化器症状である。

a. (1) (2) (3) b. (1) (2) (5) c. (1) (4) (5) d. (2) (3) (4) e. (3) (4) (5)


(解答)c


治療法で正しい結びつきはどれか。

(1)    赤芽球癆 − 副腎皮質ステロイド
(2)    骨髄異形成症候群 − 脱メチル化薬
(3)    自己免疫性溶血性貧血 − 蛋白同化ステロイド
(4)    先天性再生不良性貧血 − 抗胸腺細胞グロブリン
(5)    輸血後鉄過剰症 − デフェラシロクス

a. (1) (2) (3) b. (1) (2) (5) c. (1) (4) (5) d. (2) (3) (4) e. (3) (4) (5)

(解答)b


骨髄異形成症候群に関する記載のうち正しいはどれか。一つ選べ。


(1)    根治療法は同種造血幹細胞移植に限られる。
(2)    血球減少は一血球系統だけのこともある。
(3)    ほとんどの例で染色体異常が検出される。
(4)    第8染色体異常は予後不良である。
(5)    診断の決め手になるのは、骨髄における血球形態異常の存在である。

a. (1) (2) (3) b. (1) (2) (5) c. (1) (4) (5) d. (2) (3) (4) e. (3) (4) (5)

(解答)b


溶血性貧血に関する記載の中で正しいのはどれか?

(1)    日本でもっとも多い遺伝性溶血性貧血はαサラセミアである。
(2)    PNH患者の血球では単球上のGPIアンカー膜蛋白発現は正常である。
(3)    自己免疫性溶血性貧血の中にはクームス試験陰性例が存在する。
(4)    網状赤血球は通常は10万/μL以上に増加する。
(5)    ハプトグロビンは低下している。

a. (1) (2) (3) b. (1) (2) (5) c. (1) (4) (5) d. (2) (3) (4) e. (3) (4) (5)


(解答)e



疾患と検査所見との組み合わせで正しいのはどれか.

(1)    遺伝性球状赤血球症―高張食塩水に対する抵抗性の減弱
(2)    βサラセミア―ヘモグロビンSの検出
(3)    再生不良性貧血―骨髄におけるリンパ球の相対的増加
(4)    血栓性血小板減少性紫斑病―vWF-cleaving protease活性の低下
(5)    発作性夜間ヘモグロビン尿症―尿中ヘモジデリン陽性

a (1), (2), (3) b (1), (2), (5) c (1), (4), (5)  d (2), (3), (4) e (3), (4), (5)

(解答)e

 

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2013年8月15日

血液内科学系統講義試験:リンパ腫など

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 


下記患者の国際予後指数(1項目1点)を求めよ。

45歳男性。頚部リンパ節の生検で、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された。

両側頚部・左腋窩・縦隔に2〜3センチ大のリンパ節を認めたが、CTおよびFDG-PETではその他の部位に病変は認めなかった。

入院前日まで仕事を普通にこなしていた。体重減少や寝汗は認めていない。

骨髄生検では骨髄浸潤の所見はみられなかった。

LDHは480IU/l、可溶性IL-2レセプター1240IU/mlであった。

国際予後指数(  )点


(解答)1



リンパ系腫瘍に関する記載の中で誤りはどれか。

(1) マントル細胞リンパ腫は予後良好である。
(2) ホジキンリンパ腫は連続的に進展する。
(3) 鼻腔原発NK/T細胞性リンパ腫は欧米よりも東アジアに多い。
(4) HTLV-1感染者のうち、成人T細胞性白血病/リンパ腫を発症するのは約10%である。
(5) 日本人で最も頻度の高いリンパ系腫瘍は濾胞性リンパ腫である。

a (1), (2), (3) b (1), (2), (5) c (1), (4), (5)  d (2), (3), (4) e (3), (4), (5)


(解答)c

 

治療の組み合わせのうち正しいのはどれか。

(1)    リンパ形質細胞リンパ腫―ABVD療法
(2)    成人T細胞性白血病/リンパ腫−抗CCR4抗体
(3)    再発濾胞性リンパ腫−90Y-イブリツモマブチウキセタン
(4)    再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫−自己末梢血幹細胞移植
(5)    未分化大細胞リンパ腫−R-CHOP療法

a. (1) (2) (3) b. (1) (2) (5) c. (1) (4) (5) d. (2) (3) (4) e. (3) (4) (5)


(解答)
d

 

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2013年8月14日

血液内科学系統講義試験:骨髄腫など

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 

疾患名と治療法・治療薬の組み合わせで誤っているのはどれか。2つ選べ。

a.    急性骨髄性白血病 − シタラビン
b.    フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 ― 全トランスレチノイン酸
c.    二次性多血症 − 瀉血
d.    本態性血小板血症 − ハイドロキシウレア
e.    多発性骨髄腫 − レナリドマイド


(解答)b、c


慢性骨髄性白血病の治療に通常用いない薬剤はどれか。2つ選べ

a.    ゲフィチニブ
b.    イマチニブ
c.    ニロチニブ
d.    ダサチニブ
e.    ボルテゾミブ


(解答)
a、c

 

IgG型M蛋白が検出されない例はどれか。2つ選べ。

a.    monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS)
b.    無症候性骨髄腫
c.    非分泌型骨髄腫
d.    原発性マクログロブリン血症
e.    POEMS症候群


(解答)
c、d

 

多発性骨髄腫の治療効果判定で誤っているのはどれか。1つ選べ。

a.    PR:血清M蛋白が50%以上減少
b.    very good PR:血清M蛋白が90%以上減少
c.    very good PR:免疫固定法でM蛋白が検出されない
d.    CR:免疫固定法でM蛋白が検出されず、骨髄中の形質細胞比率が5%未満
e.    stringent CR (sCR):血清遊離軽鎖κ/λ比が正常


(解答)
c

 

多発性骨髄腫患者でアミロイドーシスの合併を疑うべき所見として誤っているのはどれか。1つ選べ。

a.    うっ血性心不全
b.    巨大舌
c.    ネフローゼ症候群
d.    手根管症候群
e.    過粘稠度症候群


(解答)
e

 

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2013年8月13日

血液内科学系統講義試験:白血病など

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 

急性白血病に関する記述で正しいのはどれか。

(1)    成人では骨髄性よりリンパ性の方が多い。
(2)    WHO分類では芽球比率が20%以上で急性白血病と診断する。
(3)    急性骨髄性白血病であってもペルオキシダーゼ染色が陽性にならない病型がある。
(4)    化学療法は同じレジメン(治療内容)を6コース以上繰り返す必要がある。
(5)    Core binding factor (CBF) 白血病は通常予後不良である。

a. (1) (2) b. (2) (3) c. (3) (4) d. (4) (5) e. (1) (5)


(解答)
b



染色体転座に対応する遺伝子異常で正しい組み合わせを選べ。


(1)    AML1/MTG8(ETO) − t(9;22)
(2)    PML/RARα − t(8;21)
(3)    CBFβ/MYH11 − inv(16)
(4)    MLL/AF9 − t(9;11)
(5)    M-bcr/abl − t(15;17)

a. (1) (2) b. (2) (3) c. (3) (4) d. (4) (5) e. (1) (5)


(解答)c



急性白血病の治療に用いられる抗がん剤とその代表的な副作用の組み合わせで誤っているのはどれか。

(1)    ダウノマイシン − 心機能障害
(2)    シタラビン − 末梢神経障害
(3)    ビンクリスチン − 下痢
(4)    メトトレキサート − 口内炎
(5)    L-アスパラギナーゼ − 膵炎

a. (1) (2) b. (2) (3) c. (3) (4) d. (4) (5) e. (1) (5)


(解答)
b



疾患名と検査所見の組み合わせで誤っているのはどれか。1つ選べ。

a.    急性単球性白血病 − 血中リゾチーム高値
b.    慢性骨髄性白血病 − 末梢血中の幼若好中球
c.    真性多血症 − エリスロポエチン高値
d.    骨髄線維症 − tear drop cell(涙滴赤血球)
e.    多発性骨髄腫 − β2‐マイクログロブリン高値


(解答)
c



病態に関する記載で誤っているのはどれか。1つ選べ。

a.    慢性骨髄性白血病の慢性期では分化能を保持したまま白血病細胞が増殖する
b.    骨髄増殖性腫瘍ではチロシンキナーゼ遺伝子変異によるその恒常的活性化が発症に関与している.
c.    本態性血小板血症のほとんどの例でJak2遺伝子変異が検出される.
d.    原発性骨髄線維症における骨髄の線維化は,巨核球などから産生されるTGF-βが線維芽細胞に作用して生ずる反応性変化である.
e.    多発性骨髄腫の一部では、IgH遺伝子の染色体転座によるがん関連遺伝子の活性化が発症にかかわっている。


(解答)c


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2013年8月12日

輸血学試験問題

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 

輸血開始5分後呼吸困難が出現した。まず疑うべきなのはどれか。2つ選べ。

a.    輸血後GVHD
b.    ABO型不適合輸血
c.    輸血関連急性肺障害
d.    アナフィラキシーショック
e.    ヒトパルボウイルスB19感染症


(解答) b, d



成人患者へ安全な赤血球輸血を行う(緊急輸血を除く)ために必要性の低いのはどれか。1つ選べ。

a.    血液型検査
b.    交差適合試験
c.    不規則抗体検査
d.    血液製剤の加温
e.    血液製剤製造時の白血球除去


(解答)
d



輸血療法に関して正しいのはどれか。1つ選べ。

a.    輸血した赤血球の約1/3は脾臓に捕捉される。
b.    新鮮凍結血漿は、融解後12時間以内に輸注する。
c.    アルブミン投与後の血管回収率は通常100%である。
d.    血清アルブミン値1.9 g/dLは、アルブミン投与の絶対適応である。
e.    体重40kgの患者に赤血球製剤を2単位輸血すれば、Hbは約2 g/dL増加する。


(解答)
e



輸血療法に関して正しいのはどれか。2つ選べ。

a.    血小板製剤を2-6℃で保存した。
b.    新鮮凍結血漿を20-24℃の温湯で融解した。
c.    8月1日の献血由来の血小板製剤を8月4日に使用した。
d.    8月1日の献血由来の赤血球製剤を8月22日に使用した。
e.    ヒト胎盤から製造された医薬品は特定生物由来製品である。


(解答) c、
e



輸血前検査に関して正しいのはどれか。1つ選べ。

a.    主試験は省略できる。
b.    副試験は省略できる。
c.    HCV抗体検査は省略できる。
d.    2回目の血液型検査は省略できる。
e.    緊急輸血時の輸血前検査用採血は省略できる。


(解答) b

 

血液型おもて試験結果を図(問題用紙最後尾に添付)に示す。血液型組み合わせとして正しいのはどれか。1つ選べ。左から順に患者1/2/3/4とする。

a.    A/B/O/AB
b.    B/A/AB/O
c.    A-/B-/O-/AB-
d.    B+/A+/AB+/O+
e.    おもて・うら不一致


(解答) a

 

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2013年8月11日

凝血学的検査:出血時間、PT、APTTなど

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 

下記の疾患または病態のうち、検査所見の記載が正しいのはどれか。1つ選べ。

    出血時間 PT APTT Fbg HPT
a 血小板無力症 延長 正常 正常 低下 正常
b 老人性紫斑病 延長 正常 正常 正常 正常
c 先天性第VII因子欠損症 正常 延長 正常 正常 低下
d von Willebrand病 延長 正常 正常 正常 正常
e ビタミンC内服 正常 正常 延長 正常 正常

PT:プロトロンビン時間
APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間
Fbg:フィブリノゲン
HPT:ヘパプラスチンテスト

(解説)

血小板無力症:Fbgは正常です。

老人性紫斑病:全ての凝血学的検査は正常です。

先天性第VII因子欠損症:HPTは、第VII 、X、II因子を反映しますので、先天性第VII因子欠損症ではHPTは低下します。もちろん、PTも延長します。

・von Willebrand病は、出血時間とAPTTが延長します。

・ビタミンC内服:凝血学的検査に影響を与えません。



(解答)c

 

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2013年8月10日

大動脈瘤に合併した線溶亢進型DIC

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 

 

72歳・男性患者の臨床経過および検査所見を以下に示す。

文章中の下線を引いた箇所のうち、本症例の「経過に合わない検査値」または「処置として適切でないもの」はどれか。1つ選べ。


【病歴】
63歳:腎機能障害、胸・腹部大動脈瘤を指摘。
71歳:腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術施行。胸部大動脈瘤は経過観察の方針。
今回特に誘因なく左大腿部の疼痛に加え、翌日にはふらつき、息切れを自覚したため受診、貧血の進行と左大腿部の皮下血腫を認め入院。

【入院時血液検査所見】
Hb 7.0g/dL、血小板数 9.1万/μL、PT 13.1秒、APTT 29.0秒、フィブリノゲン 68mg/dL、アンチトロンビン(AT) 114%、プラスミノゲン 79%、α2PI 87%、TAT 82.5ng/mL、PIC 18.4μg/mL、FDP 172.7μg/mL、Dダイマー 79.9μg/mL、Cr 2.6mg/dL

【入院時CT所見】
左臀筋深部に血腫形成。

【経過】
入院後に貧血の進行を認め、赤血球輸血を行なった。
同時にメシル酸ナファモスタット持続点滴を開始したところ出血症状が改善したが、高K血症を認めたため本薬を中止し、ヘパリンの持続点滴およびトラネキサム酸(TA)の内服を開始。
その後、ヘパリン持続点滴をヘパラン硫酸週2回の静注に切り替え、病態が安定していることを確認した上で退院となった。


a.    α2PI 87%
b.    Dダイマー 79.9μg/mL
c.    赤血球輸血
d.    メシル酸ナファモスタット持続点滴
e.    高K血症

(解説)

本症例では、大動脈瘤線溶亢進型DICを合併しています。筋肉内出血に伴い、貧血も高度です。

線溶亢進型DICでは、本症例のようにフィブリノゲンは著減します。TATは全てのDICで上昇しますが、線溶亢進型DICではPICの上昇が高度です。FDPは著増しますが、Dダイマーの上昇はFDPほどではなく乖離現象がみられます。

線溶亢進型DICでは、過剰なプラスミンの形成がみられるために、α2PIは消費性に著減します(プラスミンとα2PIが1対1結合するかたちでα2PIは消費されて低下します)。アンチトロンビンが低下しないのも特徴です。

α2PI 87%は間違っています。著減しているはずです。

Dダイマー 79.9μg/mLは上昇していますが、FDPとの間に乖離現象がみられ、線溶亢進型DICの特徴になっています。

貧血が高度ですから、赤血球輸血を行っても問題ないでしょう。

メシル酸ナファモスタット(フサンなど)は、線溶亢進型DICに相性の良いお薬です。

メシル酸ナファモスタットの副作用としては、高K血症は有名です。



(解答)a

(追伸)

この臨床問題は、「臨床に直結する血栓止血学」(中外医学社、平成25年秋に発刊予定)からの症例を使用しました。この本では、全ての疾患で、症例提示、ピットホール、お役立ち情報、ここがコンサルトされやすい!、などの項目を設けていて、とても楽しく血栓止血学を勉強していただけます。

 

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2013年8月9日

抗リン脂質抗体症候群(APS)と習慣性流産(不育症)

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 

以下の文中で(   )に入るものはどれか。1つ選べ。

患者は27歳女性。

【既往歴】22歳;妊娠23週、死産。23歳;妊娠26週、子宮内胎児死亡(胎盤病理にて胎盤梗塞あり)。右下肢深部静脈血栓症。

【現病歴】2回の妊娠中期以降死産あり。深部静脈血栓症に対し非妊娠時はワルファリン内服をおこなっていた。第2回妊娠時より抗リン脂質抗体陽性であることが判明しており、第3回妊娠時は低用量アスピリンと(        )の併用療法を行い、妊娠34週に帝王切開にて出産している(児体重2,460g)。今回第4回目の妊娠が判明し当科紹介受診となる。

【血液検査所見】WBC 3490/μL、Hb 9.9g/dL、血小板数 24.3万/μL、PT延長(ワルファリン内服中)、APTT 42.3秒、抗カルジオリピン抗体:著増、ループスアンチコアグラント陽性

a.    ワルファリン
b.    未分画へパリン
c.    トラネキサム酸
d.    副腎皮質ステロイド
e.    組織プラスミノゲンアクチベーター




(解説)

この問題は、新しい傾向の問題かも知れません。臨床問題に関しましては、血栓止血領域は 今後はこのようなタイプの問題になる予定です。問題を解きながら、試験時間中に疾患をしみじみ理解していただければと思っています。試験を受けているにもかかわらず、勉強できる訳です。

抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラントともに陽性ですから、病名は、瞬時に分かるのではないかと思います。抗リン脂質抗体症候群(APS)の典型例です。この症例のように、女性の場合は習慣性流産(不育症)は特徴の一つです。

静脈血栓では深部静脈血栓症や肺塞栓がみられやすいです。動脈血栓症では、脳梗塞がみられやすいです。

血小板数の低値や、APTTの延長がみられる症例もありますが、本症例のように明らかではないことも多々あります。換言しますと、血小板数やAPTTでは、抗リン脂質抗体症候群(APS)をスクリーニングすることはできません。

・ワルファリンは、催奇形性の副作用の問題があり、妊婦では使用できません。

未分画へパリンは、抗リン脂質抗体症候群(APS)の習慣性流産対策に使用されます。使用する場合には、アスピリンに加えることが多いです。

トラネキサム酸(トランサミン)は、血栓症を誘発することがあります。血栓傾向にある症例に対しては禁忌です。

副腎皮質ステロイドを用いても、抗リン脂質抗体は消えません。抗リン脂質抗体は、ステロイドで消えない抗体なのです。

組織プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)は、線溶療法の治療薬です。点滴製剤です。心筋梗塞や脳梗塞の超急性期に使用することがあります。出血(脳出血を含む)の副作用には注意が必要です。



(解答)b

(追伸)この臨床問題は、「臨床に直結する血栓止血学」(中外医学社、平成25年秋に発刊予定)からの症例を使用しました。この本では、全ての疾患で、症例提示、ピットホール、お役立ち情報、ここがコンサルトされやすい!、などの項目を設けていて、とても楽しく血栓止血学を勉強していただけます。

 

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2013年8月8日

血管内皮の抗血栓作用

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 

血管内皮の抗血栓作用と関連しているのはどれか。1つ選べ。

a.    接着因子
b.    組織因子(TF)
c.    von Willebrand因子(vWF)
d.    組織因子経路インヒビター(TFPI)
e.    プラスノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)



(解説)

接着因子の発現亢進は、血栓傾向になります。
組織因子(TF)は、外因系凝固を活性化します。
von Willebrand因子(vWF)は、血小板の粘着に必要です。
組織因子経路インヒビター(TFPI)は血管内皮に存在する重要な凝固阻止因子の一つです。
プラスノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)は、線溶阻止因子です。発現亢進は血栓傾向になります。



(解答)d

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2013年8月7日

血栓止血の臨床:ワルファリン、PT-INRほか

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 

血栓止血関連疾患の検査・治療に関する記載として正しいのはどれか。1つ選べ。

a.    老人性紫斑病に対しては、ビタミンK内服が有効である。
b.    深部静脈血栓症(DVT)の再発予防としては、アスピリン内服が有効である。
c.    健常人のPT-INRは、1.5程度である。
d.    ワルファリンを内服すると血中アンチトロンビン活性が低下する。
e.    第VIII因子インヒビターの出血に対しては、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤が有効である。



(解説)

老人性紫斑病は、全ての血液凝固検査が正常です。病気ではなく、治療は必要ありません。

深部静脈血栓症(DVT)は、血流の遅い環境下における血栓です。血栓形成の主病態は血小板ではなく、凝固活性化です。アスピリンは抗血小板療法です。DVTではワルファリンによる抗凝固療法を行います。

健常人のPT-INRは、もちろん1.0です。

ワルファリンを内服しますと、凝固阻止因子であるアンチトロンビン、プロテインC、プロテインSのうち、ビタミンK依存性であるプロテインC、プロテインSが低下しますが、アンチトロンビンは変化しません。

第VIII因子インヒビター(参考:後天性血友病)の出血に対しては、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(ノボセブン)が有効です。


(解答)e

 

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2013年8月6日

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)/溶血性尿毒症症候群(HUS)

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 

問16.    血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)の両者に共通する異常所見として正しいのはどれか。1つ選べ。

a.    血清ALPの上昇
b.    クームス試験陽性
c.    直接優位のビリルビン上昇
d.    ADAMTS13活性の低下
e.    血清ハプトグロビンの低下


(解説)

TTP、HUSともに、ALPの上昇はみられません。

・いずれも、クームス試験陰性です。

いずれも、直接ではなく間接優位のビリルビン上昇がみられます。

ADAMTS13活性の低下はTTPに特徴的な所見です。HUSではみられません。

・溶血に伴い、TTP、HUSともに血清ハプトグロビンは低下します。
 

(解答)e

 

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2013年8月5日

播種性血管内凝固症候群(DIC)の検査所見

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 


播種性血管内凝固症候群(DIC)の記載として正しいものはどれか。1つ選べ。

a.    急性前骨髄球性白血病(APL)に合併したDICでは、フィブリノゲンの低下は軽度である。
b.    羊水塞栓に合併したDICでは、フィブリノゲンが著減する。
c.    敗血症に合併したDICでは、血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)は上昇しない。
d.    敗血症に合併したDICでは、血中可溶性フィブリン(soluble fibrin:SF)が低下する。
e.    常位胎盤早期剥離に合併したDICでは、血中プラスミノゲンが著増する。



(解説)

急性前骨髄球性白血病(APL)に合併したDICでは線溶活性化が著しく(線溶亢進型DIC)、フィブリン形成に伴うフィブリノゲンの消費のみならず、プラスミンによるフィブリノゲン分解も加わり、フィブリノゲンは著減します。

・羊水塞栓では大量の組織因子が血中に流入して、線溶亢進型DICを発症します。フィブリノゲンは著減します。

・DICの本態は全身性持続性の著しい凝固活性化状態(過剰のトロンビンが形成されている状態)です。どのような基礎疾患のDICであっても、TATは上昇します。

どのような基礎疾患のDICであっても、TAT同様に、血中可溶性フィブリン(soluble fibrin:SF)は上昇します(参考:凝固活性化マーカー)。

常位胎盤早期剥離では、線溶亢進型DICを発症します。大出血をきたします。線溶活性化に伴い、プラスミノゲンからプラスミンへの転換が亢進しているために、プラスミノゲンは消費性に低下します。
 

(解答)b

 

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2013年8月4日

典型的な抗リン脂質抗体症候群(APS)と検査

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 平成25年7月23日


典型的な抗リン脂質抗体症候群(APS)に関する記載内容として、正しいものはどれか。1つ選べ。

a.    抗カルジオリピン抗体は、β2GPI依存性の方が臨床的意義が大きい。
b.    動脈血栓症では心筋梗塞が最も多い。
c.    抗核抗体が陰性であればAPSを否定できる。
d.    静脈血栓症では脳静脈洞血栓症が最も多い。
e.    APS患者血漿:コントロール血漿=1:4の混合血漿で、凝固時間の延長が是正される。


(解説)

・抗カルジオリピン-β2GPI複合体の方が、カルジオリピン抗体よりも血栓傾向と関連が深いです。

動脈血栓症では脳梗塞が最も多いです。心筋梗塞は少いです

抗核抗体が陰性のAPSもあります。

静脈血栓症では、深部静脈血栓症が最も多いです。

APS患者血漿:コントロール血漿=1:4の混合血漿で、凝固時間の延長が是正されません。

 

(解答)a

 

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2013年8月3日

出血傾向と血栓傾向の併存:血液内科試験

平成25年度血液内科学系統講義試験<細胞移植学(血液内科)> 平成25年7月23日

まず、血栓止血関連問題の解答を公開したいと思います。

 

下記の疾患のうち出血、血栓の両者がみられる疾患・病態はどれか。1つ選べ。

a.    アミロイドーシス
b.    先天性α2PI欠損症
c.    高ホモシステイン血症
d.    異常プラスミノゲン血症
e.    へパリン起因性血小板減少症


(解説)

アミロイドーシスでは、出血症状がみられることがあります。

・先天性α2PI欠損症では、出血症状がみられます。

高ホモシステイン血症では、血栓傾向になります。

・異常プラスミノゲン血症では、理論上は血栓傾向になる可能性があります。ただし、あまり血栓傾向とは関係ないという考えもあります。

へパリン起因性血小板減少症(HIT)は、ヘパリンにより血栓傾向になりますが、血小板数が低下するために、出血傾向も伴います。

 

(解答)e

 

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2013年8月2日

CBT(コアカリ):PT&APTT延長、中心静脈栄養

CBT(コアカリ)の問題紹介と解説です。


30歳の女性。1週間前に胃癌の摘出手術を行った。現在、中心静脈栄養を行っている。血小板数は正常であるが、PTおよびAPTT延長がみられた。

本症例にあてはまる疾患はどれか。


A 播種性血管内凝固症候群(DIC)
B von Willebrand(フォン・ヴィレブランド)病
C アレルギー性紫斑病
D 急性骨髄性白血病
E 血小板無力症
F 血栓性血小板減少性紫斑病
G 血友病
H 骨髄異形成症候群
I   再生不良性貧血
J  特発性血小板減少性紫斑病
K ビタミンK欠乏症
L 慢性骨髄性白血病




(解説)

上記のなかで、血小板数が正常な疾患は、von Willebrand病、アレルギー性紫斑病、血小板無力症、血友病、ビタミンK欠乏症です。

PTAPTTはそれぞれ、von Willebrand病(正常、延長)、アレルギー性紫斑病(正常、正常)、血小板無力症(正常、正常)、血友病(正常、延長)、ビタミンK欠乏症(延長、延長)となります。

ビタミンK欠乏症の典型例では、PTもAPTTも延長しますが、軽症例ではPT延長のみのこともあります(PTは半減期の短い第VII因子を反映するためです)。

 

(答え)K

 

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2013年8月1日

CBT(コアカリ):血小板、PT、APTT、FDP

CBT(コアカリ)の問題紹介と解説です。


68歳の女性。大腸癌の手術を行った。末期で、肺にも転移があり、化学療法を行っている。

点状の出血斑がみられ、血液検査を行ったところ、赤血球数が約300万と減少しており、白血球や血小板も減少、PTおよびAPTT延長、AT減少、FDP上昇がみられた。

本症例にあてはまる疾患はどれか。


A 播種性血管内凝固症候群(DIC)
B von Willebrand(フォン・ヴィレブランド)病
C アレルギー性紫斑病
D 急性骨髄性白血病
E 血小板無力症
F 血栓性血小板減少性紫斑病
G 血友病
H 骨髄異形成症候群
I   再生不良性貧血
J  特発性血小板減少性紫斑病
K ビタミンK欠乏症
L 慢性骨髄性白血病




(解説)

血小板数が低下する疾患は、選択肢の中ではDIC、急性骨髄性白血病、血栓性血小板減少性紫斑病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病です。

この中でFDPやDダイマー血栓の分解産物を反映)が上昇するのはDICです。

PTおよびAPTT(特にPT)が延長することもありますが、PTは肝不全やビタミンK欠乏症でも延長するためDICに特異的という訳ではありません。

AT(アンチトロンビン)は、敗血症に合併したDICで最も低下しやすいです。

DICの基礎疾患は多数知られていますが、敗血症、急性白血病、白血病、動脈瘤、妊娠合併症(常位胎盤早期剥離、羊水塞栓)などは特に有名です。

なお、FDPやDダイマーは深部静脈血栓症や肺塞栓でも上昇します。


(答え)A

 

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